運用資産を13年で777倍にした ピーター・リンチがその投資人生から編み出した 「ピーター・リンチの25の黄金律」とは?

5月24日(日)21時15分 ダイヤモンドオンライン

運用したファンドの資産を13年間で777倍にした伝説を持つ、稀代の投資家・ピーターリンチ。本人自ら具体的な投資手法や銘柄選択について記した数ある著作の中から、『ピーター・リンチの株の法則』(旧題:ピーター・リンチの株式投資の法則)が20年ぶりの新訳となって発売された。いまだに色褪せないその内容を翻訳担当の平野誠一氏にお話しいただく最終回。今回はピーター・リンチの投資のエッセンスについてお聞きした。



*第1回 「100万円が13年後に2800万円になったピーター・リンチ式のボトムアップ投資手法はいまの個人投資家でも実践できる!」 はこちら


*第2回 日経平均株価2万円、ダウ1万8000ドルの相場をピーター・リンチ、ウォーレン・バフェットならどう考え、どう動き、どう売買するのか? はこちら


編集部 ピーター・リンチがその投資人生から学んだとされる教訓、たとえば「投資は楽しい。エキサイティングだ。ただし、下調べを全くやらずに手を出すのは危険だ」などが並んでいる「ピーター・リンチの二五の黄金律」は巻末に置かれていることもあって地味な印象ですが、個人投資家にとっては大変タメになる内容だと思いました。


平野氏(以下、平野) はい。本当に地味で、読むのを省略してしまいそうになりますが、本書のエッセンスが詰まっているように思います。


編集部 全25条のうち、これだけは現在の個人投資家にぜひ知ってほしい、といったものはありますか?


平野 株式や株式投信への投資で資産を長期的に増やしたいという個人投資家には、ぜひすべての項目に目を通していただきたいと思います。ただ、私自身は、黄金律を翻訳していて特に印象に残ったことが3つありました。


 1つめは、集中投資と分散投資の使い分けです。第14条では、


 「・・・プロのファンド・マネジャーは分散投資を義務づけられているが、普通の投資家は少数の優良株に集中投資できる。保有する銘柄の数を増やしすぎると、この有利な立場をみすみす手放すことになる。・・・」


 と述べており、第8条では「一度に保有するのはせいぜい5銘柄」だと説いています。ところが第23条では、


 「株は買いたいが、下調べは面倒だしその時間もないという場合は、株式投信に投資すること。この場合は、分散投資が得策だ。成長株、割安株、小型株、大型株といった具合に運用スタイルが異なる投信を組み合わせるべきである。・・・」


 と書いているのです。いろいろなスタイルの投信を買っておけば、「株式市場で最も上昇している分野に常に投資していることになる」(新訳110ページ)というのがその理由です。


 そう言われてみればその通りですが、意外ですよね。分散投資の必要性が説かれることの多い個別株投資で集中投資を強調し、すでに分散が済んでいるはずの投資信託で分散投資を勧めているのですから。


物事を長期的に考え、時間を味方に付ける


平野 2つめは、時間を味方に付けるという発想です。第22条にはこうあります。


 「優れた企業の株を買うときは、時間が味方になってくれる。辛抱強く待てるからだ。例えばウォルマート株は、上場後5年以内に買うことができればもちろんよかったが、その次の5年の間に買っても良い結果が得られた。逆に、オプションを買うときは、時間を敵に回すことになる」


 時間を味方に付けるには第17条でいう「胆力」も必要になるでしょうが、これは物事を長期的に考えることで、例えばリンチ氏の言う「もっと大きな大局」に目を向けることで高められるかもしれません。


 3つめは、予言・予測についてです。第19条にはこうあります。


 「将来の金利や景気の動向、株式市場の方向性などを予言できる人は1人もいない。そんな予測はすべて無視し、投資先の企業で今実際に起こっていることに神経を集中しよう」


 なるほど、と思うのですが、実はたいてい当たる予言や予測もあるのではないかと私は考えています。


人口動態とリンチ式銘柄選択の合わせ技


平野 これも拙訳書で恐縮ですが、神田昌典さんに監修していただいたハリー・S・デント・ジュニア著『最悪期まであと2年! 次なる大恐慌:人口トレンドが教える消費崩壊のシナリオ』(2010年)という本にこんな一節があります。



 「米国や大半の先進国で暮らす平均的な世帯の支出は、世帯主の年齢が46〜50歳(平均48歳)のときにピークを迎える。・・・つまり出生数の多い年の48年後は好況になりやすいと考えられる。」(60ページ)


 たしかに、30代になれば家を買う人も出てきますし、40代になれば子どもの教育費や食費がかかります。実際、本書によれば、ポテトチップスの世帯消費額は、世帯主が42歳のときに最も多くなるのだそうです。また、住宅のリフォームも必要になるかもしれません。40代後半にかけて、何かと物入りになるわけです。


 ということは、40代の人がたくさんいる時期には、国全体の支出額もその分多くなって内需が押し上げられ、景気も比較的よくなると考えられます。日本でも、思い起こせば1980年代後半のバブル期は、いわゆる団塊の世代が40代になった時期でもありました。


 40代の人が多くなる時期がいつなのかは、人口統計を見ればおおむね正確に分かりますから、戦争や天変地異などによる人口構造の大変動でもない限り、「20XX年代は景気が底堅い」とか「逆に20YY年代の景気は崩れやすい」といった予想は大体当たると考えてよいのではないでしょうか。こうした人口統計をベースにした予測も踏まえて、リンチ式の銘柄選択に取り組むというやり方もあると思います。


編集部 人口動態については先日もアメリカの有名投資家が「この15年以内に大きな問題となるであろう」と発言し話題を呼んでいました。これからの経済状況に大きく影響することなので、投資をする際には頭の片隅に入れておきたいですね。それではこのインタビューも最後となりますが、最後に読者のみなさんに一言お願いします。


平野 本書は、20年前に書かれたものであるにもかかわらず、今日の日本の個人投資家にとっても十二分に有用な視点やものの考え方、そして心構えを教えてくれます。また、ピーター・リンチ氏の誠実で飾らない人柄に触れたり、やや自虐的なユーモアを楽しんだりすることもできます。ぜひ一度手にとっていただきたいと思います。(了)

ダイヤモンドオンライン

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