オープンイノベーション時代、日本の大企業が本気に

6月15日(金)6時0分 JBpress

Plug and Play Japan 代表のフィリップ・誠慈・ヴィンセント氏

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 5月29日、世界有数のスタートアップ支援組織であるPlug and Play(本社:米国・シリコンバレー)の日本法人、Plug and Play Japanによるメディア向けセミナーが、同社の活動拠点であるPlug and Play Shibuya(東京都渋谷区)で行われた。そこで語られた、Plug and Play Japanのオープンイノベーションを促す取り組みとその背景についてお伝えする。


DropboxやPayPalにも投資

 Plug and Playの活動についてPlug and Play Japan 代表のフィリップ・誠慈・ヴィンセント氏は次のように説明する。「我々はスタートアップを支援するアクセラレーター、ベンチャーキャピタル(VC)、大企業に対するイノベーション支援機関でもある。『イノベーションプラットフォーム』として、これらすべての機能を提供する」。

 アクセラレーターとしては「Fintech」「IoT」「Health & Wellness」「Energy & Sustainability」「Mobility」など、14のテーマ別に50のアクセラレーションプログラムを世界11カ国26拠点で運営し、年間700以上のイベントを実施しているという。シリコンバレーの本社には常時、支援するスタートアップ400社以上が入居する。

 VCとしては、これまでDropboxやPayPalなどのユニコーン企業(評価額10億ドル以上)5社を含む800社以上に投資、資金調達総額は60億ドルという実績を持つ。2017年に投資した企業はシード(起業準備段階のスタートアップ)を中心に262社と、現在も活発に活動中だ。

 そして、同社が最大の特徴として挙げるのが、大企業に対するイノベーション支援機関としての活動だ。シリコンバレーでは250社のパートナー大企業が前述のテーマ別アクセラレーションプログラムに参画している。Plug and Playは、複数のスタートアップと大企業をマッチングし、オープンイノベーションの取り組みを促す役割を担う。


大企業が直面するイノベーションギャップ

 なぜ多くの大企業がPlug and Playのプログラムに参加するのだろうか。Plug and Play Japan CSO(Chief Strategy Officer)の内木遼氏は、その要因の1つとして、競争に打ち勝つための達成レベルと大企業で達成できるレベルとの間にある「イノベーションンギャップ」の存在を指摘する。「顧客ニーズや製品ライフサイクルの多様化によって、このようなギャップが生まれている」(同氏)。

 内木氏は、ノキアが携帯事業をマイクロソフトへ売却した際の同社COOの言葉が象徴的だという。その言葉とは、「We didn't do anything wrong, but somehow we lost(我々は何も間違ったことをしていない。しかしどういうわけか、負けてしまった)」というもの。この言葉を聞いて、明日は我が身と危機感を感じた大企業も少なくないだろう。

 一方で、スタートアップの成長の勢いは増している。「テクノロジーの進展は、すさまじい。ユニコーン企業になるまで20年以上かかると言われていたが、5年、2年と短くなってきている」(同氏)

 こうしたビジネス環境の中で、多くの大企業がイノベーションギャップの解消を目指すためにスタートアップの成長力を取り込もうとPlug and Playのプログラムへ参画しているというわけだ。


日本の大企業がシリコンバレーで成功しない理由

 シリコンバレーにおけるパートナー企業250社のうち、日本企業は40社とアメリカ企業に次ぐ多さとなっている。日本企業の危機感が伺えるが、一方で日本企業による成功事例がなかなか生まれない現状があるという。

 ヴィンセント代表は、その背景には日本本社とシリコンバレーとの物理的な距離以外にも、主に3つの要因があると分析する。

 1つめが「スタートアップに対する社内理解の欠如」。スタートアップとの接点を持ったことのある人材が少なく、競合する意義について社内理解が進んでいないことなどがその背景にある。

 2つめが「リソースの制約」。駐在員を配置する予算がないため情報収集が不十分だったり、英語圏の商慣習に慣れている人材が不足しているといった問題だ。

 3つめは、「スタートアップとのミスマッチ」。シリコンバレーのスタートアップは、日本企業をそれほど重んじていない(優先度を低くみている)企業が多いのだという。また、シード期のスタートアップが多いために、日本の大企業が欲するような協業案が具体化できない、という面もあるそうだ。

 2017年7月にPlug and Play JAPANを設立した狙いの1つが、こうした問題を解決することだった。ピッチ(事業プレゼン)イベントの実施や面談機会の提供など大企業と国内外のスタートアップとの接点を日本でつくり、日本の大企業のイノベーション風土醸成を支援する考えだ。


SOMPOと日立の取り組み

 現在、日本でパートナーとして契約する大企業は13社(セミナー開催時点)。本セミナーにはその中からSOMPOホールディングスと日立製作所の2社が参加。オープンイノベーション推進の担当者が登壇し、現状に対する危機感と連携への意欲を次のように語った。

「保守的な業界だが、デジタル・ディスラプション(テクノロジーによる破壊的イノベーション)に対する強い危機感がある。そのため、我々の業界を将来的に壊していくようなスタートアップも受けいれられる部署をつくった」(SOMPOホールディングス、デジタル戦略部部長、中島 正朝氏)

「(日立は)組織体が大きくスピード感に欠ける部分がある。それをスタートアップと連携することで補い、オープンイノベーションに取り組みたい」(日立製作所、金融システム営業統括本部事業企画本部シニアエバンジェリスト、長 稔也氏)

 一方、日本におけるスタートアップの状況はどうだろうか。ヴィンセント代表は、「レベルは上がってきている。グローバルで挑戦するスタートアップも出てきており、投資額も増えている」と評価。「現在、日本はスタートアップが育ちにくいイメージがある。当社が日本のスタートアップ・エコシステムをつくりたい」と意気込む。

 Plug and Play JAPANの存在によって、日本におけるオープンイノベーションの取り組みは加速するのか、今後に大いに注目したい。

筆者:小林 麻理

JBpress

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