アマゾン上級副社長「当社は生成AIの最前線」

2023年5月23日(火)16時0分 JBpress

 米アマゾン・ドット・コムでAI(人工知能)アシスタント「Alexa(アレクサ)」を担当する責任者は、同社が生成AIブームの中心的な位置にいると説明した。

 米マイクロソフトや米グーグルなどが繰り広げるAI開発競争について、拍車をかけているのはアマゾンだとの認識を示したという。米CNBCが報じている。


「Alexaは“即座に利用可能な個人用AI”」

 マイクロソフトが出資する米オープンAIは2022年11月に「GPT-3」と呼ぶ大規模言語モデル(LLM)「GPT-3」を取り入れた対話AI「Chat(チャット)GPT」を公開した。するとわずか2カ月で月間アクティブユーザー数が1億人に達した。こうしたなか、グーグルも自社の対話AI「Bard(バード)」を開発し、一般公開した。それ以来、テクノロジー大手は生成AIを自社のさまざまなサービスに導入し、顧客を引き付けようと開発競争を激化させている。

 アマゾンも23年4月に「Amazon Bedrock(ベッドロック)」と呼ぶ基盤モデルを発表した。だが、これは同社のクラウドサービス部門、米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)が提供しており、顧客企業が独自の生成AIシステムを開発できるようにするものだ。

 一方、アマゾンは14年からAlexa搭載のスマート端末「Echo(エコー)」シリーズを展開してきた。リビングルームや寝室などに置いた端末に話しかけるだけで、音楽再生や電子商取引(EC)の商品注文、気象情報やニュースの読み上げ、家電の操作といった機能を利用できる。

 だが、CNBCは、「小説を書いたりソフトウエアコードを生成したりするなど洗練された機能を持つ生成AIの台頭は、Alexaなどのデジタルアシスタントの限界を浮き彫りにした」と報じている。Alexaは、アマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏が構想した全知全能コンピューターのような機能をまだ実現していないという。

 しかし、Alexa担当のロヒト・プレサド上級副社長はこれに反論している。同氏はCNBCとのインタビューで、「アマゾンが生成AI分野で取り残されているという考えは誤りだ」と述べた。同氏は「Alexaは長い間、AIの最前線にいる、今もだ」と主張したうえで、「ウェブブラウザーなどを通じて利用するChatGPTとは対照的に、Alexaは“即座に利用可能な個人用AI”であり、声でコミュニケーションを取れる」と利便性を強調した。


販売済み5億台のAlexa端末に生成AI追加

 アマゾンは23年5月17日、Echo端末の新製品群を発表した。そのうち「Echo Pop(エコー・ポップ)」と呼ぶ製品は半球型で、手のひらサイズの端末だ。価格は39.99ドル(日本では税込5980円)と、従来モデルに比べ安価に設定した。同社は併せて、Alexa搭載端末の累計販売台数が5億台を超えたことも明らかにした。Alexaの利用回数は22年に35%増加したという。今後も、これまで出荷したすべてのEcho製品に生成AIの新機能を追加し、端末を進化させるとしている。


独自LLM「Alexa Teacher Model」の新版開発中

 プレサド氏によれば、アマゾンは現在Alexaをより会話的で知的なものにするための取り組みを進めている。そのうちの1つが「Alexa Teacher Model」と呼ぶ独自LLMの新バージョン開発だ。AlexaにはすでにAmazonのLLMが導入されているという。

 プレサド氏は、「目的はAlexaが複雑な質問に答え、ユーザーについてより多くのことを理解できるようにすることだ」とし、「あなたが誰で、何を求めているのか、どこにいるのかといった背景情報が、その時点で最善の答えを出すための重要な要素になる」と説明した。

 アマゾンのアンディ・ジャシーCEO(最高経営責任者)は先の決算説明会で、「この技術(生成AI)は、ほぼすべての顧客体験を変革する驚くべき機会をもたらす」とし、同社が独自LLMを構築していると明らかにしていた。ジャシー氏は機械学習のためのデータセンター用半導体を自社設計しているとも述べていた。

 米ブルームバーグによると、アマゾンはECサイトの商品検索にChatGPTのような対話AI機能を組み込む計画だという。加えて、 米インサイダーは、アマゾンがエンターテインメントや創作物語に重点を置いた生成AI機能をAlexaに追加する計画だと報じている。

筆者:小久保 重信

JBpress

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