補助金漬けの再エネは「主力電源」になれるのか

7月6日(金)6時0分 JBpress

価格も供給量も、再エネは限界に近づいている(写真はイメージ)

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 7月3日に閣議決定された第5次エネルギー基本計画では、再生可能エネルギーについて初めて「主力電源化を目指す」と明記されたが、再エネの電源構成比は「2030年に22〜24%」という従来の目標が踏襲された。マスコミでは「急成長している再エネはもっと伸びる」という批判が多いが、それは本当だろうか。

 中国政府は5月31日、太陽光発電の買取価格を大幅に引き下げ、その設置を制限する規制を発表した。中国は世界の太陽電池(太陽光パネル)の70%を生産しているが、これによって供給は大きく減る。中国は発電量でも世界第2位だが、その成長にストップがかかるため、今年の世界の太陽電池のグローバル需要は、初めて前年を下回る見込みだ。


太陽電池はピークアウトした

 世界的に再エネの急成長が始まったきっかけは、2011年の福島第一原発事故である。それまでもヨーロッパで固定価格買取制度(FIT)はあったが、この事故で世界的に「脱原発」の決め手として太陽光発電が注目された。そのブームを牽引したのが、中国メーカーの製造した低コストの太陽光パネルだった。

 中国政府もそれを支援するため、太陽光発電をFITで補助した。しかし急成長で財政負担が重くなったため、中国政府はFITの補助金をカットし、今年の中国の太陽電池生産量は、当初の見込みより40%減ると予想されている。

 日本でも2011年に民主党政権がFITを導入した。当初の買取価格(産業用)は、kWh(キロワット時)当たり40円という破格の水準だった。これは電気代の2倍近い価格で全量買取を20年にわたって保証するので、多くの投資ファンドが参入し、下の図のように2014年度には987万kWと、2011年度の3.7倍の太陽電池が出荷された。

 だが、その後は太陽電池の出荷は減少し、昨年(2017年)度はピーク時の57%まで落ちた。その最大の原因は、FITの買取価格が20円/kWhに下がったことだ。今年度からは18円に下がったので、大規模な「メガソーラー」の申請はほとんどなくなったという。

 それでもFITで買取を保証した電力は、20年間ずっと電力会社がすべて買い取らなければならない。そのコストは「再エネ賦課金」として電気代に上乗せされる。昨年度の賦課金は2兆1000億円で、これは今後も再エネ設備が増える限り増え続ける。


補助金の切れ目が再エネの切れ目

 これまで世界的に再エネ(特に太陽光発電)が急成長したのは、FIT補助金のおかげだが、世界的にこれを見直す動きが強まっている。ドイツでは「脱原発」で導入したFITでCO2は減らなかった。太陽光や風力のバックアップとして石炭火力を増やしたからだ。

 このためドイツは2010年に固定価格を廃止し、市場価格で買い取る制度に移行した。中国も同様の制度に移行する予定で、世界的にFITは廃止の方向だ。日本でもやめるべきだという意見は強いが、政府は今月、閣議決定したエネルギー基本計画では明確な方向を打ち出せなかった。

 日本でも太陽電池のコストは急速に下がっており、10円/kWh以下になったともいわれる。それなら18円で買い取るFITは不当な利益保証だから廃止すべきだが、本当にそんなに安くなったのだろうか。

 前ページの図のように、2014年に太陽電池の出荷がピークアウトしたが、このとき買取価格は32円だった。これは日本の太陽光発電がそれほど安くないことを示している。その原因は、送電網のコストが高いからだ。

 既存の送電網に余裕がある場合はそれを利用できるが、大規模な太陽光や風力の発電所を建設する場合は、送電設備も自前で建設しなければならない。それでも基幹送電網に余裕がないと、接続できない場合もある。九州では、すでに太陽光の発電量が送電容量を上回るケースが出ている。

 この送電網のボトルネックが、再エネの量的制約になっている。これは予備の送電線を効率的に利用すれば、ある程度は緩和できるが、デコボコの大きい再エネの送電を100%保証することは非効率だ。

 理想的なのは、再エネ発電所の中に蓄電池を置いて「地産地消」にすることだが、このためには蓄電技術が飛躍的に進歩しないといけない。経済産業省の試算では、再エネ+蓄電池だけで電力供給を実現するには、今の1/28になる必要があるが、蓄電池の技術革新は遅い。楽観的な予想でも、蓄電コストは2020年代に今の半分になる程度だ。


石炭火力が現実的な選択肢

 このように価格も供給量も、再エネは限界に近づいている。今は電力の約15%を供給しているが、その半分が水力で、これはほとんど増やす余地がない。再エネ全体を22%まで増やすには、あと7%を太陽光・風力で増やさなければならない。これは現在の2倍であり、太陽光発電の増加が止まった現状では無理だろう。

 それより問題なのは、今の非効率的なエネルギー供給を続けると、国民負担が増えることだ。ドイツではFITの導入で電気代が2倍になったが、フランスから送電線で電力を輸入しているので供給量には不安がない。日本は電力が輸入できない。

 これをカバーするには化石燃料の輸入を増やすしかないが、それによってCO2排出量は増え、地球温暖化に関するパリ協定の「2030年までに温室効果ガスの26%削減」という目標を達成することは不可能だ。

 最もクリーンで安価な電源は原子力だが、政治的コストが高い。CO2排出量を減らすには原発の新増設が必要だが、政治的には不可能だ。電力会社にとっては、石炭火力を建設するほうがはるかに安い。日本の石炭火力の技術は高いので、大気汚染は技術的に削減できる。

 CO2排出量は増えるが、パリ協定を見直すことも1つの選択肢だろう。地球温暖化についての科学的コンセンサスはない。その原因が人為的なCO2排出かどうかについても、因果関係が解明されたわけではない。効果の不明な再エネの補助金を毎年2兆円(消費税1%分)も負担するのは無意味である。

 国民にとって大事なのは、再エネが主力電源になることではなく、安価なエネルギーを安定供給することだ。温暖化や大気汚染を無視すると、コストが最小なのは石炭火力である。CO2の削減は原発を増設する中国にまかせ、温暖化には地球全体で対応すると割り切ってもいいのではないか。

筆者:池田 信夫

JBpress

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