「全社員データサイエンティスト」が目標

7月9日(月)9時15分 プレジデント社

MS&ADホールディングス 取締役会長 鈴木久仁氏

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これからビジネスマンはどう変わるべきか。「プレジデント」(2018年4月30日号)では、特集「いる社員、いらない社員」で、大企業のトップ29人に「人材論」を聞いた。今回は、MS&ADホールディングスの鈴木久仁取締役会長のインタビューをお届けしよう——。

少子化、グローバル化、IT化。社会を変える大波は損害保険業界にも押し寄せている。メガ損保の一角であるMS&ADホールディングスは、グループ内に眠る大量の契約データ、事故データなどの活用を急ぐ。そのための人事戦略は。


安全運転の度合いを判定して保険料率を算定する保険


——損害保険業界、そしてMS&ADホールディングスは、これからの社会の変化にどういう影響を受けますか?


少子化が進めば自動車保有台数も当然減ります。これは、最大種目である自動車保険のマーケットが縮小するということですから、従来の事業ポートフォリオは変えざるをえません。その変革に取り組んでいるところです。




MS&ADホールディングス 取締役会長 鈴木久仁氏

グローバル化に関しては、傘下の三井住友海上(МS)がM&Aで海外の有力保険会社との提携を加速する一方、あいおいニッセイ同和損保(AD)のほうは、2000年からまずヨーロッパで始めたトヨタブランドを使った個人向け自動車保険の販売を、アジアやオーストラリアにも広げるなど強化しつつあります。


デジタライゼーションをいかに進めるかも、経営課題のひとつです。保険(Insurance)とテクノロジー(Technology)を組み合わせたインシュアテック(InsurTech)を活用することで、AIやIoTなどを利用して業務の効率化を図るのはもちろんですが、新商品の開発にも応用していきます。たとえば、自動車に設置した端末などから運転速度やアクセル、ブレーキなどの情報を保険会社がリアルタイムで取得し、安全運転の度合いを判定して保険料率を算定する「テレマティクス保険」などの商品です。


——今後は必要とされる人材観も変わりますか?


欲しいのは、変化をいとわず柔軟な考え方ができ、自分で問題意識を持ち、なおかつ想像力を働かせて新しいものを生み出せる人ですね。逆に、上司の指示に右向け右、で従うような人材は、これから徐々に価値がなくなるでしょう。



■社員が滋賀大学データサイエンス学部に研究員として参加


スキルとしては、グローバルなコミュニケーションの道具である英語力は必須です。当グループでは各社TOEICの目標スコアを定めており、そのための学習機会を提供したり、インセンティブを用意したりしています。ちなみにTOEICスコア保有者は、ADでは約1100人ですが、そのうちの3割以上が海外駐在レベルとされている730点以上を獲得しており、満点である990点も複数が獲得しています。



また、当グループは職種を海外赴任のある全域型と、国内だけで業務を行う地域型とに分けていますが、地域型だから英語力は要らないということにはなりません。鎖国をしているならいざ知らず、いまの時代はたとえ国内で仕事をしていても、海外との関わりは必ず出てくるからです。


▼データに関する感度を引き上げる

もうひとつが、ITという道具を使いこなせる能力。この先、仕事というのは好むと好まざるとにかかわらず、人とAIとの協働になりますから、ITのことはわからないとか、苦手だとかはいっていられないのです。さらにITが使えるだけでなく、もう一歩進んで、すべての社員に「データサイエンティスト」になってほしいと思っています。


——「全社員データサイエンティスト」とは?


これから保険会社の命運を握るのはデータです。幸い私たちの手元には、いままでに蓄積した膨大なデータがあります。ところがこの宝の山を事業に活用できているかといったら、そんなことはなかった。損保業界は自由化以前は「護送船団方式」によって守られてきました。自動車保険を例にとると、保険料も代理店に支払う手数料も各社横並びだったので、顧客データを分析してそれを商品に反映させるなどということはやらなくてもよかった。


しかし、もうそんなことはいっていられません。自由化以降、損害保険各社の独自性が出てきているとはいえ、いまはまだ各種保険の参考純率や基準料率(いずれも損保各社が保険料率を決める際に規準とする基礎数値)は、損害保険料率算出機構にデータを提供して計算してもらっています。これからはそれに頼るだけではなく、やはり自らビッグデータを扱えるようにならないと、収益構造を劇的に改善するようなことはできないし、競争力も高まらない。だから「データサイエンティスト的発想」を全社員ができるようにならなければいけないのです。


——データ分析に関する博士号を取得したような高度人材を積極採用するというよりも、社員全員のデータに関する感度を引き上げるということですね。


はい。17年4月、滋賀大学に日本初のデータサイエンス学部が開設されました。そこにADの社員も研究員として参加させています。そして当グループは、博士号を持っている人たちを対象にしたデータサイエンティスト育成のための産学協同プロジェクト「CEO」の参画企業でもあるので、そういうものもどんどん利用していく予定です。


もっとも、人材養成には時間がかかります。実際に戦力になるまでには3〜4年の実務経験も含め、都合10年はかかるでしょうから、中長期的に取り組まなければいけない課題です。変化のスピードを考えると、時間的余裕はありません。紙ベースでの管理データのデジタル化などには、いまから全速力で取り組んでいきます。



■人材は年齢・性別・国籍などいっさい気にしない


——人材のダイバーシティ(多様性)の面ではどうですか。


変化に機敏に対応するには、これからはダイバーシティ&インクルージョン(包摂)が不可欠です。年齢、性別、国籍などいっさい気にせず、人材が活躍するのが基本です。


現実には女性活躍ももう一歩ですが、そもそも当グループは成り立ちが違う会社の統合会社。最初からいろいろな人が集まってできているのだから、その点では心配していないんですよ(笑)。




▼QUESTION

1 生年月日、出生地


1950年9月15日、神奈川県

2 出身高校、出身大学学部

栄光学園高校、早稲田大学商学部

3 座右の銘

人の役に立て

4 座右の書

『鬼平犯科帳』池波正太郎

5 尊敬する人

グスタフ・フォス(栄光学園創始者)

6 私の健康法

よく寝る

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鈴木久仁(すずき・ひさひと)

MS&ADホールディングス 取締役会長

1950年、神奈川県生まれ。73年、大東京火災海上保険に入社。2001年、あいおい損害保険執行役員経営企画部長。10年、あいおいニッセイ同和損保社長。16年から同副会長(現職)。ならびに、14年から持ち株会社のMS&ADホールディングス会長。

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(MS&ADホールディングス 取締役会長 鈴木 久仁 構成=山口雅之 撮影=永井 浩)

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