理想はApple? 売上高30兆円超えのトヨタ「東京五輪後」の"脱クルマ戦略"

6月11日(火)6時20分 週プレNEWS

5月8日、トヨタの2019年3月期決算説明会に臨む豊田章男社長。5月13日の「終身雇用はもう難しい」との発言も話題に
5月8日、トヨタの2019年3月期決算説明会に臨む豊田章男社長。5月13日の「終身雇用はもう難しい」との発言も話題に

売上高30兆円超を記録したトヨタが、住宅事業でパナソニックと手を組んだ。自動車業界の巨人はこれからどこへ向かおうとしているのか? 自動車ジャーナリストの小沢コージに解説してもらった。

■トヨタが世界の下請け工場になる?

──小沢さん、トヨタが年間売り上げで日本企業初の30兆円超えを記録しました。 

小沢 コイツは問答無用にギンギンのビンビン! 小沢は久々にニッポン物づくり業界の男根の太さを示せたと思ってる。

ちなみに自動車の世界販売競争でいうと昨年台数でトヨタの上を行ったVW(フォルクスワーゲン)グループの売り上げは約29兆円だったから、販売数では負けたけど、売り上げではトヨタが勝ったという。もっとも欧州は年末締めデータだけど。

──トヨタの利益率は8.2%です。この数字は?

小沢 過去最高じゃないけどハンパない儲けだよ! ホンダの四輪事業の利益率がたった1.9%だったからよけいにトヨタが光ってる。1台当たりの利益もVWが11万円、GM(ゼネラルモーターズ)が5万円のところトヨタは20万円で超ビンビン!

──でも、日本でそんなバカ売れしていた印象がないス。

小沢 売れていたのは世界だよ、世界。日本市場はせいぜい全体の3割弱。トヨタがバカ売れしているのは北米と中国。北米は利益率こそ低いけど、トランプ政権誕生以来、トヨタのデカいトラックとSUVが売れに売れて収益はマジで改善している。

中国では関税が下がったのもデカい。儲けが出るレクサスは昨年、中国での営業利益は16%増し。トヨタはドーンと148万台を売っている。

──そんな絶好調のトヨタは、次世代技術のひとつであるCASE(ケース/コネクテッド、自動運転、シェアサービス、電動化)への開発投資を5000億円規模にするそうです。

小沢 トヨタの次世代技術研究開発費はすべて合わせても年間約1兆円だから、危機感出まくりってことだよ。

──なぜCASEに5割も割くんスか?

小沢 その疑問を解く鍵は東京五輪にある。豊田章男社長が「100年に一度の大変革期」と認める今、トヨタはありとあらゆる自動車ハイテク技術に金も開発力も注いでいる。

事実、昨年の年始には「モビリティカンパニーになる!」と宣言し、自動運転で稼ぐ次世代EV(電気自動車)プラットフォーム「eパレット」を発表している。

──そしてクラウン、カローラをコネクティッドカーに。

小沢 さらにソフトバンク、東南アジア方面では配車大手のグラブと提携。昨年3月には米シリコンバレーのトヨタAI研究所「TRI(トヨタ・リサーチ・インステイテュート)」の東京分室とも言うべき「TRI−AD(アドバンスト・デペロップメント)」を日本橋に設立した。この投資の結果は東京五輪で見られるはず。

──具体的には?

小沢 まず羽田地区の特定エリアでeパレットを投入予定。小沢の予想だと開発途中のウンとスピードが出なくて安全なヤツがぶっ込まれる。さらに新開発ピュアEVやトヨタ自慢のFCV(燃料電池車)「MIRAI」やその進化型、あるいはFCVバス、もしかしたらトヨタ開発者が立ち上げたベンチャー企業「カーティベーター」が空飛ぶクルマを出すかも。

──ほかには?

小沢 トヨタとパナソニックが共同開発した生活支援介助ロボットやパワードスーツはジミにスゴい。

──つまり東京五輪はトヨタの近未来見本市になると。

小沢 うん。五輪後はトヨタはハード技術をCASEに代表される未来方向へアップデートさせ、同時にソフトビジネスやサービス業界入りも考えている。トヨタの理想はかつてのAppleかもね。

──Appleは今年1月2日に17年ぶりに業績予想を下方修正し、世界の為替市場を揺らしましたけど。

小沢 でも昨年のAppleの利益知ってる? 売り上げは約29兆円でトヨタやVWと同等だけど、利益は7兆7700億円でトヨタの約3倍。営業利益率は26%を叩き出している。

要はAppleってソフトから作ってるのがスゴいわけ。ビジネスって仕組みづくりからやってるところが一番儲かるようになっているからさ。

──トヨタはそうした次世代の仕組みづくりで立ち遅れていると?

小沢 というか、今のトヨタはそこにスゴい危機感があるわけ。今後、モビリティサービスの時代になるとハード、つまり乗用車が売れなくなる可能性がある。まぁ、30年後ぐらいとかの話だけど。

──ではトヨタの今後は?

小沢 水面下でモビリティサービスの仕組みづくりは着々と進んでいる。自動運転、EV、シェアリング、コネクティッド用のハードと同時に、ソフトもどんどん作っている。要するにモビリティサービスプロバイダー(移動サービス提供者)になっていくはず。

──脱クルマ化が進むと?

小沢 そのとおり。

──ズバリ、トヨタはモビリティサービスカンパニーになって世界で勝てますか。

小沢 サービス全体の仕組みから売る場合、アメリカという国ではAppleにGoogle、GM、フォードが立ちはだかる。自動車の最大市場である中国には中国政府が......一筋縄ではいかないよ。

──今まではクルマというハードだけで稼げたけど、そのビジネスモデルは使えない?

小沢 そこで最後の希望が、豊田章男社長がブチ上げた「コネクティッドシティ」。

──トヨタとパナソニックが記者会見したやつスね。

小沢 そう。トヨタがパナソニックと住宅事業を統合し、家だけでなく、街をコネクティッドシティにすると。で、その仕組みを日本で育て、いずれ海外に売ろうって話だけど、米国で日本のハイテク住宅が売れんのかなと。だって日本は狭い家しか造れないじゃん。

──そこは先行き不安スね。

小沢 だから豊田章男社長は「終身雇用を守るのは難しい」と発言したと俺は思う。要は「ココからは先がまったく見えない。トヨタに安定を求めるな!」と。これからバクチ同然のモビリティサービス勝負に打って出るから。

──厳しい戦いになる?

小沢 厳しいよ。だってモビリティサービスで失敗したらトヨタは世界の下請け工場になる可能性さえある。危機感はバリバリ200%だよ!

構成/小沢コージ 写真/時事通信社

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