豊洲に林立するタワマンとオフィスビルが危うく見える理由

6月12日(水)7時0分 NEWSポストセブン

この20年で街の開発が一気に進んだ豊洲

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 2018年10月に開場した「豊洲市場」をはじめ、オフィスビルやタワーマンションなども建ち並び、活気に満ちている東京都江東区・豊洲エリア。だが、住宅ジャーナリストの榊淳司氏は、「街全体の発展には危うい要素も多い」と指摘する。同氏が実際に現地を歩いて予感した“豊洲の未来”とは?


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 築地市場の移転先として知られている埋立地の「豊洲」。最寄りに地下鉄有楽町線の豊洲駅があり、駅前のららぽーとは近隣エリアにとっては中核の商業施設となっている。


 街を見渡すと、超高層の建造物ばかりが目に付く。オフィスビルにタワーマンション。どれもここ20年ほどの間に建てられた。


 じつは、この豊洲というのは大まかにいって2つのエリアに分けられる。地名でいえば1丁目から5丁目と、6丁目。地図で見ると、この2つのエリアの大きさはあまり変わらない。そして、6丁目と呼ばれる大きな「島」は、つい最近まで開発がほとんど行われていなかった。だからこそ、新市場向けの広大な土地が提供できたのだ。


 一方、1丁目から5丁目の中心には早くから有楽町線が延伸したので、それなりに開発が進んだ。そのあたりは三井系のIHI(旧石川島播磨重工業)が造船所として使っていた地域。だから三井不動産が中心となってららぽーとやタワーマンションを開発した。


 だが、そんな豊洲の目覚ましい発展とは裏腹に、実際に街並みを見ていると、かなり危うい未来を予感させる。


 まず、タワーマンションを作り過ぎている。私は近々『限界タワーマンション』(集英社新書)という著書を上梓するが、20階以上の超高層マンション(タワマン)という住形態には、大きな欠陥がある。それは、約15年ごとに永遠と外壁の修繕工事を繰り返しやり続けなければいけないという宿命を背負っていることだ。


 足場を組めないタワマンの場合、外壁の修繕工事には多大な費用を要する。ざっくりと試算しても通常のマンションの2倍以上。はたして、すべてのタワマンはその費用を負担し続けられるだろうか。


 また、街が活気を保つには住まい手の新陳代謝が必要だ。つまり、世代交代。ここで育った人が、自分の子育てのために帰ってくる──というストーリーが生まれる街が理想だ。例えば多摩ニュータウンにはそれがないが、果たして豊洲ではそれが生まれるだろうか?


 そもそも豊洲という街はかなり交通利便性が悪い。公共交通としては前述したように地下鉄の有楽町線が使えるが、東京メトロの中でもかなり新しいほうなので、他の路線との接続が悪い。


 そのため、本来この街はオフィス街にはなり得ないのだが、現状はオフィスビルが立ち並び、稼働している。街を歩くとビジネスマンらしき人々も多く見かける。また、新しいオフィスビルも建築中だ。


 現在、東京の都心は様々に再開発が行われている。渋谷、虎ノ門、日本橋、大手町……。そういった場所は、ここ10年ほどで街の様相が一変するほどの変貌を遂げている。空は狭くなったが、オフィスの床面積は飛躍的に増大した。


 その一方で、この国はとてつもない人手不足に見舞われている。ここ2年ほど、渋谷エリアではオフィス需要が供給を上回って、賃貸料金がかなり上昇した。その理由は「人気エリアの綺麗なオフィスなら社員募集で人が集まりやすいから」だという。


 都市が膨張する時期には、業務都市も分散する。一時期は多摩ニュータウンや筑波、幕張新都心などに本社機能を移転する動きがひとつの潮流を作っていたが、今はそうではない。むしろ都心回帰だ。


 これだけネット社会が発展したにもかかわらず、人は所詮生身の生き物なのだ。いかに優れた通信機能を使ったとしても、フェイス・ツー・フェイスには勝てない。だから、不便な豊洲のオフィスビル需要もいずれは萎むだろう。


 街の明るい材料としては、2018年10月に築地の市場が豊洲6丁目の新市場に移転したこと。散々すったもんだしたことは記憶に新しいが、新市場が築地並みの集客力を持つ人気の観光スポットになれば、豊洲や対岸の有明エリアの未来も明るい。


しかし、どうだろう。新市場は予想以上につまらない場所に仕上がってしまった。活気ある鮮魚取引の現場はガラス越しにしか見ることができないし、期待の飲食店街は、まるで地方空港のターミナルのような装い。鮮魚を取引している間近で営業しているという臨場感はまるでない。これでは早晩、人を集めることはできなくなるだろう。ただでさえ交通利便性が悪いというハンディキャップを背負っているのだ。


 新市場を取材した後、私は新橋行きのバスに乗った。ゆりかもめの「新市場」駅を利用することもできたが、あれは乗っていてイライラする。グルグルと臨海部を回るので、なかなか新橋に着かない。着いてもJRや地下鉄までたっぷりと歩かせられる。だから、一度乗るとうんざりする人が多い。


 結局、築地市場場外の目の前にある「築地6丁目」というバス停で降りてみると、驚いたことに、こちらのほうがよほど賑わっている。しかも、欧米系のインバウンドや若い日本人が多い。豊洲の新市場を見学していたのは、日本人の中高年と東アジア系のインバウンドが中心だったので、賑わい方が明らかに違う。築地場外のほうが圧倒的に人気は高そうに思えた。


 日本の都市計画はおおむね失敗しているエリアが多い。ニュータウンや新都心と呼ばれるような街で、30年以上も賑わい続けているところはほとんどない。その理由は、計画自体が中途半端なことと、住民や商業施設の客層などに新陳代謝が起こらないからである。


 豊洲の新市場を見ていても感じるが、築地は完全に人が主役の街だったのに対し、豊洲の街の主役はクルマなのか人なのか分からない。どちらにも不便だ。


 クルマを主役にするのなら、地方のショッピングモールのようにお店のそばにドカンと駐車場を設けるべきだろう。人を主役にするのなら、もっと歩く楽しみを演出すべきだ。空港の通路みたいなところを歩かされるのは、何とも興覚めする。


 さて、豊洲の未来はどうなるのだろう──。今後も新しいビルやタワーマンションが続々と完成するので、あと数年は発展していくだろう。しかし、今のような通りいっぺんの開発を続けていくと、10年後や20年後はかなり危うい気がする。


 東京という街全体があと10年ほどで収縮を始める。その時、こういう中途半端に拡大を続けたエリアの魅力は色褪せてしまうのではなかろうか。

NEWSポストセブン

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