コロナ禍のなか安定業績、スバルが走る独自路線

5月21日(木)8時0分 JBpress

スバル本社1階のショールームの様子

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(桃田 健史:自動車ジャーナリスト)

 5月12日のトヨタ自動車を皮切りに、自動車メーカーの2020年3月期決算発表が続いている。

 新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け業績が前期比減となる企業が多い中、SUBARU(スバル)の安定した業績が目立った。

 だがその中身をみると、アメリカ市場偏重型の経営体質が改めて浮かび上がる。同社の経営を取り巻く環境と今後を見ていこう。


コロナの影響はまだ小さい

 スバルの2020年3月期通期実績は、連結販売台数が前期から33万台増の103万3900台。売上収益は1880億円増の3兆3441億円。営業利益は286億円増の2103億円となった。

 スバルの中村知美社長は「主力のアメリカで、新型コロナウイルス感染症による事業への影響は3月中盤から始まったため、2020年3月期実績への影響は限定的だった」と決算を総括した。

 見方を変えると、スバルは新型コロナウイルス感染拡大が最初に広がった中国、その次に広がった欧州への依存度が低いことが改めて明らかになったといえる。

 市場別での連結完成車販売台数を見ると、アメリカが701万6000台(全体の67.9%)、日本が125万8000台(12.2%)、カナダが60万4000台(5.8%)、オーストラリア43万1000台(4.2%)、欧州37万台(3.6%)、中国20万6000台(2%)と、極めてアメリカ頼みの事業構成になっている。

 2021年3月期の業績見通しについては、「販売面で、主力のアメリカ市場でいまだにスバル販売店の6割が営業活動に何らかの制約を受けている状況」にあるとして、新型コロナウイルス感染拡大の収束の目途が立たず、経済社会活動再開の行方が見通せない中、「現時点で当社実績を合理的に算出することは困難」(中村社長)との理由で発表を見送った。


結果的にアメリカ市場偏重になったスバル

 それにしても、なぜスバルはこれほどまでにアメリカ市場偏重なのか?

 スバルのこれまでを振り返ると、富士重工業としてアメリカ市場重視策に大きく舵を切ったのが2000年代前半以降だ。国内需要の高止まりを受けて、SUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)需要が伸び始めていたアメリカ市場の開拓に乗り出し、筆者も当時、全米各地でスバルブランドに関する取材をした。

 アメリカでスバルがとった基本戦略は販売地域の拡大だった。それまで、アメリカ北東部や北西部が販売の主体だったいわゆる生活四駆のスバルブランドを、西のカリフォルニア州からアリゾナ州、テキサス州、さらに南東部のジョージア州へと続く自動車の潜在需要が多いサンベルトに広げるために、商品企画を大きく見直した。

 販売戦略としては、“パパママディーラー”とも呼ばれる家内制事業としての小規模ディーラーの融合、韓国系メーカーなどとの併売販売の見直し、またCI(コーポレートアイデンディティ)活動による中・大型販売店の新設など、大規模な変革を進めた。

 さらに、ブランド訴求のためにスバルのアメリカ法人、SOA (スバル・オブ・アメリカ)が新規に契約した広告代理店と、「LOVEキャンベーン」を実施。これが結果的に、顧客が自らスバルブランドを社会に広める地域活動へと発展し、2000年代後半から2010年代にかけてアメリカ市場での販売台数は大きく押し上げられた。その規模は、SOAや富士重工業の想定をはるかに上回っていた。

 ただし、こうしたアメリカでの成功体験の一部を、欧州や中国など他の仕向け地でも応用しようとしたものの、アメリカほどの大成功には至っていない。また、国内市場ではトヨタがSUVやクロスオーバーへの商品群シフトを一段と強めるなど、スバルブランドの優位性が揺らぎ始めている状況だ。


自動車業界復活の波に乗れるか?

 今期に入って、新型コロナウイルスはスバルの生産にも大きな影響を及ぼしている。

 国内では群馬製作所が4月9日から5月1日にかけて、アメリカではSIA(スバル・オブ・インディアナ・オートモーティブ)が3月23日から5月8日まで、それぞれ操業を停止した。操業再開後も、アメリカので需要減を見据えて、群馬製作所では早番のみの一直体制に抑え、またSIAでも生産ペースを落としている状況だ。こうした生産体制縮小が2021年第1四半期の実績を大きく引き下げる要因となることは間違いない。

 では、その後はどうなるか? トヨタは世界自動車市場で見た場合、4月が底で段階的に需要は回復し、年末から年始にかけて通年程度に戻ると予測している。スバルもそうした波に乗れるのか?

 日本ではコロナ禍によって、カーシェアリングの需要が高まるなど、自動車関連ビジネスでコロナ前と違う傾向が出てきた。一方、スバルの主力市場アメリカでは、UberやLyft(リフト)などライドシェアリングの利用は激減しているものの、その他の大きな変化は見られない。

 また、2008年のリーマンショック後のアメリカ自動車市場の動向を振り返ると、最初に回復したのは、富裕層を対象とした高級ブランドだった。コロナ後もそうした市場の動きになるのか?

 スバルはレクサスやメルセデス・ベンツなどと肩を並べるほどのプレミアムブランドではないが、顧客のロイヤリティ(ブランドに対する忠誠心)が高い。それはスバルにとって好材料かもしれない。

 他市場へのリスク分散が難しいスバルにとって、当面の間はアメリカでいかに短期間で販売回復するかが、2021年3月期の決め手となりそうだ。

筆者:桃田 健史

JBpress

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