血液をサラサラにし、骨のヨボヨボ化を防ぐ…大さじ1杯入れるだけで「納豆の真の力」が引き出せる液体の名前

2025年5月21日(水)7時15分 プレジデント社

ミルク納豆ツナ丼 - 筆者撮影

健康維持のためアンチエイジングのため、はたまたダイエットのため、毎日食べたほうがいい食品を挙げるとすれば「納豆」だ。その納豆を朝に食べるか、夜に食べるかで高まる作用を前回紹介した。しかし、残念ながらそんな優秀食品「納豆」を“食べてはいけない人”がいる。今回はそれを理由とともに解説しよう。加えて前回紹介しきれなかった納豆の魅力、「最強の食べ方」とは——。(後編/全2回)
筆者撮影
ミルク納豆ツナ丼 - 筆者撮影

■納豆を食べてもいい薬、悪い薬


超健康食品「納豆」を食べてはいけない人は、ワーファリンを服用中の人だ。ワーファリン=血液をサラサラにする薬だが、どんな人が服用するのだろうか。


東邦大学名誉教授で平成横浜病院総合健診センター長、循環器内科学を専門とする東丸貴信医師がこう説明する。


東丸貴信医師(本人提供)

「心臓や血管の病気があり、血液が固まりやすい状態の患者さんに処方します。心臓の人工弁置換手術を受けたり、心房細動という不整脈があったりすると、心臓の中で血のかたまり(血栓)ができやすくなり、人工弁の機能障害や脳梗塞、全身の血栓症が生じる危険性が高まります。これらの予防のためにワーファリンを服用します」


しかしここで疑問に思わないだろうか。納豆を食べると血液サラサラになるといわれる。その正体はナットウキナーゼという酵素だ。納豆は蒸された大豆が納豆菌によって発酵することでできるが、この発酵過程で生成されるのがナットウキナーゼで、血中にできた血栓に働きかけて溶解する作用や降圧効果をもつ。


なぜ血液をサラサラにする薬を服用中の人が、血液サラサラ効果のある納豆を食べてはいけないのだろうか?


■抗凝固薬の中でワーファリンだけが納豆NG


「実は、血液をサラサラにする薬(抗凝固薬)の中でも、ワーファリンだけが納豆と組み合わせられません。血液を固める時には、12個の血液凝固因子がリレーのように“血液を固めよ”という指令を伝えていき、最後に血液が固まります。血液凝固因子のいくつかがビタミンKによって肝臓で産生されるのですが、ワーファリンはこの凝固因子を作るビタミンKの働きを弱める薬です。つまり、血液凝固因子を産生させないという間接的な働きによって血液を固まりにくくする=血液をサラサラにします」(東丸医師)


一方で現在、抗凝固薬における主流は、DOAC(直接的経口抗凝固薬、ドアック)と呼ばれるもの。こちらは血液凝固因子のひとつのみに直接働きかけるため、ビタミンKの影響を受けない。


「ですから、DOACを服用している患者さんは納豆を食べてもかまいません。抗凝固薬(DOAC)を服用しても納豆が食べられるということを知ると喜ぶ患者さんが多いですね(笑)。簡単にいえばワーファリンを服用した場合は納豆を食べることで薬の力が弱まってしまう、DOACの場合は納豆を食べてもナットウキナーゼとの相乗効果で血液がサラサラになるのです」(同)


■ビタミンKは骨を強く、血液を整える


納豆そのものに含まれるビタミンKだけでなく、納豆菌が人の腸内で大量にビタミンKを産生する。食べた後にさらにビタミンKが増えるということで、これがワーファリンの場合はマイナスに、DOACの場合は影響を受けないために、ナットウキナーゼの良さが取り入れられプラスになるということだ。


もちろん健康な人にとっては、ナットウキナーゼだけでなくビタミンKも必要な栄養素。血液凝固因子の合成を助けるのだから、不足すると出血が止まりにくくなる。また血液凝固因子は出血した時には血液を固まらせるが、出血していない時には血液を固まりにくく(血液サラサラ)するようにも働く。


管理栄養士の望月理恵子氏がこう補足する。


「食品中のビタミンKには、緑野菜や海藻に多く含まれるK1と、動物性食品に多い、また微生物が作り出すK2があります。骨に圧倒的に役立つのはK2で、納豆に豊富に含まれます。ビタミンKはカルシウムが骨に沈着するのを助け、骨を強くし、骨粗しょう症を予防する働きがあります」


本人提供
望月理恵子氏 - 本人提供

■骨粗しょう症にも納豆は一押し


閉経後の女性は骨粗しょう症になりやすいが、これは女性ホルモンの低下が原因。骨では新しい骨を形成する「骨芽細胞」と、古くなった骨を壊して吸収する「破骨細胞」がバランス良く働き、毎日少しずつ骨を作り替えている。破壊細胞の増えすぎを抑えてくれていた女性ホルモンが少なくなると、骨芽細胞より破骨細胞が活性化されてしまう。


これを抑えてくれるのが、女性ホルモンのエストロゲンに似た働きをしてくれる大豆イソフラボンだ。イソフラボンを含む大豆そのものでも、大豆製品でもイソフラボン効果があるといわれるが、ビタミンKが多いことと、発酵しているため他の大豆製品より吸収が良いと考えられる点で納豆が一押し。


しかも納豆には骨の構成成分であるカルシウムも含まれる。再び東丸医師の話。


「納豆にはタンパク質、食物繊維のほか、美容・発育のビタミンとして知られるビタミンB2、皮膚の健康維持に欠かせないビタミンB6、肌や血管の老化を防ぐビタミンE、さらにはミネラルとして塩分の排出を促し、むくみを予防するカリウム、骨や歯の構成成分であるカルシウム、酸素の運搬に欠かせない鉄分を含みます」


■納豆の真の力を引き出す「最強の食べ方」は?


良質な脂質も。


「納豆1パック50gの中には脂質が約5グラム含まれているのですが、細胞膜の主成分、リン脂質の原料にもなる成分です。リン脂質は学習機能、記憶、睡眠に関係が深いとされています」(東丸医師)


納豆に含まれる「ビタミンK」や「ビタミンE」もともに脂溶性ビタミンで、油と一緒に取ることで吸収率が良くなる。


だから「最強の食べ方」を挙げるなら、さらに違う“良質な脂質”をかけること。


「亜麻仁油、エゴマ油を数滴たらしたりするといいでしょう」と望月氏。


よりパワーアップさせるなら、納豆に牛乳とツナを加えたい。


これを管理栄養士で料理家の小山浩子氏は「ミルク納豆ツナ丼」とネーミングしている。合わせ方のコツは、納豆1パックを練りながら、牛乳大さじ1を少しずつ混ぜて、白っぽく泡立つまで練ること。最後にツナ缶2分の1(35グラム)を汁ごと入れればOKだ。これなら、植物性タンパク質(納豆)と、動物性タンパク質(牛乳、ツナ缶)の両方を摂取でき、納豆のビタミンKが牛乳に豊富なカルシウム吸収を助ける。しかもタレがなくてもおいしくいただけるのだ。


筆者撮影
ミルク納豆ツナ丼。添付のタレがなくてもおいしくいただける - 筆者撮影

納豆を食す上で唯一の注意点を挙げるとすれば、市販の納豆製品のほとんどに添付されているタレ。タレには糖分や塩分、果糖ブドウ糖液糖などの添加物が含まれる商品が大半で、そのままかければ、ここまで述べてきた納豆の健康効果が損なわれてしまう。できれば使わないほうがいいが、どうしてもかけたい時には、よく練ってからにしたい。


■「1日3パック」食べてもいい


「先にタレを入れてしまうと粘りが弱くなるので、納豆に含まれるアミノ酸のうまみを感じにくく、タレや醤油をたくさんかけたくなってしまうかもしれません。ですからまずはよくかき混ぜた上で、せめてタレを半量だけかける意識でいたいですね」(望月氏)


さて納豆を食べる量についてはどうだろうか。


1日1パックはもちろんOKで、2パックを食べても問題ない。


「私は1日3パックでもいいと思います」と望月氏。


「ただし一度に2パックを食べるよりも、一食ごとに摂取したほうがタンパク質や食物繊維、血液サラサラのナットウキナーゼの効果が持続しやすいでしょう」


またナットウキナーゼは、70度以上で加熱すると成分が失活してしまう。チャーハンやパスタに使う際は、火にかけた状態で納豆を入れないようにしたい。前回の記事で早稲田大学名誉教授の柴田重信氏が提案したように「納豆サラダ」といった冷製の調理法もお勧めだ。


暑くなってくると、血液の流れが悪く、固まりやすくなるといわれる。いわゆるドロドロ血液で、「そこに脱水など複数の要因が重なることで脳血管疾患を発症しやすい」と東丸医師が言う。お米は高いが、ほかほかごはんに納豆をのせるだけでも栄養バランスはほぼ完璧で、血液や血管に良い作用がある。


納豆1日1パック以上を習慣にして、きたる夏を乗りきりたい。


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笹井 恵里子(ささい・えりこ)
ジャーナリスト
1978年生まれ。本名・梨本恵里子「サンデー毎日」記者を経て、2018年よりフリーランスに。著書に『救急車が来なくなる日 医療崩壊と再生への道』(NHK出版新書)、プレジデントオンラインでの人気連載「こんな家に住んでいると人は死にます」に加筆した『潜入・ゴミ屋敷 孤立社会が生む新しい病』(中公新書ラクレ)、『老けない最強食』(文春新書)など。新著に『国民健康保険料が高すぎる! 保険料を下げる10のこと』(中公新書ラクレ)がある。
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(ジャーナリスト 笹井 恵里子)

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