スマホと連動するスマート歯ブラシ「G・U・M PLAY」のできるまで<3>

5月25日(木)6時0分 JBpress

スマホと連動するスマート歯ブラシ「G・U・M PLAY」について、第1回、第2回と開発の流れについて追って行きました。

 >>G・U・M PLAYのできるまでの記事はこちら:
 <1>最初の提案の動きから3rdプロトタイプ開発まで
 <2>2016年4月18日に一般発売するまでの1年半について

最終回の第3回は、なぜG・U・M PLAY開発チームが開発まで漕ぎ着けられたのか、IoTプロダクト開発時に役立ったチームの特徴について振り返ってみたいと思います。


1.プロトタイピングベースから始められる

1-10designの所属する広告制作業界は一般的に与えられる制作期間が短い傾向にあります。基本的には企画込みの相談がくるのですが、企画の相談が発表の3ヵ月前だったり、極端なものだと1ヵ月切っている場合もあります。

そんな中、制作物を作っている会社は制作期間のロスを最小化するため、モック制作、プロトタイプ制作のスキルが高いです。

そして、「最小の制作期間でやりたいことが伝わるプロトタイプの制作」や「システムの挙動や感触がわかる最小のプロトタイプ」を制作するのが得意なのです。

また、映像制作用の道具も制作したりするので、その辺りであれば納品物自体がプロトタイプレベル、という場合すらあります。

例えば僕が関わらせていただいた仕事で、KOIKEYA HANDS FREE SYSTEMというのがあります。終盤のメイキングを見ていただければ判る通り、成功率の低いシステムだったのですが、結果的に撮りたい成功した絵が撮れ、制作したムービーも見ていただけるものになったので致命的ではなかった、と言うことです(撮影班は大変だったと思いますが・・・)。

G・U・M PLAYではむしろ企画書の提案段階からプロトタイプを提案し、アプリのプロトタイプを作ったことによって、チーム全体で共通のイメージを持てたからこそ2年間走り切れたのではないかと思っています。


2.仕様ありきではなく、体験ありき

エンジニアをはじめとする、この業界のテクニカルサイドの人間は、一般のメーカのエンジニアと異なり、仕様書を書く機会があまり多くありません。

もちろん少人数制なため、エンジニア以外とのやり取りが多いから、というのも理由の一つですが、「仕様通りのものを納める」のではなく、「クオリティの高い成果物を納める」ことを目的としているからです。

この「クオリティ」というものは定義が難しいですが、今回の場合は「一般の方に良さが判るレベルに達するかどうか」ということを指しています。

つまりユーザ体験こそが制作の指標であり、仕様が制作の指標ではない、と言うことです。

自分で考えた仕様で一通り組んで見て、クォリティがいまいちであれば自分で仕様を変更し、作り直します。

こう言った動きを普段からしてるからこそ、B2C向けのデバイスを短時間で制作できたのだと思っています。


3. 閉じてない自由なチームビルディング

広告業界では製作時に外部とチームを組むのは当たり前で、途中からの追加アサインも頻繁にあります。

「これを作りたい!」ということが出てきた時、一番簡単なのは「作れる人」に仕事をお願いする事です。

メーカの業界だとプログラムや「技術は資産であり、守るべきものである」と言う考え方が強く、他者をチームに引き入れるのに二の足を踏む場合が見受けられますが、短い期間で最大限のアウトプットをするためには最短距離で開発チームをビルドできることが非常に重要だと感じました。


4.グルー・エンジニアリング

広告業界のエンジニアの特殊性はもう一つあります。

新しい体験を実現させるための「技術と技術を繋ぐための技術」に長けている、ということです。

最近リリースしたナムコ様の「おもちゃのくにとふしぎなかみひこうき」では、映像が写っている壁に紙飛行機を当てると映像に変化が起きる、と言う体験を作るために、測域センサと呼ばれる機材を利用しています。

このセンサは通常、駅の改札周辺などで人の流れの把握や、移動型ロボットの障害物の検知に利用されています。1-10ではこのセンサを壁面に90度向きを変えて取り付け、さらに映像上の座標と合わせる処理を内臓したアプリケーションを開発し、今回の体験に利用しています。

先述の通り、広告業界は制作期間が限られるため、基礎的な研究をするのが難しいのですが、他方でこういった「技術と技術を繋ぐための技術」で新しい体験を作る、そういったエンジニアリングが得意です。

G・U・M PLAYでも内部では画像処理や信号処理、音の処理などで培われた様々なアルゴリズムが異なる領域で利用・実装されています。


5.「製品発売」という長い道をぶれずに進める力

根性論のような話になっていて恐縮ですが、2年にも及ぶ開発と言うのは息が切れたり、目的を見失ったりしがちです。特に広告業界の制作チームは新しものに飛びついて素早しスピードで制作できる一方で、一つのジャンルを長い時間かけて深く突き詰めるような仕事のやり方をする機会があまり多くありません。

サンスター社の「G・U・M PLAYを世に出してみせる!」と言う強い意志が2年間途切れず、むしろさまざまなビジネスプランや計画を考え、提案して継続させたからこそチームが継続し、一般発売までたどり着けたのだと思います。この場をお借りしてお礼を申し上げます。

最後に、各種メーカの方々へ

IoTという言葉が流行り出すのと同時期にオープンイノベーションという言葉が流行し、様々な大手メーカが少しずついろんなことをオープンにし、協業の姿勢を取ろうとしてきています。

ただ、メーカの独自技術や独自市場と言う新たなパズルのピースだけ持ち寄ってもユーザに届くような体験や製品にはなりません。足りないパーツが多すぎるからです。

ビジネスプランまで含む製品・サービスの「企画力」と、素早く実際に作る、今回の記事で書いたような「制作能力」、そして実際に触ってみて得た感想を企画のレイヤにまで戻せるような「チームの柔軟さ」が非常に重要になってきています。

逆を言えばこの点がカバーできるのであれば大手メーカはスタートアップには負けない、と思っています。

G・U・M PLAYを開発中、大手メーカが売り上げ低迷しているのニュースが流れ、スタートアップのニュースが飛び回るなら、1-10は上記の視点で大手メーカの手助けをすることができるのはでないか、と言う事で1-10driveを立ち上げることになりました。

幸い、立ち上げ以来ご相談はたくさんいただいているのですが、お仕事をする中で思うのが、「メーカにも僕らのようなことができるエンジニアが育つともっと良いチームが組める」ということです。

プロトタイピングの面白いところは、モノを作ることによって考え方が変わり、もっと良い企画まで思いつけるところ。なのでメーカの独自技術を触っている開発者自身がプロトタイピングの力を持っているとスピード感が大きく変わってきます。

そのため、今年は仕事を受けるだけでなく、プロトタイプを作るための考え方やツールの話を積極に行ったり、ワークショップをするような所にも力を入れていこうと思っています。

IoTの開発プロジェクトに限らず、そう行ったマインドセットや教育といった分野でも是非お声がけいただければ・・・と思います。

G・U・M PLAYのアプリはこちら
>>iTunes
>>Google Play

【連載】クリエイティブスタジオ1⇒10driveの「楽しいIoT」開発

第3回:スマホと連動するスマート歯ブラシ「G・U・M PLAY」のできるまで<2>

第2回:スマホと連動するスマート歯ブラシ「G・U・M PLAY」のできるまで<1>

第1回:「便利で楽しいIoT」市場を先取りするプロトタイプ開発の重要性

<執筆者プロフィール>

森岡東洋志

1-10drive, Inc.CTO兼Technical Director。工学修士。
東京工芸大学に大学院にてヒトの視覚についての研究を行う。
2009年単位取得退学。
2009年より、ニューリー株式会社にて3Dスキャナ及び画像認識装置の研究開発を行う。
2014年4月より、1-10design, Inc.に参加。
2015年10月、1-10drive立ち上げに伴い移籍。

【1⇒10drive】http://www.1-10.com/drive/

筆者:森岡東洋志

JBpress

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