トヨタの権力継承、最終コーナーに 豊田章一郎名誉会長が「東和不動産」会長ポストを章男氏に禅譲

6月5日(金)11時36分 J-CASTニュース

本当に権力は継承されたのか(2013年5月撮影)

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   トヨタ自動車の「ドン」、豊田章一郎名誉会長(90)による、長男への「お世継ぎ」、豊田章男社長(59)への権力継承が、いよいよ最終コーナーにさしかかった。

   トヨタグループの不動産事業を統括すると同時に、グループ各社の株を保有することで事実上の「トヨタの持ち株会社」(関係者)とされる、「東和不動産」(名古屋市)の会長職を章一郎氏が2015年6月に退き、後任に章男氏に就くことになった。90歳を迎えた章一郎氏が、世代交代を進める意志を明確にしたものと受け止められている。


グループ結束を保つ「扇の要」


   東和不動産は非上場ながら「トヨタの持ち株会社」であるだけに、そのトップ人事が今春、名古屋経済界のみならず、自動車業界でも注目されていた。昨年末から人事スズメたちは「そろそろ社長が変わる」とささやいていた。


   東和不動産がどういう会社かと言うと、名古屋駅前のトヨタ関連の不動産管理が主業務である。毎日新聞社との共同事業である高層ビル「ミッドランドスクエア」(2006年竣工)や、名古屋鉄道などとの共同ビル「名古屋クロスコートタワー」(2012年竣工)を運営。2014年に近畿日本鉄道から取得した現「桜通豊田ビル」のほか、2016年に竣工予定の「新・第二豊田ビル」なども手がける。


   2027年のリニア中央新幹線開通を前に活気づく名古屋駅前の不動産の多くを我がものにすると言っていい。それだけでなく、デンソーやアイシン精機、トヨタ紡織、豊田自動織機といった名だたるグループ有力各社の株式を一定程度保有し、グループ結束を保つ「扇の要」のような会社だ。


   人事スズメがうわさしていたのは、東和不動産から古巣のトヨタ本体に戻る伊知地隆彦社長(62)の後任に、西川幸男副社長(61)が昇格するのではないかとの見立てだった。西川氏は社長含みでトヨタ本体から招いたとされる人物だったからだ。しかし実際は、今年6月に豊田自動織機副社長の山口千秋氏(65)が東和不動産の社長に就くことになった。


   さらには会長が章一郎氏から章男氏へ世代交代である。関係者からは、「世代交代にあたって章男氏が御しやすい山口氏を社長に据えた」との解説がまことしやかに聞かれる。


「現役引退」を印象づける


   ドンこと章一郎氏は東和不動産だけでなく、トヨタグループの「長男坊」的な部品会社、デンソーの取締役も6月に退く。章一郎氏は実に1964年から半世紀超、デンソー取締役を務めており、その退任は少なからぬ驚きを持って受け止められた。さらには、同じくグループ部品会社の雄、アイシン精機の監査役も6月に退く。これは、グループ主要企業の経営から一斉に距離を置くことを意味する。


   それだけではなく、章一郎氏は産学官一体で科学技術の研究を進める「科学技術交流財団」(愛知県豊田市)の会長職も6月に退く。この財団は中部財界が中心になって1994年に設立した団体で、章一郎氏は2004年から会長に就いていた。後任は章男氏ではなく、トヨタでかつて副社長をつとめた人物だが、章一郎氏の「現役引退」を印象づける人事と受け止められている。


   トヨタ本体の社長に章男氏が就任したのは2009年で、早くも今年6月で丸6年となる。この間、章男氏の量より質を追うかのごとき「もっといいクルマを」とのかけ声のもと、「前任の渡辺捷昭社長時代の無防備な拡張路線の失敗から利益重視路線で復活」とのイメージ形成に成功したと言っていい。


   ただ、「グループの人事は章一郎さんが決めており、章男さんは口を出せない」との指摘も根強い。章一郎氏としては、昨年春に日経新聞に「私の履歴書」も書いて「思い残すことはない」境地を演出したのに、だ。


   さて、本当に権力は継承されたのか。親子間の話だけに部外者に真相は不明だが、「継承」を演出しようとしていることだけは間違いない。

J-CASTニュース

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