「自分であらゆる仕事を抱え込む管理職」と「部下がどんどん成果を出すリーダー」の決定的な違い

2024年5月30日(木)6時0分 ダイヤモンドオンライン

「自分であらゆる仕事を抱え込む管理職」と「部下がどんどん成果を出すリーダー」の決定的な違い

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上司・管理職のバイブルとして世界で1300万部を超えるベストセラーとなった名著『1分間マネジャー』を送り出したケン・ブランチャードらが、リーダーシップについて著した『1分間リーダーシップ』。そして、その改訂新版が本記事で紹介する『新1分間リーダーシップ』だ。過去40年間にフォーチュン1000の優良企業のほとんどで、また世界中の急成長する新興企業で伝授されてきたリーダーシップのモデルとは?(文/上阪徹)

Photo: Adobe Stock

仕事を任せられる人がいない

 リーダーは、どんなマネジメントを行うべきなのか。実践的でわかりやすく、使いやすいアプローチはないものか……。リーダーの誰もが求める新しいリーダーシップの考え方を平易に説いたのが、『新1分間リーダーシップ どんな部下にも通用する4つの方法』だ。

 本書は共著の形になっているが、著者の一人は、ケン・ブランチャード。65冊の共著書があり、世界の47言語に翻訳され、合わせて2800万部超の売り上げがあるという世界で最も影響力のあるリーダーシップの権威である。

 そして本書に登場するのが、世界で1300万部を超えるベストセラーとなった彼の名著『1分間マネジャー 部下を成長させる3つの秘訣』の主人公「1分間マネジャー」。その「1分間マネジャー」から教えを受け、働き過ぎの起業家が新しいリーダーへと成長、多様なチームメンバーの力を最大限に引き出す方法を学んでいく姿を、ストーリー仕立てで描いていく。

 物語はある日、短期間ですぐれた成果をあげる理想のマネジャーを象徴的に体現した「1分間マネジャー」が、起業家と名乗る女性から電話をもらったところから始まる。

女性は自分と同じくらい熱意をもった社員が見つからず、困っていると訴えた。
「何もかも自分でやらなければなりません。安心して仕事を任せられる人がいないのです」
「委任することを学ぶべきですね」1分間マネジャーは答えた。
「でも、うちの社員にはそれだけの能力がないのです」
(P.2)

 これは多くのリーダーが、感じていることなのかもしれない。そして、「1分間マネジャー」はオフィスに彼女を招く。

リーダーが部下のために働く、という構図

 なかなか仕事を委ねられないリーダーは少なくない。任せられる部下がいない。なかなか部下が育たない。訓練するだけの時間がない……。そして、得てしてこの場合、リーダーは猛烈に働かなければいけないものだと思い込んでいる。

「1分間マネジャー」はまず、起業家に、彼女はなぜ成功できたのかについて尋ねる。

「いろいろな事業を手がけて大成功しておられるそうですね。成功の秘訣はなんですか」
「とても簡単なことです」起業家は微笑んだ。「1日の半分だけ働けばよいのです。前半の12時間でも、後半の12時間でも」
1分間マネジャーは笑いながら言った。「確かに、仕事にどれだけ時間をつぎ込むかは大事なことです。でも、時間と成功は正比例すると思っている人が多すぎる。時間をかけるほど成功も大きくなるとね」
(P.3)

 そして「1分間マネジャー」は、起業家の会社の組織の特徴を指摘する。

 ピラミッド構造になっているのではないか。てっぺんにCEOがいて、多くの社員が底辺にいて、中間にさまざまなレベルの中間管理職がいるのではないか。

 まさにこれは多くの日本の企業がそうだろう。伝統的なトップダウン型。ピラミッド構造の組織の中、その思考でリーダーたちはもがいているのだ。

 実はここに大きな問題があると「1分間マネジャー」は指摘する。

「トップダウン型、ピラミッド型の哲学をもっていると、階層が上の者のために働くことが大前提になります。そうなると組織内の立案・企画・評価は、すべてマネジャーが“責任を持つ”ものとされ、部下はマネジャーの指示に“応える”ものとされる。あなたのような経営者が、何もかもひとりでやる羽目におちいるのは、そこに原因があるのです」(P.8)

「1分間マネジャー」が提案するのは、ピラミッドをひっくり返すことだった。リーダーをいちばん下にする。そうすれば、誰が責任を持つか、誰が指示に応えるのか、の関係が変わる。

 部下がリーダーのために働く、という構図を取り払い、リーダーが部下のために働く、という構図を作るのだ。

 責任は部下にあり、リーダーはその目標達成を助ける。何もかも自分でやるのではなく、かといって部下のあら探しをするのでもなく、部下の成功をサポートする。

 そして、その方法こそが、新しいリーダーシップだった。

「リーダーシップスタイル」などというものは実はない

 リーダーシップで最もわかりやすい方法論は、指揮命令型のリーダーシップだろう。一方で、協調型のリーダーシップもあり、どちらがリーダーシップとして有効なのか、さまざまな議論が行われてきた。

 リーダーの中には、指揮命令型のリーダーシップが得意で、それを活かして成果を上げている人がいる。一方で、協調型のリーダーシップを得意とし、そこから成果に結びつけていく人もいる。

 しかし、「1分間マネジャー」の新しいリーダーシップは、そのどちらでもなかった。相手によって対応を変えていたからだ。

「リーダーシップスタイルとは、ひとりの相手とどのような形で協力するかということです。部下のパフォーマンスに影響を与えようとするとき、全体としてどのように行動するか、それが相手からどう見えるか、それがリーダーシップスタイルなのです。チームメンバーに聞いてごらんなさい。私がいろいろなリーダーシップスタイルを使い分けているのを知っていますよ」(P.10-11)

 リーダーシップスタイル、などというものは実はないのだ。相手から、どう見えているか、がすべてなのである。

 例えば、思いやりがあって、部下を大切にするリーダーシップを発揮しているとリーダーは思っているとする。しかし、残念なことに部下からは冷酷な仕事人間と見られているかもしれないのだ。

 では、部下は、誰の見方に基づいて行動するか。当然のことながら、自分の見方だ。

「あなたのリーダーシップ哲学はそれはそれで興味深いけれど、そうしたいという意図にすぎません。部下からの見方と一致しないかぎり、役には立たないのです」(P.11)

 そして起業家は、「1分間マネジャー」の部下たちに会いに行く。驚いたのは、人によって本当に対照的なマネジメントが行われていたことだった。

 人材・能力開発担当の副社長の男性には、かなりの指示が与えられていた。「1分間マネジャー」は人材開発に思い入れがあり、副社長はその指示に従っていた。

 ところが、財務責任者の女性には、まったく異なるマネジメントが行われていた。「1分間マネジャー」が指示を出すことは決してなく、ほとんどが同僚と二人で話し合って決めていた。さらに、指示も出すが意見を聞いてもらっていたリーダーもいた。

 そして起業家は、「1分間マネジャー」がどんなリーダーなのかに気づいていく。それが「状況対応型リーダー」だった。

 相手が誰か、状況がどうあるかによって、スタイルを変える。そんなリーダーだったのだ。

上阪 徹(うえさか・とおる)
ブックライター
1966年兵庫県生まれ。89年早稲田大学商学部卒。ワールド、リクルート・グループなどを経て、94年よりフリーランスとして独立。書籍や雑誌、webメディアなどで幅広く執筆やインタビューを手がける。これまでの取材人数は3000人を超える。著者に代わって本を書くブックライティングは100冊以上。携わった書籍の累計売上は200万部を超える。著書に『ブランディングという力 パナソニックななぜ認知度をV字回復できたのか』(プレジデント社)、『成功者3000人の言葉』(三笠書房<知的生きかた文庫>)、『10倍速く書ける 超スピード文章術』(ダイヤモンド社)ほか多数。またインタビュー集に、累計40万部を突破した『プロ論。』シリーズ(徳間書店)などがある。

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