お家騒動に揺れる大戸屋 亡き創業者の精神は守れるのか

6月24日(金)7時0分 NEWSポストセブン

都内ホテルで行われた大戸屋HDの株主総会(6月23日)

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「開会の前に10分ほどお時間をいただき、代表取締役社長として株主の皆様に少しお話させていただきたいと思います」──。6月23日、現経営陣VS創業家の“お家騒動”に揺れる外食チェーン、大戸屋の株主総会はこうして始まった。


 窪田健一・大戸屋ホールディングス社長(45)が涙ながらに説明した概要はこうだ。


 昨年7月、創業2代目のカリスマ会長、三森久実氏が57歳の若さで病死した後、2013年より社長に就いていた窪田氏は、経営体制の再構築や意思決定のスピードアップ、組織のフラット化を図った。その過程で“火種”となったのが、三森久実氏の長男である智仁氏(27)の処遇だ。


 昨年の株主総会において取締役就任が承認され、常務取締役海外事業本部長に任命された智仁氏だったが、今年3月に発せられた「香港子会社社長」の辞令を固辞したうえ、取締役の辞任も申し出たという。


「智仁氏は前会長のご子息とはいえ、弱冠26歳の若者には(常務の肩書きは)重責ではないかと、当時は社内外からご心配の声も頂きました。しかし、将来の当社グループを引っ張って行って欲しいという前会長のご遺志でもあったため、私もこれを受け入れ、昨年の総会においても、『私が責任をもって育てます』と宣言いたしました。


 最初から海外事業本部長としての重責を担うよりも、将来、当社のリーダーに育ってもらうため、まずは、経営が安定している香港子会社の社長として、語学の習得や現場経験を積んで欲しいという私の思いもあり、ご本人も一旦はこれを受け入れました」(窪田氏)


 報道によれば、昨年11月に智仁氏がヒラの取締役に降格されたことが騒動のきっかけだったとする向きもあったが、窪田氏は「降格は事実ではない。組織のフラット化を目的に、専務、常務などの肩書をすべて廃止した」と否定した。


 いずれにせよ、窪田氏をはじめとする現経営陣は、事態を収束させるべく数か月にわたって智仁氏や亡き久実氏の妻(62)など創業家と話し合いの場を持ってきたというが、一度亀裂の入った溝が埋まることはなかった──。これが窪田氏の弁明である。


 久実氏の妻と智仁氏は、今年の株主総会で会社側が諮った新しい役員人事案にも反対していた。会社側が久実氏に近かった役員を含めて“創業家外し”を画策しているのではないかとの不信感が募っていたことは容易に想像がつく。


 だが、創業家2人合わせた持ち株比率は18.78%と少なく、経営権を握るまでには到底及ばない。結局、株主総会で会社側が推薦した新しい役員5名はすんなり承認された。


 気になるのはバトルの行く末である。総会では株主である三森家の発言が飛び出すことはなかったが、会場に詰めかけた1494人の株主の中からは、


〈お家騒動で大戸屋のブランドイメージが低下すれば株主価値も毀損する〉

〈新たな役員候補者は取引銀行や商社出身などフード業界の現場を知らない人ばかり。オペレーション中心の体制でうまくいくのか?〉


 といった厳しい質問が相次いだ。


 外食ジャーナリストの中村芳平氏は、将来の大戸屋経営について、こんな懸念を示す。


「創業家が過半数の株を握っていなかったことが不幸の始まりですが、資本と経営は別物。前会長が守り抜いてきた『昔ながらの定食屋』という原点を忘れ、経営の効率化やシステム化にばかり突き進めば、いずれ競合他社との差別化が難しくなり、最終的に投資ファンドの標的になる恐れも否定できません」


 中村氏は、1990年代後半に起きたモスバーガーの内紛劇を例に挙げ、改めて創業理念の重要性を説く。


「モスバーガーは現会長の櫻田厚氏の叔父である櫻田慧氏が創業した会社ですが、1997年に慧氏が60歳で急逝すると、後任人事を巡って激しい権力闘争が起きました。


 一度は慧氏の身内の意向で“外様社長”が就いたものの、経営が安定せず。そこで、厚氏が周囲の待望論を背に、大株主を強引に説き伏せる形で経営陣を引きずり下ろしました。結局、モスバーガーは厚氏によって創業精神が継承されたため、マクドナルドやその他ファストフードとの激しい価格競争にさらされることもなく、独自のブランドを築き上げていったのです」(中村氏)


 大戸屋の窪田社長は株主に向けた冒頭のメッセージで、こう述べた。


「『大戸屋の味を世界に広げたい』『世界中の人々の、心と体の健康を促進したい』という、故人の理念と志をしっかり受け継ぎ、当社をさらに大きく成長させることが、私どもの最大の責務であり、志半ばにして亡くなった尊敬する前会長への、最大の恩返しであると考えております」


 今後、窪田社長は創業家や株主らの厳しい監視を受けながら、その“一大決意”の真価を問われていくことになる。

NEWSポストセブン

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