厚労省のお墨付きイクメン会社はどんなことをしているのか

6月30日(土)6時12分 JBpress

仕事と子育てを両立させたいという男性社員の声に応えられるか・・・(写真はイメージ)

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 厚生労働省の調査によると、2017年度の男性の育児休暇取得率は5.14%となった。ここ20年で最高のポイントを記録したというが、女性の取得率83.2%に対し、男性の取得はまだまだ珍しい(※)。

 育児を積極的に行う男性を「イクメン」と呼ぶようになってしばらく経つ。そして、部下の育児と仕事の両立を支援する管理職には「イクボス」という言い方もある。

 厚労省は2020年度までに男性の育休取得率を13%にする目標を掲げ、男性の育児休業取得を促進するイクメンプロジェクトを推進している。今年(2018年)も「イクメン企業アワード2018」「イクボスアワード2018」を実施し、育児と仕事の両立を推進する企業や個人を、7月27日まで全国から募集している。

 一体どのような企業がイクメン企業と認定されるのか? そのヒントを探るべく、昨年のイクメン企業アワードでグランプリに選出された、ヒューリックとソニーの取り組みを検証してみよう。

※厚生労働省「2017年度雇用均等基本調査」(速報版)より


男性従業員の育児休業取得率75%を達成

 ヒューリックは、オフィスビルや商業施設、賃貸住宅など不動産資産に関わる事業を行う、従業員数は約200名ほどの企業だ。男性従業員の育児休業取得率75.0%、しかも管理職の取得率は80.0%(対象者5人中4人が取得)と、驚異の数字を叩き出す。

 経営のトップがダイバーシティ経営や働き方改革に向けた強いメッセージを発信し、さらに従業員の声に耳を傾け、随時制度を新設・改定しているという。

 例えば、短期の育休を取得する際に最初の1カ月を有給化する「育児特別休暇」、事業内保育所の設置、保育園利用社員にマイカー通勤と本社ビルの駐車場を無料で利用を許可、各種補助制度(保育所利用料補助、学童クラブ費用補助、延長保育費用補助、病児保育費用補助、ベビーシッター利用支援)など、ユニークかつ実用的な両立支援制度が多数整備されている。

 さらに、子どもが小学生までの間、子どもの用事で年間10日まで有給が取得できる「こども休暇」など子育てに関する休暇も充実している。

 配偶者の出産報告があったら、人事チームから休暇取得の促進や制度を紹介する声かけを行い、両立支援制度の周知を徹底するという。

 そして、パパ・ママ子育て支援ガイドの発行、子育てや復帰に向けた定期的メッセージの発信、オンライン講座、24時間電話相談サービスなど、地道な取り組みを一歩一歩確実に進めることでサポート体制を強化している。

 こういった取り組みにより、育児休暇を取る人が増えたことで実績が実績を呼ぶ形で広まったという。

 アワードでは、業務の効率化により平均残業時間を年間で30時間以内に抑えるなど、働き方改革も併せて行った点も評価されている。リスク管理委員会での労働時間のモニタリングや半日休暇の上限を年5日分から10日分(年20回)に引き上げ、有給休暇取得率が71.6%と厚労省が2020年までの目標値とする70%をすでに超える結果となった。


育児休業を4回取得した男性管理職も

 続いてソニーの例を見てみよう。伝統ある大企業であり、エンジニアが社員の約7割、男性が8割以上を占めるソニーでは、育休取得が難しそう……と想像してしまうが、2016年度には男性従業員の51.1%が育児休業を取得したという。

 ソニーの男性の育児休業、育児参画に関する制度設計のコンセプトは、「職場から遠ざけず、働きながら育児ができる環境を拡充する」というものだ。その一環として、2007年から導入したのが一律20日の有給育児休暇制度である。

 これは、男性の育児休暇取得が進まない要因として聞かれる「休職してしまうとその期間無給になるので経済的に厳しい」という声に対応したものだ。育児休職とも併用利用が可能なもので、長期の育休中の経済的支援として月額5万円の育児支援金が支給されるという。

 この有給育児休暇制度を導入してから、男性の育児休業取得率は大幅に上昇した。2015年、2016年も50%以上の人が取得し、うち6割が5日間以上休んでいるほか、中には4回取ったという管理職もいたという。

 また育児休職制度も、子の満1歳到達後の4月15日まで認められている。これは、新年度に保育園に入園した際の短時間の慣らし保育期間が考慮されているのだろう。


男女の役割分業意識の軽減に努める研修も

「男性の育児参加は不可欠」という風土が醸成されつつあるものの、「女性が育児をするのが当り前」という男女の役割分業意識が培われているケースは多い。ソニーではこういった自分の中のジェンダーバイアスへの気づきを促す「無意識のバイアス」に関する研修を導入している。6人くらいのグループワークで普段の行動について話し合うことで、自身の無意識のバイアス軽減に努め、日々のマネジメントに活かすことを目的にしているという。

 育休中の男性の従業員を対象にした「Working Father’s Meeting」といった当事者向けのプログラムでは、必ず上司も一緒に参加し、両者が感じたことを共有しているという。こういった育児に関する男性対象のプログラムを実施する企業は珍しいのではないだろうか。

 さらには、部署単位でソニーらしい働き方を実現することを目的とした「じかんプロジェクト」という労働時間改善プログラムも実施する。

 時間効率を高めるため、テレワーク制度、ノー残業デーの徹底、フレックスホリデー(年休10日分の計画取得)といったことを行っているが、それも全社一律にではなく、各職業が主体的に考え、最適なやり方を再構築し、効率的で効果的な方法に取り組んでいる。定例会議が半減したことでコア業務にかけられる時間が大幅に増える効果が出たという。


男性の当事者意識が働き方改革のきっかけに

 紹介した2社に共通しているのは、男性社員の育児に対する当事者意識が生まれ、育児にまつわる休暇が取りやすい風土が生まれたことだ。社員の育児休業取得は「その人しか分からない」という業務を棚卸しするきっかけとなり、チームや社内での情報共有化を進める業務改善が進む機会となる。その結果、残業が減り大幅なコスト削減につながる企業もある。

 ヒューリックでは男性の育児休業取得率の向上により、新卒入社の3年間定着率100%、育児休業復職率100%と、人材確保に効果が生まれている。またソニーでは男性も育児とキャリアの両立ができると社内意識の変化が起きているという。

 育児休業を取得したソニーの男性社員からは「子どもの誕生と成長は、働き方を見直す有意義な機会となった。内発的動機から生まれる新たな仕事への取り組み、本質的なダイバーシティ理解につながっている」との声が挙がっている。

 仕事と育児の両立支援に男性が当事者意識を持つことが、企業の働き方改革の一助になるのは間違いない。まずは対象となる男性従業員に短期間でも取得を促すことで、職場のモチベーションが上がり、生産性も向上するきっかけになるだろう。

筆者:阿部 桃子

JBpress

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