部下のやる気、上司のあなたがそいでいないか?

6月7日(木)6時0分 JBpress

部下のやる気を摘み取っていないか?

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 どうしてもっと「主体性」を持って働いてくれないのだろう——。部下に対し、そんな悩みを抱える上司の方も多いのではないだろうか。

 一方で、部下の働き方は上司の行動や態度に左右される、という面もある。では、部下が主体的な働き方をするために、上司が気を付けるべきなのはどのようなことだろうか。自立型人材育成カリキュラムを用いて年間300日以上を社員研修に費やし、『ぐんぐんと部下が育つリーダーの55の成功習慣〜信頼されるリーダーになるための教科書』(セルバ出版)などの著書がある、藤咲徳朗氏にその要諦を聞いた。


部下の「やる気」がないのは上司のせい?

 中間管理職に対するアンケート調査をまとめた「日本のミドルマネジャー白書2016」(日本経営協会)によると、「OJTを行う上での悩み」として最も多い回答は「指示したことはやるが自発性が見られない」(32.8%)で、「20代の社(職)員に身につけて欲しい能力」として最も多い回答は「主体性」(60.9%)となっている。

 こうした統計からも、部下にもっと主体性や自発性を持ってほしい、と感じている上司は多いことが分かる。自分から積極的に動かない部下のことを、やる気がないのではないか、とすら感じている上司の方もいるだろう。しかし、藤咲氏はその原因が上司自身にもあることが少なくないと指摘する。

「上司の叱り方に問題があるケースもあります。端的なのは『やる気があるのか』という言葉。これを言われた部下は、ほぼ100%やる気がなくなります。さらには『この上司、私の仕事を見てくれていない』と悲しい気持ちになることもあるでしょう」

 藤咲氏は、このような「悪い叱り方」として、よくある3つのパターンを挙げる。1つめが「目に見えないものを叱る」というもの。「やる気があるのか」はこのパターンに当てはまる。

「目に見えないものを対象に叱られても、部下はどうしたらよいかイメージできません。できたとしても、上司とは違うイメージを持っています。そのため、上司自身が思う『具体的な改善行動』を一緒に伝えることが大事です」(同氏)。

 たとえば、「約束の時間の5分前には来るようにしよう。ギリギリだとやる気がないと相手に感じさせるから」といった言い方だ。


「なぜ?」の繰り返しは部下を追いつめる

 2つめが「否定語」をつかった叱り方。「お客様のほうを見ていないとダメだよ」といった言い方がこれに当たる。

「否定語で叱られると、否定された悪い行動のイメージが残り、気分もよくありません。肯定語を用い、良い行動を示しましょう。さらに、こういうプラスのことがあるよ、と伝えられるとベストです」(同氏)。

 前述の例であれば、「お客様のほうを見るといいよ。そうすると、何をしてほしいか分かるから」といった言葉に言い換えるとよい、ということになる。

 3つめが、過去の事柄に対する原因を質問する叱り方。「なぜ、ミスしたんだ?」といった叱り方で、さらに否定語を使った「なぜ、やらなかった?」といった言い方も含まれる。

「これは、過去に向けての質問。聞かれたほうは、できなかった事に対しての『言い訳』を考えるしかありません。さらに悪いのは、『なぜ(Why)』を言われたほうは、責任を追及されている気分になることです。繰り返すことで、部下を追いつめてしまうことすらあります」(同氏)。

 そこで代わりとなるのが、『どのようにしたら(How)』などを使って未来形で質問することだという。

「既にしてしまった行動の言い訳を考えさせるより、未来に向かって『自分ができる行動』を考えさせることが、主体性を持った部下育成にもつながります。さらに、その行動を自己宣言させることで、前向きな気持ちにするという効果もあります」(同氏)。

 前述の言い方を改善すると、「なぜミスしたんだ?」は「どのようにしたらミスがなくなると思う?」に、「なぜやらなかった?」は「いつからやる?」といった言葉に言い換えられるということになる。

「いずれにせよ、感情的にならないことが大前提です。相手の成長か状況の改善につなげようとする心構えをもって叱ること。それが部下に伝わることが必要です」(同氏)。


「褒める」のが苦手な人は「認める」ことから始めよう

 そして、こうした叱り方のポイントを押さえることとともに、「褒める」チャンスを上手に生かすことで、部下の働く姿勢は変わると藤咲氏は説明する。

「少しでもできたことがあったら褒めることが、部下の自信につながります。チャレンジしていることを褒めれば、部下は積極的にチャレンジをするようになるでしょう。自信は主体性につながります。逆に、欠点の指摘ばかりだと、叱られないためにどうするかばかり考えるようになり、部下は自分からは動かなくなります」

 しかし、自分の考えるレベルに達していないと思っている部下を「褒める」ことに抵抗感がある、という上司もいるかもしれない。そうした上司に対し藤咲氏は、まず「認める」ことを意識するように勧める。

「褒めるというのは、ウソを言っておだてるということではありません。相手の良いところを認め、それを伝えるということです。できていることは『できて当たり前』と思っているリーダーは、いつも欠点の指摘から始まってしまい、そのうち褒めるチャンスを失ってしまうのです。欠けたリンゴを見ると、欠けている部分が気になるのが人間です。ですから、良いところを認める、つまり褒めるのには努力が必要なのです」

 また、「褒めたい」と思っていても、とっさに言葉が出てこないという人は、相手が喜ぶ定番の言葉を使うことから始めるといいという。たとえば、藤咲氏が独自にとった「職場で言われて嬉しい言葉」のアンケートによるベスト5は次のとおり。これなら、日常的に使えそうだ。

 1.よくやっているね
 2.君ならできる
 3.ありがとう
 4.助かった
 5.いつも頑張っているね

「とくに感謝の言葉は大切です。上司に感謝されている部下は、一生懸命に仕事をします。このような『褒める、認める、感謝する』言葉が行き交う職場は、それが風土となって、コミュニケーションが円滑になり、仕事が効率的に進められるようになるはずです」(同氏)


ほめてやらねば人は動かじ、任せてやらねば人は育たず

 藤咲氏は、部下を育成するときの心得がよく分かるものとして、山本五十六の次の言葉を挙げる。

「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。
 話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。
 やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず。」
(山本五十六)

「『褒める、認める、感謝する』ことの重要性とともに、上司は部下に対する包容力や受容力、任せた結果の責任はとる覚悟が必要ということが分かる言葉です」(同氏)

 そして、このように部下の育成は大変だが、それを乗り越えれば上司自身の働き方にとってもプラスになると、藤咲氏は主張する。

「部下がいつまでたっても成長しなければ、プレイングマネジャーとして自分の仕事にも追われる上司は、部下の面倒を見るだけでへとへとになってしまうでしょう。仕事に追われ、上司自身も主体性のない働き方を強いられることになります。部下の育成は、上司の役割であると同時に、上司自身のためになることなのです」

 ちなみに、前出の「日本のミドルマネジャー白書2016」によると、「仕事上の問題、悩み」は「部署の人材が不足している」(41.7%)が1位だった。いくら嘆いても、良い人材を集めることは、ほとんどの場合、難しい。今いる部下を、主体性を持った頼れる人材として育成することが、前向きな解決策となるだろう。

 部下を持つ上司に向けて、藤咲氏は次のように語る。

「部下について悩んでいない上司の方は、ほとんどいません。だからこそ、上司の方には、まず『褒める、認める、感謝する』という習慣を身につけていただきたいと思っています。そうした習慣が、部下と上司自身の働き方を前向きなものへと変えるとともに、幸せな職場づくりにつながると信じています」

筆者:小林 麻理

JBpress

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