マツダ 4代目ロードスターで忠誠心高める「王道戦略」完成

5月23日(土)7時0分 NEWSポストセブン

「新型ロードスター」をお披露目した小飼雅道・マツダ社長

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 ダイハツの「コペン」やホンダの「S660」など、小型で軽量なスポーツカーが登場し、ジワジワと注目度を高める中、このカテゴリーでパイオニア的存在のクルマが満を持して新型モデルを発売した。マツダの「ロードスター」である。


「ロードスターはマツダブランドの象徴。『人馬一体』の走る楽しさやオープン走行の爽快さ、手頃な価格などが高く評価され、四半世紀を超えて愛されてきました」


 マツダ社長兼CEOの小飼雅道氏がこう自画自賛するほど、ロードスターは“走り好き”の間で根強い人気を誇ってきた。


 初代ロードスターはマツダが1996年まで展開していたプレミアムブランド「ユーノス」のバッジで売り出された。「いまだに初代を乗り続けているファンも多い」(都内の中古車販売店)ことから、まさにマツダの歴史とともに生き長らえてきた“鉄板ブランド”といえる。


 そして、1989年の発売以来4代目、先代より10年ぶりにフルモデルチェンジさせた新型モデルは、先代よりさらに100kgも軽量化したボディと力強い走り、240万円台〜という手頃な価格設定が売り。「昔のロードスターを知らない若者にも気軽に乗ってもらいたい」と、マツダ幹部も今後の売れ行きに期待を寄せる。


 台数が見込めるファミリーカーではないため、日本での月間販売計画は500台と控えめだが、発売前から3300台を超える予約受注があり、日本だけでなく世界35か国以上でも順次販売していく予定だという。


 だが、ロードスターは販売台数の規模以上に、マツダが今後進むべき方向性を見極めるうえで大きな指標になってくる。


「マツダはエンジン、トランスミッション、ボディ、シャシーなどの開発で環境や安全性能を追求した『スカイアクティブ技術』を新型車のラインナップに次々と取り入れ、わずか3年の間に主力車種を全面改良させてきた。クルマのデザインも高級感を重視した『魂動(こどう)デザイン』と称してマツダ車のイメージ統一を図り、今回のロードスターで新世代モデルが一通り出揃った」(経済誌記者)


 ブランドイメージをがらりと刷新させたことで、マツダ車に対する評価が高まっているのは事実だが、「新生マツダ」の付加価値をどこまで浸透させ、どれだけ辛抱強く貫けるのかは未知数だ。


 自動車ジャーナリストの井元康一郎氏が指摘する。


「マツダはドイツ車のアウディのような高級ブランドを志向し、少し値段は高めでも期待を裏切らないクルマづくりに自信を深めてきた印象があります。販売力ではなく、クルマの良さで分かってもらおうという、いわば“王道”の戦略で勝負しています。


 ただ、例えば『アテンザ』のようなプレミアムセグメントを購入するユーザーは目も肥えていますし、ちょっとした乗り心地にも敏感。そういう意味では一番難しい方法で大手メーカーに挑んでいるともいえます」


 マツダがこだわりのクルマづくりを貫けるかは、他社とのアライアンスの出方によっても大きく変わってくるだろう。度重なる経営難やフォードの傘下入りで方向性を見失った苦い教訓もある。


 現状、マツダの業績は過去最高益を叩き出すほど絶好調だが、世界販売台数は139万7000台足らず。トヨタの900万台と比べると6分の1にも満たない。世界的に合従連衡の進む自動車業界の中で生き残るためには、他社との協業は重要な選択肢となってくる。


 5月13日にトヨタとの提携拡大を大々的に発表したのは、マツダが「儲かる会社」としての地盤固めも無視できないと判断したことの表れなのかもしれない。


「提携内容は明らかになっていないが、トヨタの持つハイブリッドなどの先進技術と、マツダの持つガソリン・ディーゼル技術を互いに補完し合う目的がある。マツダにとっては販売力のあるトヨタ車に技術を提供することで収益力も向上させられる」(前出の経済誌記者)


 しかし、提携内容を広げれば広げるほど、「マツダらしさ」が失われていく懸念がある。


「トヨタ向けのOEM車などを増やしていけば、経営体力がつく反面、マツダ車の存在価値は薄れていくかもしれません。資本関係のないまま協業を進めてどこまでマツダにシナジー効果が出るのかは疑問です」(前出・井元氏)


 小飼社長はロードスターの発売会見で、次のように語った。


「初代ロードスターのカタログに書かれたメッセージ『だれもが、しあわせになる。』という言葉は、いま思えばロードスターのみならず、マツダブランドの進むべき方向を言い当てていたと強く感じています。これからもお客様との間に特別な絆を持ち、選ばれ続けるオンリーワンブランドになることを目指します」


 マツダブランドの矜持を保てるか。その真価が問われるのは、むしろこれからだ。


●撮影/横溝敦

NEWSポストセブン

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