Google、サムスンへの検索エンジン提供を継続

2023年5月30日(火)16時0分 JBpress

 米グーグルは、自社の検索エンジンを韓国サムスン電子のスマートフォンに継続提供できることになった。サムスンは過去10年以上にわたり、スマホの標準検索エンジンにグーグル検索を採用してきたが、ここ最近、米マイクロソフトの「Bing(ビング)」に切り替えることを検討していた。しかし、米ウォール・ストリート・ジャーナルやロイター通信によると、サムスンは社内調査の結果、現時点ではこの件についてさらに議論しないことを決めたという。


サムスン、グーグルとのビジネス関係を考慮

 これに先立つ2023年4月、米ニューヨーク・タイムズは、サムスンが自社製スマホに搭載している同社製ウェブブラウザーの標準検索エンジンをグーグルからBingに切り替える計画だと報じていた。マイクロソフトは23年3月、出資する米オープンAIが手がける対話AI「ChatGPT」の機能をBingに取り込んだ。それ以降Bingの人気が上昇している。

 ウォール・ストリート・ジャーナルによれば、サムスンは当初、多くの利用者が自社のブラウザーアプリを利用していないため、検索エンジンを切り替えたとしても現状が大きく変わることはないと考えていた。サムスン製スマホの大半の利用者は、同じく標準搭載されている「Google Chrome(グーグル・クローム)」などの他社製ブラウザーを使っているからだという。

 だが、事情に詳しい関係者によれば、サムスンは検索エンジンの切り替えが、市場にどのように受け止められるかを巡る懸念や、グーグルとの広範なビジネス関係に及ぼす影響を懸念した。その結果、現時点では、変更を行わないことを決めた。ただし、サムスンはBingを選択肢から完全に外したわけではないと、関係者は話している。


Google検索の標準化、サムスンやアップルに恩恵

 米調査会社のIDCによると23年1〜3月期におけるサムスンのスマホ出荷台数は6050万台で、世界首位。同社のシェアは22.5%で、米アップルの20.5%を上回っている。グーグル検索は、初代モデル「Galaxy S」が10年に発売されて以来、サムスン製スマホの標準検索エンジンになっている。

 また、米調査会社のインサイダー・インテリジェンスによると、グーグル検索の市場シェアは23年3月時点で96.7%だった。一方、Bingのシェアはかつて1.22%程度だったが、対話AI導入後は2.6%と、わずかながらも拡大した。グーグルは依然としてネット検索市場で圧倒的なシェアを持ち、Bingがそのシェアを容易に奪えるものではないと指摘されている。

 一方、グーグル検索の標準(デフォルト、初期設定)化は、アップルやサムスンにも恩恵をもたらしている。ウォール・ストリート・ジャーナルによれば、アップルはグーグルを標準検索エンジンに設定していることにより、年間80億〜120億ドル(約1兆1100億〜1兆6600億円)をグーグルから受け取っている。サムスンも同様の検索契約をグーグルと結んでいるが、その金額はアップルよりも少ないという。グーグルは、外部サイトなどの提携企業に対し「TAC(トラフィック獲得コスト)」と呼ばれる手数料を支払っている。これはユーザーが、グーグル検索などのサービスを利用することで同社に広告収入が入る際、その一部を提携企業に分配するというものだ。


競合・顧客・パートナー関係

 グーグルとサムスンは一部の製品カテゴリーで競合関係にあるものの、多くの分野で互いが顧客という関係にある。

 サムスンのスマホはグーグルのスマホ「Pixel」と競合する。タブレット端末やノートパソコン、ウエアラブル機器、スマートホーム機器など、多くの分野で両社はライバル関係だ。

 だが、サムスン製スマホのほぼすべてにはグーグルのモバイルOS「Android」が搭載されている。グーグルはサムスンの折り畳み式スマホ向けにアプリをカスタマイズしている。同時に、グーグルはサムスン製メモリー半導体の購入企業であり、サムスンの半導体受託生産事業の顧客でもある。

 ウォール・ストリート・ジャーナルによれば、マイクロソフトとサムスンも良好なパートナー関係だ。2社はWindowsパソコンとGalaxyスマホのアプリ同期などで協力している。クラウドコンピューティング大手のマイクロソフトは、サムスン製メモリー半導体の主要顧客だ。

 (参考・関連記事)「グーグル、MSとのAI検索競争でコスト増必至 サムスンがBingへの移行検討中」

筆者:小久保 重信

JBpress

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