東京スカイツリー 頂点と地上の中心点の誤差は500円玉以内

6月3日(水)16時0分 NEWSポストセブン

 業界紙、専門誌のめくるめく世界をあなたに──。今回は測量の専門誌を紹介します。


『測量』

創刊:1951年

月刊誌:毎月10日発売

部数:1万3000部

読者層:測量・設計会社、地図会社、地図情報システム技術者、官公庁ほか

定価:731円

購入方法:大手書店に注文するか、発売元・日本測量協会に直接注文。


 長〜いトンネルをくぐっているとき、ふと思うことがある。「あっちとこっち、2方向から掘って、途中ですれ違い、貫通しなかった、なんてことはないのだろうか」と。


 日本でいちばん長いトンネル道は、1985年に開通した関越自動車道の関越トンネルで11.5km。一方、日本一長い橋は、1997年に開通した東京湾アクアブリッジで4.424km。こっちだって、「ズレて困った!」なんてことはなかったのかしら…。


 しかし、同誌の佐田達典編集委員長(53才)は、「そうならないために測量をするんです」ときっぱり。


 道をつくり、宅地造成をして街をつくる。個人の家をつくる。ビルを建てる。とにかく私たちの目に触れる土地や建造物のすべて。さらに、地図も、海図も、測量することから始まっている、と佐田さんは言う。


「ちなみに、地上634mのスカイツリーをまっすぐに建てるためにどうするかは、最も高度な測量の仕事です。スカイツリーが天に向かって垂直であることはいうまでもないことだけど、てっぺんの点と地上の中心点の誤差は“五百円玉の大きさの内”で、世界のトップレベルです」と、なんとも誇らしげだ。


 スカイツリーの場合もそうだが、最初に中心を決めるために、人工衛星で位置を割り出したあとも、完成まで絶えず、毎日測る。


 塔の高さによって、精度の高い測量法も変わる。それを明らかにしたのが特集記事『測量現場最前線 東京スカイツリーの建設工事へ適用した測量技術』だ。


〈塔体の鉄骨工事は、タワークレーンを利用した積層工法により進められた。鉄骨工事中の作業床はすべて仮設で、常に風やタワークレーンの動きなどによる大きな変位を伴う作業環境であった。鉛直精度を確認できるのは、エレベーターシャフト周りの空間に限られ…〉


 現場の緊張が伝わり、難度の高さが推察される。


 苦労といえば、山岳の測量も想像を超える。昔は、テントを担いで、1か月ほど下山しないで測量を続けることもあったそうだ。


「水のないところは、テントにたまった夜露を集めているという話を聞いたこともあります。山頂と山頂の間の角度を正確に測るには、空気が澄んでいる日の出直後が最適。日の出前から測量機で構えているんです。道沿いに高低差を測るには、50mごとに観測を繰り返し、1日で数㎞の間を何往復もします。それで往路と復路で誤差が大きいと、初めから測り直し。まじめで几帳面な職人的な性格でないと務まらないでしょうね」


 そう分析する佐田さんは、 現在は大学で測量学の教授に就いているが、ゼネコンの社員として測量現場で経験を積んだ過去もある。


 自然の中での仕事は、ハイテクとは別の知恵も必要になる場面もあるのだそう。


「宅地造成地で測量をしていたときに、トンビに後ろから頭を襲われたことがあります。年配の測量士さんから『ヘルメットの後ろに目玉を描くといい』と教わって、油性ペンで描いたら本当にトンビが遠巻きになったんですよ」と笑う。


 なんとも牧歌的で楽しそうだが、雨風にさらされ、外で働くことを厭う若者が増え、高齢化が進んでいるのが業界全体の実情だ。


 そんな中、明るいニュースもある。男性中心の測量界に女性が進出してきているのだ。多くは、航空写真などをコンピューターで図面化するデスクワークだが、測量の現場に出たい女性も現れたという。


 同誌の連載コラム『ふぃめいる』では、独学で測量士補の資格を取った北海道のNさんの寄稿文を載せている。


〈…私の夢は、測量の現場に行って、若い技術者が困っているときに「ちょっと見せてごらん」と言って、さりげなく測量機器を覗き、問題を解決してあげられる、そんなカッコいいおばあちゃんになることです〉


 こんな“ハンサム・ウーマン”にあこがれて、後に続く女性が今後、増えてくるかもしれない。


※女性セブン2015年6月11日号

NEWSポストセブン

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