5年先まで使える広告代理店的プレゼンテーション術 (8)

6月14日(金)17時55分 財経新聞

 今日は、私が駆け出しのコピーライターだった頃の話から始めます。

【前回は】5年先まで使える広告代理店的プレゼンテーション術 (7)

 その頃、90年代後半の広告は、ビジュアルもメッセージも挑発的な作品が多く、カウンターカルチャーの気配さえ感じるモノもありました。その中で、忘れられないセンセーショナルな新聞広告があります。

 私の広告人生の起点となり、表現の指標にもなった作品です。佇む老紳士のビジュアルに、こんなコピーが載っていました。

 「おじいちゃんにも、セックスを。」

 宝島社の企業広告です。それまで黙認されてきた老人の性問題に軽やかに斬り込んだ革新的なコピーライティング。抑制を効かせた緻密なアートディレクション。さまざまな社会課題が山積する、この長寿国をパラダイム・チェンジしていこうとする気骨さえ、強く感じたのです。

■(10)引き出しで仕事をするな!本音で書け!本編を上回るクリエイティブを!
 本題に入ります。この20年前の広告は、あらためて多くのことに気づかせてくれます。今回は、私がこの広告から推察した“制作者の気概”を勝手に列記してみます。文中のあるワードを他のワードに置き換えることで、【企画中&プレゼン前日のチェックポイント】となります。よければ、使ってみてください。

(1)固定概念や先入観を貯め込んだ引き出しで、広告をつくるな。
(2)クライアントや広告会社にとって都合のいいコピーを書くな。本音で書け。
(3)生活者がトクをする情報(気づき)を提示しろ。そして、態度変容させろ。
(4)商品、サービス、ブランドといった本編(主体物/ここでは雑誌)を上回る広告をつくれ。

 (1)から(4)の文中にある「広告」「コピー」「情報」というワードを【アイデア】または【企画書】というワードに置き換えてみてください。業種や職種を問わず、あらゆる領域のプレゼンで使えませんか。

 さて、この広告のスゴサは「セックス」という禁句をキャッチコピーに挿入したエポックさでは当然ありません。人間讃歌でもありません。新聞広告というたった一枚のクリエイティブで、ソーシャル・イノベーションに挑んだ点がスゴイのです。

 【高齢者市場の創造】と【他の事業会社への働きかけ(オープン・イノベーション)+クライアントのプレゼンスアップ】、そして【生活者への活力供給】。これらをたった1行のメッセージで、同時に促しているのです。これは、CSV(クリエイティブ・シェアド・バリュー)プランニングの前身とも解釈できます。

 そして、(4)で既述したように、広告のクオリティーが本誌のそれを上回ってしまっています(私見)。表現力も、影響力も、圧倒的。読む(見る)側にとっては、とにかく想像力や教養を試される広告でした。

 2030年にインタラクティブ機能を装備したセクサロイドが誕生するといわれています。1998年の広告の提案に、やっと時代がテクノロジーのチカラで応えようとしているのです。あと、10年。なんだか、たぎります。

財経新聞

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