なぜ立憲民主党には「マトモな候補者」がいないのか…野党が質の低い「炎上議員」を量産してしまう理由

2024年6月17日(月)7時15分 プレジデント社

街頭演説会に参加する立憲民主党の泉健太代表と岡田克也幹事長(2023年4月22日)(写真=Noukei314/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons)

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地方選挙で与党系候補者の敗北が続いている。早稲田大学公共政策研究所の渡瀬裕哉さんは「岸田政権は風前の灯であるが、2009年の政権交代時とは状況が大きく異なる。人材難の野党は、無理に候補者を擁立しようとして、トラブル傾向がある人物を公認する事案が頻発している」という——。
街頭演説会に参加する立憲民主党の泉健太代表と岡田克也幹事長(2023年4月22日)(写真=Noukei314/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

■岸田政権は「風前の灯」だが…


岸田内閣支持率の超低空飛行を背景とし、4月の衆議院補欠選挙・5月の静岡県知事選挙のような注目選挙だけなく、地方の首長選挙で与党系候補者が惨敗する事例が出始めている。日本の選挙の地合いに大きな変化が起きつつあるようだ。9月に自民党総裁選挙が視野に入る中、岸田首相は事実上解散権を封じられており八方塞がり状態に陥っている。


したがって、2009年以来の与野党の政権交代が非現実とは言えない状況になりつつある。


しかし、2009年と比べて野党の政治家の顔が国民には見えてこない。前回の政権交代時は「影の内閣」やマニフェストが公表されており、政権交代後のビジョンについては不完全ながらも国民には示されていた。しかし、現在の主要野党は「影の内閣」やマニフェストなどを提示していないことはもちろん、選挙区候補者を十分に擁立すらできていない有様となっている。つまり、彼らには政権を担当する構想も能力すらもないのだ。


■野党が第一に取り組むべきは「マトモな議員を揃えること」


安倍政権時代に板についてしまった万年野党体質は、日本の政党政治から活気を奪ってしまった。本来、国民は健全な政党政治を育成するため、政党交付金を各政党に税金から支出しているが、各政党はその利権に甘んじるばかりで、本気で政権交代を目指す意欲を失っている。野党政治家は政権運営の責任が問われる与党ではなく、万年野党の第一党でいることに満足している。まさに日本の野党政治家の政治姿勢は政党政治の堕落を象徴するものだと言えよう。


そのため、日本に健全な政党政治による競争が復活するために、一からやり直すことが必要だ。このまま解散総選挙に突入したところで、その結果は国民にとって良いものになるはずがない。


野党が第一に取り組むべきは「マトモな議員及び立候補予定者を揃えること」である。当然であるが、全衆議院小選挙区で、有権者に選択肢となる候補者を提示できない政党に与党になる資格はない。国民全員に選択の機会を与えられない政党に政権担当能力は無いからだ。仮に単独政党で全小選挙区に公認候補者を立てられないなら、複数政党で協力しても良い。それが国民から政党交付金を受領し、政権交代を目指す政党の最低限の義務だ。


しかし、上述の通り、小選挙区の野党の候補者枠は依然としてスカスカだ。


■SNSで大炎上する新人候補者たち


もちろん、現在の野党には、良い人材が集まらないことも事実だ。だが、政権交代を目指す政党がそのような言い訳をするなら、むしろ、それほど魅力が無い政党は解散したほうが国民のためだ。


国民民主党の東京4区公認内定予定候補者の井戸まさえ氏。元草津町議の性被害疑惑をめぐる発言で大炎上した。※2012年12月9日撮影(写真=Ogiyoshisan/CC-BY-SA-3.0/Wikimedia Commons

そこで、無理をして公認候補者を擁立しようとすると猫の手も借りたい状況となる。立候補予定者に対して十分な事前審査をすることなく、トラブル傾向がある人物を公認してしまうことも少なくない。そして、公認候補者のトラブルに巻き込まれて、党幹部が公認取り消しやトラブルの火消しを強いられるとともに、党としてのブランドイメージを傷つけてしまうこともある。


たとえば、国民民主党が東京15区で擁立していた女性の公認候補者の過去のキャリアに問題が発覚し、同候補者が泣きながら動画を投稿した挙句、結果として公認が取り消される事件があった。また、東京4区では虚偽の性的被害で告発されて、冤罪被害にあった草津町長らに事実確認を怠った記事を書いた元衆議院議員・ジャーナリストの井戸まさえ氏を公認したことで、同党がX(旧ツイッター)上で大炎上し、玉木党首が火消しに動いたこともあった。


人材難の中、少数野党が新人候補者の発掘に際してトラブルを避けることは非常に難しいと言えよう。


■なぜ「トラブルメーカー」を公認してしまうのか


また、現職議員であったとしても問題行動を起こさない人物とは限らない。日本維新の会では中堅議員の足立康史衆議院議員が度重なる問題発言の累積によって、半年間の党員資格停止の処分を受けた。同議員は元官僚のピカピカの経歴であるが、過去に事務所運営で元スタッフと訴訟沙汰になっただけでなく、党内のガバナンスの手続きを軽視し、SNS上で放言を繰り返すことで知られる。


このようなパーソナリティに難がある人物を党内で一人処分するだけでも、選挙が見えてきた微妙な時期ともなると、敵対勢力やメディアからのネガティブキャンペーンを受けるきっかけとなり、有権者が政党の統治能力に疑問を抱くようになってしまう。


この事例は表面上のキャリアを重視し、組織人として難がある人材を選んで要職に就けてきてしまった失敗事例である。


野党第一党の立憲民主党も同様だ。直近の事例だと、梅谷守衆議院議員が地元の選挙区で日本酒を配ったことで公職選挙法違反として告発されている。この事態を受けて、立憲民主党は同議員に対して「軽率な行為が党の信頼を傷つけた」として党員資格1カ月間の停止の処置を取った。


写真提供=共同通信社
公職選挙法違反の疑いで告発されている立憲民主党の梅谷守衆議院議員(2024年5月23日) - 写真提供=共同通信社

実際、古い政治体質が残っている地域においては、このようなことはあり得るかもしれない。だが、政権交代を見据えるとなると、「昔からやっているから」というようなナアナアのメンタリティで違法の疑いがある行為をする人物だらけでは、当該政党はスキャンダル塗れとなり直ぐに信頼を失墜することになる。


政党が不適切な人物に公認を与えてしまうと、政党全体のブランドイメージは大きく毀損する。それにもかかわらず、何故、政党は不祥事やトラブルを起こすタイプの人材を公認候補者として採用してしまうのだろうか。


■「極めて原始的な方法」で行われている人材選抜


その原因の一つは各野党の不祥事は通常の企業が採用活動で行うノウハウが欠落していることにある。


もちろん、政治の世界にはマトモな性格の人間が集まりにくい、という業界事情はあるが、現状の公認候補者選定の在り方は論外なものだ。経歴書の提出などの形式的なことはもちろん行われるが、その後は都道府県連幹部や政党本部の面談のみで審査を終わらせる政党が少なくない。キラキラの経歴書やご立派な面接の受け答えの裏に潜む、その人物のパーソナリティの問題点などは「勘や噂」に頼って判断しているのが現状だ。政党の公認候補者は未来の日本を担う人材であるはずだが、政党による人材選抜は極めて原始的な方法で行われていると言えよう。


写真=iStock.com/fizkes
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/fizkes

候補者選びの一つの方法としては、アメリカのように党内予備選挙を行う方法があり得る。この仕組みは模擬的な選挙戦を通じて、候補者をある程度ふるいにかけることができる。しかし、日本の野党は各地域に十分な党員を抱えておらず、このような党員参加型の公認候補者選びを実行することは困難だ(これも政党交付金を受け取りながら、政党としての活動をサボってきた結果だ)。


■賢い企業が最重視するのは「不適正な人間を採らないこと」


そこで、日本の政党は最低限の仕組みとして、日本の大手企業が採用している人材採用のシステムの導入を進めることが望ましいだろう。


企業の採用活動は同企業の生死を分ける重要な業務であり、採用活動に関するテクノロジーは急速に進化している。特に企業側は問題がある人物を特定して「不採用」とすることには極めて熱心だ。なぜなら、一度雇用した人間をクビにするのは困難であり、なおかつ社内でトラブルを起こされた場合の損失も馬鹿にならないからだ。企業経営者は優秀な人物を採りたいと願うものだが、賢い企業は優秀さよりも不適正な人間を採らないことを心掛けているのだ。


たとえば、一昔前から採用プロセスではAIが活用されており、人間が介入せず、事前に用意された質問に対して回答させ、その声、表情、しぐさなどを分析して自動的にパーソナリティ診断を行う仕組みが導入されてきている。同システムを一次面接に利用することで、人間によるバイアスを排除した客観的なデータを得ることができる。


また、そこまでのシステムを用いなくても、賢い企業は全ての就職希望者に対してシステムを用いた不適正検査を実施している。そのために必要なコストは比較的安価であり、中小企業でも導入が可能だ。不採用を判定するためのシステムは、履歴書・経歴書に記載されたご立派な肩書等以外の組織人として重要要素を持っているか、を判定するのに活用される。


■半年以内に、野党は公認候補者を「無理やり」立てていく


政党が公認候補者の不採用を判定するシステムを導入するメリットは極めて大きい。


自らが手を挙げて政治家になろうという人物は、実はそれなりに立派な肩書の人物が少なくない。しかも、愛想も悪くない人物も多いため、その人物がスキャンダル体質や不和を起こす人物であるかを人間が見極めることは難しい。したがって、客観的に一定の判断材料を与えてくれるシステムを導入することには非常に意味がある。


また、人材不足で背に腹は代えられず、ほぼ全ての公認希望者に党として公認を出さざるを得ない場合であっても、事前にその人物のパーソナリティのリスク情報を把握できているか否かは、その後のリスク対応に天と地ほどの差が出る。その公認候補者がどのようなトラブルを起こしやすいのかを知った上で、様々な助言をすることができるからだ。


冒頭に述べた通り、岸田政権は風前の灯であるが、野党は十分に小選挙区で旗すら揚がっていない状態だ。今後、選挙が強く意識される半年以内に、野党は多くの小選挙区で公認候補者を無理やり立てる作業を進めていくことになる。しかし、その公認作業の過程で不適切な人物が多数含まれることがあれば、野党は選挙後の政権交代どころか、政党運営すらままならなくなるだろう。


現状の日本の政党政治は政策の議論を行う以前の状態であり、政党を一般常識的なレベルで運営できる体制にすることから始めなくてはならない。その第一歩が政党の公認候補者として「マトモな議員及び立候補予定者を揃えること」である。


筆者は、日本の政党が近代化し、健全な政党政治が行われるようになることを強く願っている。


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渡瀬 裕哉(わたせ・ゆうや)
早稲田大学公共政策研究所 招聘研究員
パシフィック・アライアンス総研所長。1981年東京都生まれ。早稲田大学大学院公共経営研究科修了。機関投資家・ヘッジファンド等のプロフェッショナルな投資家向けの米国政治の講師として活躍。創業メンバーとして立ち上げたIT企業が一部上場企業にM&Aされてグループ会社取締役として従事。著書に『メディアが絶対に知らない2020年の米国と日本』(PHP新書)、『なぜ、成熟した民主主義は分断を生み出すのか アメリカから世界に拡散する格差と分断の構図』(すばる舎)などがある。
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(早稲田大学公共政策研究所 招聘研究員 渡瀬 裕哉)

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