世界の大企業が注目 自閉症者を雇うことの利点

6月14日(木)12時56分 Forbes JAPAN

自閉症スペクトラム障害(ASD)──舌が絡んでしまいそうな言葉だが、米マイクロソフトや独SAPなどの大企業では、この障害のある人材を特定のスキルを必要とする職種に誘致する取り組みが増えている。

ASDとは、周りの世界の見え方、情報処理の仕方、人との関わり方に影響を与える一連の障害の総称だ。アスペルガー症候群などの高機能自閉症もこれに含まれる。

自閉症のある成人の不完全就業率は高い。米ドレクセル大学の自閉症研究所がまとめた「全米自閉症指標報告書(National Autism Indicators Report)」によれば、自閉症の成人のうち、コミュニティー内で有給の仕事に就いている割合はわずか14%だった。報告書の調査対象となったのは、州の発達障害者向けサービスを受けたことがある人々のみ。ASDの成人の約4分の1が、このサービスの目標としてコミュニティー内での就職を設定していた。

英国の状況も米国と似ており、フルタイムの仕事についている自閉症の成人はたった15%だ。これに対し、英政府の統計では労働年齢にある健常者の就業率は57%とされている。

ASDの人々の雇用に早期から着手していた大企業の一つが、マイクロソフトだ。同社は米国で3年前、「障害者の包摂的雇用」と呼ぶプログラムを開始した。「目標は、自閉症者の不完全就業を減らすこと。自閉症者は十分に活用されておらず、わが社には自閉症スペクトラムの人に合った職務がある」と、マイクロソフトの包摂的雇用責任者、ニール・バーネットは語る。

マイクロソフトのプログラムでは、ソフトウエアエンジニアやデータサイエンティストといった技術職で人材を募集している。「求めているのは、細やかな気配りができ、問題解決能力のある人材。これは技術職で大切な点だ。現在のプログラムはワシントン州レドモンドの本社を拠点としているが、米国以外にも広げていく予定だ」とバーネット。さらに、プログラムの余波の一つとして、既存社員の間でもASDを自己申告する動きも生まれたという。

バーネットによれば、マイクロソフトはASDのある求職者に合わせて求人プロセスを調整した。「従来の面接プロセスは1日で終わるが、このプログラムでは5日間だ。相手のことを良く知り、その人が自分の才能を見せられるように努力している。候補者のことを知り、チームを構築し、3日目には模擬面接をして候補者にフィードバックをする。レドモンドの本社で面接した求職者のうち、約50%が採用される」(バーネット)

マイクロソフトに採用されると、外部業者のジョブコーチを利用できる。勤務に慣れるための支援をしたり、通勤に関する質問に答えたりする人物だ。また、新規採用者には、マイクロソフトで働く障害者を支援するグループから選任されるコミュニティーメンターがつく。このメンターは、自閉症者のパートナーや友人である従業員で、新規採用者に食券の利用法や本社周辺のバスの乗り方などを教える。コミュニティーメンターとジョブコーチがつくのは3か月間だが、必要であれば延長もできる。ジョブコーチを1年間つけている従業員もいるという。

バーネットは、会社側もこのプログラムから多くの利益を受けていると強調する。「マイクロソフトの目標は、組織内の全員のエンパワーメント。自閉症者を含む多様な働き手が必要であり、誰にとっても使いやすいより良い商品を作っていく必要がある。また、管理職の面々も、フィードバックの頻度が増え、コミュニケーション方法について質問するなど、人材の管理方法が改善されている。ますます多くの管理職がこうしたフィードバックを得ており、この利点に今後も注目していくつもりだ」

マイクロソフトは今のところ、自閉症者を技術職で主に採用しているが、経理やマーケティングなどの非技術職でも採用できるか検討中だという。これまでに56人をフルタイム職で採用した。

自閉症者を採用する際のコツは次の通り。

・募集要項が仕事内容と本当に関連しているかを確認する。もし対人コミュニケーションがほとんど必要のない仕事であれば、「優れた対人能力」は本当に必要なのか? 募集要項に不明瞭な点がないようにすること。

・応募フォームの中には、何を書けばいいのかが分かりにくいものがある。この点について明確なガイダンスを示した上で、面接時に必要な支援や調整事項があれば明記できる欄を設けること。

・面接では、分かりやすく明瞭な質問をする。面接はできる限り、実用的な内容にすること。

(出典:英国自閉症協会)

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