「早期内定」の良し悪しを考えてみる

6月4日(火)19時29分 財経新聞

 来春卒業予定の学生の採用選考は、経団連の指針では6月1日が面接など選考の初日とされていますが、今年は採用スケジュールを前倒しする会社が多く、就活中の学生の2人に1人がすでに内定を得たという調査結果もあるようです。
 指針の内定解禁は10月1日とされていますが、採用選考はすでに終盤を迎えているとのことです。

 今のような売り手市場であれば、そうなるのはほぼ予想通りの話で、企業側は間違いなくその想定で採用活動をしています。
 就活する学生は、基本的には企業の指示に合わせて選考を受けますから、ある程度希望に合う企業から「内定です」と言われれば、それを受け入れる人も多いでしょう。

 人材不足の中で、この状況はしばらく続きそうですが、この新卒採用での「早期内定」について、いったい誰が得をしたり損をしたりするのか、どんなメリット、デメリットがあるのかを考えてみました。

 まず、就活している学生側ですが、早く決まればその分だけ、その後の学業や学生生活に集中することができます。以前の就職氷河期では、なかなか内定が出ない人が続出して、部活動の最後の試合に出られない、卒業論文に手がつけられないなど、学生生活の上で好ましくないことが多数起こりましたが、そんな不都合は避けられます。
 安心して、心を落ち着けて卒業までを過ごせるのは、学生にとっては間違いなく良いことです。

 その一方、早く内定が出ると、就活で接する社数はどうしても少なくなります。自分なりにはいろいろ考えて活動しているでしょうが、接する社数が少ないと、自分の中での比較対象も少なく、判断基準は甘くなりがちです。その結果として、ミスマッチが増えてしまいます。

 さらに、早く内定するということは、入社までの期間は反対に長くなります。その間に何か状況変化が起こったり、「本当にこれでいいのか」などと心境の変化が起こったり、内定後にいろいろ情報を得る中で、ミスマッチに気づいてしまうこともあります。
 内定してから実際に働き始めるまでの期間が、場合によると1年近くもあるというのは、あまりに長すぎて、それは決して良いことではありません。

 今度は企業側から見てみると、やはり「早く採用予定数を満たしたい」という心理は、どこの会社でも同じなので、早く決まればそれなりに安堵の気持ちにはなるでしょう。
 ただし、内定フォローの期間は長くなるので、それはそれで気が気ではありません。辞退者を出さないように、とにかくこまめなフォローが必要になり、そういう意味ではトータルの労力は変わらないかもしれません。
 また、こういう売り手市場では、なかなか内定者が確保できずに、いつまでも採用活動を続けざるを得なかったり、内定者フォローでは、早くから研修などを受けている人から、そういう準備がまったくない人まで大きな差がついてしまったり、予定通りに進められないのは、デメリットになるでしょう。

 私も、新卒採用は企業側で携わる立場になりますが、こうやって一歩引いて見ていくと、新卒採用の進め方自体で合理的でない面が増えてきているのがわかります。
 私が何よりも気になるのは、お互いのミスマッチが増幅しているように感じることです。「早期内定」によって、短期間でわりとさらっと決めた学生側と、何とか人数を確保しようと必死に人集めをする企業側があり、さらに入社するのは1年近く先になることもあります。変化の激しい時代に先の状況を見通すのは意外に難しいですし、お互いの事情の変化や心境の変化もあるでしょう。

 ただ、今後の方向を考えると、新卒採用は徐々に通年化していき、卒業してからじっくり就活をするとか、在学中からアルバイトの延長で就職するとか、パターンがいろいろ増えていくでしょう。
 転職は今まで以上に一般的になり、自分の意に沿わないことやミスマッチを我慢することは、一層なくなっていくでしょう。
 そうなれば、「採用選考の早期化」「早期内定」を問題視する必要性は、どんどん薄れていくと思われます。

 聞くところによると、政府は来年も現行スケジュールを踏襲すると決めたとのことですが、「採用早期化は悪」の発想は、そろそろ転換しても良さそうに思います。今年以上に実態とのギャップが広がるだけではないでしょうか。

※この記事は「会社と社員を円満につなげる人事の話」からの転載となります。元記事はこちら

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