トランプ大統領が「帝国」でなくパレスホテルに泊まった理由

6月9日(日)7時0分 NEWSポストセブン

トランプ米大統領が宿泊した「パレスホテル東京」(写真右手前)

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 5月28日まで4日間の日程で来日したトランプ米大統領。天皇陛下との会見も予定されていたため、宿泊先は皇居にも程近い御三家ホテルの「帝国ホテル 東京」になるものと思われていたが、実際に宿泊したのは「パレスホテル東京」だった。同ホテルが選ばれた理由について、ホテル評論家の瀧澤信秋氏が解説する。


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 令和初の国賓として来日したトランプ米大統領。アメリカ大統領であることは言わずもがな、不動産王としても知られホテルも所有している。“トランプ・ホテル”にはフォーブス・トラベルガイドで5つ星ランクに格付けされるラグジュアリーホテルも多い。そんなトランプ氏が国賓として来日するということで、どこのホテルに宿泊するのかはホテル評論家として大きな関心があった。


 通常、国賓として来日した要人は、元赤坂の迎賓館に宿泊するのが通例といわれる。かつて国賓として来日した第42代クリントン大統領も迎賓館に宿泊。一方で、滞在の効率性やハードの快適性など様々な理由からホテルの利用も一般的になってきた。


 オバマ大統領が2014年に国賓として来日した際は「ホテルオークラ東京」に宿泊し、トランプ大統領は2017年に来日(公式実務賓客)した際には「帝国ホテル 東京」を利用した。


 今回のトランプ氏来日では、現在本館の建て替え工事中のホテルオークラは候補から外れたとしても、やはり帝国ホテルが最有力と言われてきた。ところがフタを開けてみると「パレスホテル東京」だった。皇居に隣接した立地という点から天皇、皇后両陛下に拝謁する際にも利便性が高いといった推測もなされ、同ホテルが脚光を浴びることになった。


 だが、そんな丸の内の皇居前という好立地にそびえるパレスホテル東京でも、帝国ホテルの知名度に比べると一般への周知性という面では決して高くはない。それはまず規模の差によるところがあるだろう。付帯施設の規模はもとより客室数900室を超える帝国ホテルに対し、パレスホテル東京は290室とコンパクトである。


 じつはこの290室というのは建て替え後(2012年5月グランドオープン)の客室数であり、従前は389室であった。すなわち当初と比較して客室面積の拡充がなされたわけだが、ハードに加え高い質のサービスもあいまってADR(平均客室単価)は向上、富裕層に人気の“知る人ぞ知るホテル”というイメージが定着した。ホテル評論家の間でも評価の高いホテルだ。


 事実、ミシュランガイド東京2019では「4つ星+」と帝国ホテルの「4つ星」よりも高い評価を得た。直近ではフォーブス・トラベルガイドのVERIFIED LIST(2019)で“WORLD’S BEST ROOMS”を受賞。これは国内でパレスホテル東京だけであり、国賓を迎えるに相応しい“帝国ホテルより格上”の称号を受けている。


 トランプ氏が宿泊先にパレスホテルを選んだ理由は、こうしたホテルの外部評価に加え、外から建物の外観がよく望めるホテルで、コンパクトなホテルかつ周りにお濠もあることで警備のしやすさもあったことが推測できる。


 通常こうしたケースでは、政府関係者などからホテルを見学させてほしいといった事前の連絡はあるものの、宿泊者が大統領本人と伝えられるのは直近であるといわれているだけに、国賓、それも米大統領を迎えるホテル側の準備はさぞかし大変だろうというのは想像に難くない。事実、過去にVIPを迎えたホテル関係者は、「警備や守秘義務、おもてなしのサービス面など念入りに行う必要があり、各部門の団結の強さが必須だ」と話す。


 それはパレスホテルでも同様であっただろう。また、こうした特別な状況下においては、一般のゲストへの配慮にもホテルの格があらわになる。トランプ大統領滞在中に同ホテルを利用したというゲストは、料飲施設ほかパブリックスペースでの気遣いもさすがだったと振り返る。こうしたシーンにおけるホテルスタッフの結束力、チームワークは“選ばれるホテル”の条件なのかもしれない。


 大統領が宿泊するともなれば、通常ゲストが利用できるサービスの一部が制限され、機会損失への補償もないといわれるが、VIPを迎えることはホテルにとって高いハードルであると同時に名誉なことでもあるだろう。知名度が上がるというよりも、スタッフが自らのサービスを顧みることで、さらにレベルがアップする契機になるともいう。


 ホテルはゲストに育てられるという側面がある。他方、メディアに注目されることは多くのゲストがホテルを訪れるきっかけにもなる。筆者はメディアでホテルを紹介する機会が多いが「注目されることはスタッフのモチベーションが高まる最大の効用」と語るホテル支配人は多い。


 今回のニュースでパレスホテル東京を訪れてみたいと思った方も多いことだろう。ホテルには宿泊をはじめ料飲やバンケット、ウエディングなどの機能がある。さらに“迎賓館”としての役割までも担うホテル。ホスピタリティマインド溢れる非日常空間への興味は尽きない。

NEWSポストセブン

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