不可思議な行動も仕方ない? 「10代の脳」と正しく付き合う方法

6月15日(金)8時30分 Forbes JAPAN

人は正しい知識がないと、誤った常識や変な思い込みで行動しがちです。その最たるものが10代の脳。著書「10代の脳 反抗期と思春期の子どもにどう対処するか」が話題のペンシルベニア大学医学部神経学科長、フランシス・ジェンセン教授から興味深い話を聴きました。

ジェンセン教授は、医師であり教授であると同時に、男の子2人を育てたシングルマザーで、髪や服装などで不可思議な行動をとる10代の子供たちをどう理解し、対応すればよいか、世の親と同じように困ったそうです。

そこで、ほとんど研究が進んでおらず、予算も割かれていなかった10代の脳に注目したのだそう。気分屋で衝動的、親の思い通りにならない”異星人”脳は、どうなっているのか、ジェンセン教授の話から、いくつかエッセンスを紹介しましょう。

興奮が強く、抑制が弱い

日本では「成人年齢」の18歳への引き下げが決まりました。10代は成人にあと一歩の時期で、大学入学時には脳はすでにでき上がっている、と考えている方も多いかもしれません。

ところが、脳は20代半ばから後半になるまでは完成しません。簡単に言うと、脳の膨大な数の部品は、少しずつ「つながり」をつくり、10代半ばではまだまだ、20歳でもまだその「つながり」は不足しているのです。

とくに、ヒトの脳の4割以上を占め、状況を判断し、行動を検討し、意思決定する前頭葉は、「つながり」ができるのが最も遅い。配線なくして脳は働きません。ちなみに、相対性理論のアインシュタイン博士の脳は、標準よりも軽かったのですが、ニューロン結合=つながりはかなり多かったそうです。

また、「抑制」の働きは、脳が完成するまでに少しずつ上昇していきます。一方、「興奮」は生まれてからすぐに上昇して子供の頃にピークを迎えます。

興奮性のシグナルは脳の経路をつなぎ、その「つながり」を強くする、つまり興奮は脳の成長の原動力なのです。記憶で鍵となる海馬は、とくに10代では興奮状態にあります。10代では、海馬の隣りの偏桃体(性や感情行動に関わり、怒りをかきたてたり抑えたりする)は未成熟で、過剰に活発です。

つまり、10代の脳は、「つながり」不足で、抑制が弱く、興奮が強いのです。この時期は、感情の起伏が激しく、大人から見ると、不可思議な行動をしたり、いけないことに気をひかれたり……理解するのが難しくて当たり前なのです。

10代は、学習や能力を高めるには人生で最高の黄金期であり、また一方で、脳が一生続くようなダメージを受けやすい時期でもあります。パワフルかつ脆弱な10代の脳は、よい種も悪い種も深く根付きます。その後の人生にわたり、良くも悪くも大きく左右する重要な時期なのです。

IQは子供の頃に定まってしまい、その後も変わらないと思っていませんか? 「アタマの出来は生まれか育ちか」と問う人もいますが、成長の黄金期である10代に、IQは上りもしますし下がりもします。そして、情報をやり取りするほど、脳の経路は強くなります。

例えば、読書をたくさんすると、言語関係のIQは高くなる傾向があります。筆者は10代の頃、推理小説にハマったのですが、そのとき親から叱られ、「本なんか読まない!」と反発して読書をやめた経験があります。ジェンセン教授の話を聞いて、読み続けていればよかったと後悔しました。

大人でもやりがちなマルチタスクはどうでしょう。いくつも同時に進めることで充実していると感じ、気持ちの満足度は上がります。でも10代の脳に、「ながら勉強」はご法度です。大人に比べ、10代はマルチタスクがうまく実行できません。一度にひとつのことにしか集中できないのです。

それにマルチタスクでは、ストレスホルモンも出やすくなります。鬱や不安の症状との関連も言われています。だから、スマホを近くに置きながら勉強なんて、まったくいいことはありません。

睡眠不足じゃ脳が育たない

一般に睡眠は大切と言われますが、10代の脳には、それ以上にとても重要です。1日に9時間15分の睡眠が必要とされています。寝る脳は育つ。だから、週末に寝ていても、許してやってください。

日本でもアメリカでも、10代後半になるとともに夜更かしになり、睡眠不足かつ朝がスキっとしない生活パターンになる人が多いようです。10代はメラトニン(睡眠ホルモン)が出るのが大人より2時間遅く、体内に残りやすいので、朝は眠いのです。

ちなみに、スマホの画面を2時間見ると、メラトニンが23%減るという研究結果もあります。エナジードリンクが流行っていますが、カフェインの取り過ぎも問題です。とにかく、これらの誘惑に気をつけて、規則正しい生活のリズムをつくることです。

ならば、十分に寝て、「ながら」を許さず、読書や勉強するよう厳しく指導すればいいかと思ったりしませんか? でも、そう簡単にはいきません。

10代は、小さな子供や大人よりも怖いものに強く反応しやすく、他人の恐怖や怒りを見るだけで感情中枢が活発になります。総じてストレス反応がとても敏感なのです。そして、そのストレスは記憶力や思考力を低下させるため、「勉強しろ」と親や教師が迫って、ストレスで固まっては逆効果になりかねません。

ネット中毒は薬物中毒と共通点が多い

では飲酒はどうでしょう。そもそも法律では禁じられていますが、10代は若くて回復力があるから飲酒を重ねても悪影響はあまりないと考えている人もいるかと思います。昭和の時代には、大学に入るなり歓迎コンパで酒をしこたま飲まされるなど、無茶なことが横行していました。

たしかに10代は、酒を飲んでも運動機能が失われにくいので、外見上は平気に見えやすい。しかし、10代では、飲酒が度重なると海馬が小さくなり、記憶障害や認知力、集中力などさまざまな問題も生じます。

アルコールだけではありません。10代の脳は、快楽に敏感で、興奮しやすく、しかも傷つきやすい。ドーパミンの放出と反応が激しいため、アルコール、タバコ、その他中毒的なものに、大人よりも引き込まれやすいのです。しかも、その影響は強く、大人になって取り返しがつかないダメージとなります。

タバコはたった1本でニコチン中毒が始まります。最近話題の電子タバコは、煙が出ないからいいと思ったら大間違い。普通のタバコよりニコチンは数倍多いのです。日本で「成人年齢」が18歳となっても、酒やタバコは20歳からのままとされたのは、当然のことです。

「デジタル中毒」もこれらと似ています。インターネット、スマホのやりすぎは、アルコールやドラッグと同様に、ドーパミンの急増をもたらします。脳を調べてみると共通点が多いのです。

ゲームは、適度なら刺激になっていいのですが、とりつかれたようにやると、ニコチン中毒と似たようなことになります。ゲーム中毒者は、前頭葉のつながりが弱く、また、毎日1時間のゲームでADHD(注意欠陥多動性障害)や不注意の症状が出やすくなります。

いま日本では、アメリカンフットボールの悪質タックル問題が話題となっていますが、脆弱な10代の脳には、スポーツでの脳しんとうも消えないダメージを残します。17歳で亡くなった或るアメフト選手の脳は、生前のCT検査ではわからなかったのですが、死後の解剖で、ぞっとするような進行性の脳疾患がある状態だったといいます。

成長を続ける10代は、記憶がしやすく、長く持続する学習の黄金期であり、同時にIQが上がりも下がりもする時期。そこで大事なのは、親や大人たちが、こうした脳に関して学び、知識を持って10代に接することです。「つながり」不足で、興奮しやすい10代の脳は不安定で、時におかしなことをしでかします。そこで怒りを露わにするのではなく、根気よく寄り添うことが大切なのです。

連載 : ドクター本荘の「垣根を超える力」
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