なぜ、「優秀な上司」の下で、部下が育たないのか

6月14日(水)6時0分 ダイヤモンドオンライン


拙著、『知性を磨く』(光文社新書)では、21世紀には、「思想」「ビジョン」「志」「戦略」「戦術」「技術」「人間力」という7つのレベルの知性を垂直統合した人材が、「21世紀の変革リーダー」として活躍することを述べた。この第23回の講義では、「人間力」に焦点を当て、拙著、『なぜ、マネジメントが壁に突き当たるのか』(PHP文庫)において述べたテーマを取り上げよう。


部下が育たない「優れた上司」


 今回のテーマは、「なぜ、『優秀な上司』の下で、部下が育たないのか」。このテーマについて語ろう。


 読者は、自らの会社や周りの会社を見渡して、不思議な「逆説」を目にすることはないだろうか。


「優秀な上司の下で、部下が育たない」という逆説である。


 例えば、衆目の認める優秀なビジネスマンがいる。若手社員の頃から力を発揮し、早くから社内でも目立つ存在であった。当然のことながら、同期の中でも真っ先にマネジャーに昇格。マネジャーとしても、仕事の切れ味は良く、経営幹部からの評価は相変わらず高い。そして、部下は彼の指示のもと、組織だって良く動き、良い業績を出している。しかし、なぜか、彼の次を襲うような優秀な部下が育っていないのである。


 こうした「優秀なマネジャーの下で、なぜか、部下が育たない」という不思議な現象は、実は企業においてしばしば生じる。


 では、どうしてこのようなことが生じるのか。


 それには、次に挙げる三つの理由のいずれかが考えられる。


 第一の理由は、最も良くある理由であるが、このマネジャーが「名監督ならず」だからである。


 野球の世界で「名選手、名監督ならず」という言葉は、しばしば使われる言葉であるが、たしかにある分野で一流のプロフェッショナルであった人物が、次世代の一流のプロフェッショナルを育てることについて、必ずしも優れているとは限らない。


 なぜならば、一流のプロフェッショナルのスキルやノウハウというものは、分野を問わず極めて深い「暗黙知」(言葉にならない智恵)であり、その暗黙知を「自分自身が体得する能力」と「他人に体得させる能力」とは、実は似て非なる能力だからである。


 例えば、スキーのコーチの世界では、若いコーチは個別の技術をマニュアル的に教える傾向があるが、熟練のコーチは「君は無意識に斜面を怖がっている。斜面を怖がらず、転んでも良いという覚悟で、思い切って斜面に飛び込め」といった、的確な心の置き所のアドバイスを語る。こうした熟練コーチの能力は、まさに暗黙知を他人に体得させるための優れた能力を象徴している。


 この熟練コーチのスキーを教える能力は、若手コーチの能力に比べれば、格段に優れた能力であるが、いずれのコーチもスキー技術そのものは見事な領域に達しており、暗黙知を自分自身が体得することにおいては、どちらも優れた能力を持っている。二人の違いは、暗黙知を他人に体得させる能力の違いである。


 これと同様に、ビジネスの世界においても、一流の「ビジネスマン」が必ずしも一流の「教育者」ではないということは、往々にして生じることなのである。




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