年収1400万夫が熟年離婚で転げ落ちた穴

6月2日(日)11時15分 プレジデント社

※写真はイメージです(写真=iStock.com/kohei_hara)

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外資系金融で手取り年収1400万円という55歳の男性。正社員の妻は年収600万円で、世帯年収は2000万円。生活は充実していた。ところが次男の大学入学をきっかけに熟年離婚を切り出され、一人暮らしに。家計管理の経験がなく、毎月10万円以上の赤字を出すように。家計相談を受けたFPはどんなアドバイスをしたのか——。


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■正社員共働き年収2000万世帯が離婚で「没落」するまで


「1年前に突然、妻から熟年離婚を要求され、しばらく冷却期間をおいたのですが、結局別れました。一人暮らしになってから毎月10万円の赤字が続いています。どうしたらいいでしょうか」


都内在住の五嶋雄二さん(55歳・仮名)はそう言ってうなだれます。自身の定年や子どもの大学入学などのタイミングで離婚をする、いわゆる「熟年離婚」が増えていますが、五嶋さんの場合は精神的にも経済的にもダメージが大きかったようです。


五嶋さんは外資系の金融機関に勤務し、元妻の絵里子(48歳・仮名)さんは大手流通系の会社に勤めています。手取り月収は52万円(五嶋さん)、43万5000円(絵里子さん)、ボーナスは年間160万円(五嶋さん)、126万円(絵里子さん)で、手取り年収が1400万円、額面で2000万円を超える「正社員夫婦」の裕福な世帯でした。


■55歳独身、可処分所得月42万円でも月10万赤字の深い闇


子どもは大学4年の長男と大学2年の次男で、ともに東京のトップクラスの大学に現役合格。その喜びもつかの間、昨年の春に妻から、「子育ても、家のことも、お金のことも、全部私に押し付けられて、これまでずっと我慢してきた。次男も大学に入ったし、これを機に離婚したい」と切り出されてしまったのだそうです。


絵里子さんが提案した離婚の条件は「子どもと暮らすのは私。慰謝料はいらないので、貯金・財産は半分ずつ分けよう」というものでした。東京都内の一等地にあるマンションは売り、ローンの残債を引くと、それぞれ1400万円ずつの現金が残りました。


離婚後、五嶋さんは子ども2人が大学を卒業するまでの養育費として毎月計10万円、それに加えて次男の学費を担当(長男分は元妻担当)することになりました。五嶋さんの場合、次男の大学の授業料は年間で約140万円かかりますが、これはボーナスから出すことにしました。


結局、元妻にわたす養育費10万円を差し引いた月収42万円を五嶋さんひとりの生活費として使えることになりました。新たに賃貸マンションの家賃(14万5000円)がかかるようになったとはいえ、この手取り月収で赤字とはどういうことなのでしょうか。



■「ひとりで寂しいから」月50万円以上も浪費し家計壊滅


五嶋さんは家計簿アプリで、離婚後の支出を記録していました。早速チェックすると、食費9万7000円、日用品2万2000円、交際費約8000円、嗜好品(主に日本酒、焼酎)約2万4000円など、一人暮らしにしては「かけすぎ」と思える支出が目立ちます。


「ひとりで、家で食べても寂しいだけなので、食事はほとんど外食だし、家にいるときのお酒の量も増えました。日用品は買い物が面倒だから、ネットで値段も確認せずにポチっとしています。会社の飲み会も子どもが受験の時は断っていましたが、待つ人もいないから、誘われるままに参加しています」


どうやら予算も考えずに、ただ使っているだけの浪費ざんまいのようです。


離婚前の五嶋さんは自分の小遣い10万円を取ったあとは、残り42万円を生活費として妻に渡していたそうです。家計の管理も貯金もすべて妻まかせ。五嶋家の家計費として、「何にいくらかかるのか」をほとんど知らなかったといいます。


いま、一人暮らしとなった五嶋さんは、家計簿アプリの数字を見て、「こんなに使っているのか」と愕然としたものの、一方で、「寂しいからこの支出も仕方ない」という思いもあり、具体的に手を打つことができません。また、家計管理の初心者ということもあり、どこをどう減らせばいいのか、その手掛かりさえ全くつかめないそうです。


■家計管理を妻に丸投げの夫が妻と離別・死別後に「家計難民」に


家計を妻に丸投げし、自分は関わりを持たなかったために、妻と離別、死別したあとに「家計難民」になってしまう男性が少なくありません。


いくら仕事で大きなお金を動かしていても、毎日の生活を淡々と支えていく「家計のやりくり」は、同じお金でも別次元のもの。食べるための食費、生活を維持するための生活日用品費、お付き合いのための交際費など、目的に合わせたお金の使い方を、「月収」という範囲内でコントロールしていく必要があります。


赤字で困っているのに、行動に移せない五嶋さんですが、このまま赤字生活を続けていると、将来直面するのは必至という現実を、まずは知ってもらうことにしました。


60歳まであと5年、年金生活まであと10年というところで以下のリスクを挙げました。


(1)貯金がマイホームのマンションを売却し、元妻と折半した1400万円だけでは決して安心できない。

(2)定年後は雇用延長できても、収入は半分から3分の1に減る。

(3)介護が必要になったときに、民間の介護施設への入居をすると、トータルで数千万円かかる場合がある。

(4)現状のまま賃貸生活を続ける場合、一生家賃がかかる。

(5)数年前に転職したばかりで、退職金がほとんど期待できない。


などなど、「寂しいからお金を使ってしまう」ばかりでは、老後のお金はもっと寂しくなってしまいます。


五嶋さんはいま対策を立てないと取り返しがつかなくなる現実にようやく気づき、家計の改善に前向きに取り組んでいくことになりました。




■固定費と変動費合わせて月計15万円のコストカット実現


ところが五嶋さんは、「会社のコストカットと同じで、一律20%カットでいきますね」と言い出したのです。家計は「一律いくら」と、機械的に削減できるものではありません。いま五嶋さんが家計費として使っているお金を把握し、「必要なもの」と「欲しいだけのもの」を仕分けし、「必要なもの」だけを買うようにする、自分の価値観に合わせた「コストカット」が必要なのです。


例えば、外食も「ただカットする」のではなく、安くておいしい定食屋さんを利用したり、アラカルトをセットメニューに変えるなどでいいと思います。


こうして五嶋さんと一緒に費目別に見直しをかけ、食費は2万2000円減額、日用品費は「ひとりで1カ月に使う分だけ」買うようにしたことで9000円減額、交際費は回数と予算を決めて2万8000円減額、ということに決めました。


このような変動費に加え、固定費も見直しました。


まず、ひとりでは広すぎる部屋からの引っ越しも決断(家賃14万5000円→11万円)。保険は子どもが大学生になり、離婚もしたということで、家族のための死亡保障を見直し、医療保障中心に切り替えました(生命保険料2万7000円→1万2000円)。車も手放し、カーシェアリングを利用することにしました(車関連費2万3000円→4000円)。細かいところでは、スマホも変更しました。


すると固定費だけで計約7万5000円の削減ができ、変動費の減額分と合わせると計15万円にもなりました。家計費全体では、これまでは毎月約10万円の赤字でしたが、月5万円近く貯金ができる道筋が立ちました。「貯金ができるのも大きいですが、収入の範囲内で暮らす大切さがわかったことが一番の収穫です」と、五嶋さんは前向きに話してくれました。




※写真はイメージです(写真=iStock.com/shaunl)

■リストラや病気、役職定年後に50代がビンボーになる


今回の五嶋さんは離婚でしたが、リストラや病気、役職定年の影響で、50代の方が経済的にピンチを迎えるケースは少なくありません。老後を前に大きな不安にさらされますが、そんなときはまず、「収入内に支出を収める」ことが第一歩になります。


支出項目を一つひとつ振り返りつつ、不要な支出を減らしていく「痛み」を伴う作業ですが、家計の改善には強い力を発揮します。「人生100年時代」といわれるいま、末永く豊かな老後を過ごすために、ぜひ取り組んでいただけたらと思います。




※写真はイメージです(写真=iStock.com/nterstid)

■【家計費コストカット額ランキング】



1位 -3万5000円 住居費

同じマンションの単身者向けの部屋に引っ越し予定

2位 -2万8000円 交際費

予算と回数を決めた

3位 -2万2000円 食費

外食は庶民的な価格の店を中心に。週に2回は自炊

4位 -1万9000円 車関係費

車を手放し、カーシェアを利用

5位 -1万5000円 生命保険料

死亡保障を縮小し、医療保障重視に切り替えた

6位 -1万3000円 生活日用品費

一人暮らしに必要な分だけを購入

7位 -7000円 教育費

会員の種別変更とパーソナルトレーニングをやめた

8位 -6000円 嗜好品(日本酒)

頒布会をやめ、「あれば飲む」から脱却

9位 -5000円 通信費

スマホは格安SIMに

(家計再生コンサルタント 横山 光昭 写真=iStock.com)

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