熟年カップルの"ラブホ利用"が増えている

7月14日(土)11時15分 プレジデント社

■「高齢のお客様が増えているのは確かです」


年金支給日を楽しみにし、青春ならぬ“老春”を謳歌している人がいる。電機メーカーの部長だった67歳の岡沢博(仮名)氏は、高校の同窓会で再会した、テニス部で2学年下の女性と一緒にホテルに行く関係に発展している。若いころ、時間を共有した者との再会は共通の話題も多いだけに、その後の展開も早い。彼女との楽しみの逢瀬は、同居する娘家族の目を気にして、ラブホテルを利用している。



退職して時間に余裕のある熟年カップルの岡沢氏たちは、もっぱら平日の昼間にラブホテルを利用しているが、自分と同年代の熟年カップルをよく目にして驚いたという。


実際、熟年のラブホテルの利用は増えているのか。


「年金支給日に限らず、高齢のお客様が増えているのは確かです。子どもが減り、シニアが増える中、売り上げに占める高齢者の割合は高くなると思います」


そう話すのは、全国に47のラブホテルを経営するレステイの宮原眞氏だ。


■年配者に配慮し、ベッドは低くしてある


長野県や山梨県でラブホテルを経営するバルシア インベストメント&コンサルティング代表の細田悠太氏も「朝から昼の時間帯の30〜40%は高齢の利用者です。農家の方は朝の農作業が終わった早い時間に来られます。お年寄りは年金に加え、農作物でお小遣いが入ります」と話す。


一方でホテル側も「どこで逢瀬を楽しむか」というシニアの悩みに応える努力をしている。


「テーブルの角に丸みをつけたり、転倒防止のためにバリアフリー化するなど安全面を考慮しています。エアコン、テレビのリモコンは液晶表示の大きなものや拡大ルーペも備えています。高齢者に人気なのは、漆喰の壁や和風テーストを醸し出す部屋。年配者に配慮し、ベッドは低くしてあります」(宮原氏)と設備面で様々な工夫をこらす。料金もカップルのどちらかが60歳以上であればシニア割引が受けられる。



■ルームサービスの注文で多いのがステーキやトンカツ


シニアからのルームサービスの注文で多いのがステーキやトンカツ。「シニアのラブホテル利用者は肉食」と宮原氏も細田氏も口を揃える。


ラブホテルで楽しい逢瀬の機会がない熟年の独身者にとって、中高年専門のお見合いパーティーは絶好の「出会いの場」といえよう。


年金支給日から10日後、東京・渋谷のホテルで中高年限定の婚活パーティーが開かれた。主催した三幸倶楽部はこうしたパーティーのほかに、カラオケやダンス、ハイキングなど、共通の趣味を通じて交際のきっかけを提供している。入会資格は男性は40歳以上、女性は35歳以上だ。「恋人探し、パートナー探しの会です。3、4年前から、年金を受給し始めた60代後半の団塊世代が急増しました」(三幸倶楽部・越川玄代表)


入会する男女の目的は、パートナーを探すこと。孤独感や老後の生活不安、そして、性の問題があるという。男性の7〜8割はセックスにこだわるが、女性はセックス抜きの交際を望む人が多いという。


パーティーに参加した78歳の男性はパートナーを求める胸の内を明かす。


「体が丈夫であれば年を取っても異性を求めますし、会に参加して女性と話ができるだけでもいい。女性とつき合いたくて、渋谷まで1時間30分かけても出てきます」


■偶数月の15日は、高齢者のXデー


2018年最初の年金支給日、2月15日の東京・上野の昼下がり。「アメ横」近くのJRガード下を抜ける大通りを曲がった繁華街の路地左手にある年季の入ったビル。白髪が薄くなりかけた初老の男性が、前をゆっくり歩くアベックをすり抜けるように、黒いドアの中に消えた。素人人妻・癒やし系熟女専門を謳う店舗型の風俗店だ。


受付で料金を払い、6畳ほどの待合室に案内されると、40代の会社員風が1人、先ほどの初老の男性と60〜70代の客が4人、順番を待っている。年金支給日とあって、やはり高齢者の割合が高い。入り口のドアに貼られた「AED」設置シールが頭に浮かぶ。


個室にはこの手の風俗店には珍しい、バスタブと頭を出して体を入れるスチームバスがある。実はここ、もともとはソープランド。サービスの前後にお風呂につかれるのが高齢者に人気の1つだ。



■「年金世代はすごく優しいし、みんなゲンキ」


「年金支給日とそのあと1週間ぐらいは、お年寄りが多いのはたしかね。入浴できるところは珍しいから、古くさくてもお年寄りにはゆったりできて、評判がいいの」


明るく笑いながら胸をはるのは、自称40歳のさおりさんだ。いきなりバルブをひねるさおりさん。蒸気がブアーッとスチームバスから噴き出したのには驚いた。


「年金世代はすごく優しいし、みんなゲンキ、ゲンキ。60代じゃ、まだ高齢者じゃない。70代でも、すごくゲンキに、攻めてくるの。触れるだけや、お話だけで帰る年配の人もいるけど、バイアグラなんかを飲んでいらっしゃるのか、とてもお元気な人もいますよ」


年金世代の客の相手をするのは、「優しいし、乱暴しないし。お話ししてても楽しいから好き」という。




右:シニアが集まるお見合いパーティー。男性の7〜8割はセックスにこだわる。左:高齢者に人気のラブホの和風ルーム。ベッドの下は畳となっている。

■午前中の待合室は、高齢者であふれる病院のよう


「シルバー世代にとって店舗型の性風俗店は安心感を持てるのでしょう。ヘルスは女性と肌を合わせ、本番以外の性的サービスが受けられます。1万円以内で、年金が少ない人でも十分楽しめますが、シニアに人気なのはソープランドです」と話すのは、風俗情報誌「俺の旅」編集長の生駒明氏だ。


ファッションヘルスなど20代のときには耳にしたこともなかった65歳以上の年金生活者には、ソープランドは馴染み深い風俗といえる。


「ソープランド業界は緩やかな縮小傾向で、ソープ街で有名な東京・吉原にもその波は押し寄せています。約140店舗まで減少していますが、シニア客の割合は増加しています。特に年金が支給される偶数月の15日からしばらくは高齢客が急増します。“吉原年金族”とも呼ばれる彼らは、他の風俗でも上得意のお客様。早朝割引のある格安ソープの午前中の待合室は、高齢者であふれる病院の待合室のようです」(生駒氏)


ただ、ソープでも貧富の二極化が進み、蓄えがあり、企業年金もある人が通うのは、6万〜8万円もする人妻・熟女系の高級ソープランドだ。


「高級店は入店基準も厳しく美女ぞろい。和服姿のソープ嬢がホームページを飾っているし、客もダンディーな格好をしています。店側も朝早く来店できる年金世代を狙って2万円の早朝割引をしたり、プレーのコースを長くしたシルバーコースを設定している店もあります」(生駒氏)


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▼この1年間に性交したいと思ったか

『セックスレス時代の中高年「性」白書』より

男性:60代 思った 78%・70代 思った 81%

女性:60代 思った 42%・70代 思った 33%


▼年金がもらえるのは偶数月の15日!


2018年の年金支給日


2月15日(木)、4月13日(金)、6月15日(金)、8月15日(水)、10月15日(月)、12月14日(金)


2カ月分を1度にもらえる。だからこそ熱くなる!

*祝日の場合はその前の平日


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■「60歳未満のお客様、お断り」の店も


おしゃれに気を使って遊びにくる彼らにとっては、風俗で女性に接するのは非日常の「ハレ」の日。定年で会社に行かなくなれば人に会わなくなる。ましてや30代、40代の女性と接する機会などほとんどない。風俗に行くことで若い女性と触れあい、コミュニケーションも取れるし、疑似恋愛もできる。シニアにとっては楽しいアンチエージングの手段の1つでもある。


年金世代にとって、風俗店の待合室で若い客と一緒になることに抵抗を感じる人も多い。「いい年をして、スケベジジイめ」と白い目で見られたり、繁華街で風俗店に入る姿をさらしたくない人だっている。


こうしたことに配慮して「60歳未満のお客様、お断り」を掲げるのは、無店舗型風俗店の「こころあわせ」だ。店は「デリバリーヘルス」で、客の求めに応じて、ホテルや自宅へ女性コンパニオンを派遣している。


オープンしたのは7年前。同店の店長は開業した理由を「この世代が心置きなく遊べる風俗が少なかったからです。性のアンチエージングは進んでいて、最近のシニアは何歳になっても元気。ただ、年齢が上になればなるほど風俗店に行くことをためらってしまう人も多いので、ハードルを低くしたかった」。


■70代のAV・風俗嬢「風俗は男の確認作業」


店には一般的な「ヘルスコース」のほかに「ラブラブデートコース」もある。こちらは女の子と食事や酒、カラオケ、ショッピングなどを楽しむという性的なサービスを伴わないコース。デートコースとヘルスコースを組み合わせて楽しむお客も多いという。


「風俗遊びは、ウチが初めてというお客さんがたくさんいます。長い間女性の肌に触れていないことなどから、男として役に立つのか、自信をなくされている場合も多い。けれどご利用のあとは気持ちが若々しくなったと喜ばれる方が多い」(同店店長)




右:大阪・西成の商店街。「男の美学……60代70代は男で死にたい」と書かれている。左:70代に見えない風俗嬢のゆりさん。「勃たせるためには何でも使う」。

セックスカウンセラーで回春性感マッサージ「青山リラク」を東京・四谷で経営する青山愛さんは「年金支給日のあとしばらくはシニアの相談者が増えます」と話し、こう続ける。


「抱きしめられるとラブホルモンのオキシトシンが分泌されることを活用した“甘え抱きしめ療法”を施術しています。セクシーな服でシニアの方を抱きしめてあげると『おかあさん』と声をあげる人、『5年ぶりに勃起した』と喜ぶ人もいます。子どものころに母親から抱きしめられる機会が少なかった70歳以上の方に多いですね」


超熟女モノのAVに出演し、70歳の現役デリヘル嬢でもあるゆりさんは「年寄りは勃たなくてダメな人ほど男を確認したくて、ヘルスに来ます。踏んでも蹴っ飛ばしてもいいからイカせてくれって、頼む人もいます。男って勃たなくても性的サービスを受けたいものなんですよ」と、これまで3000人の男性客を相手にした経験から話す。



■十三のホテヘル「高齢者では80代の客もいる」


大阪の年金支給日も東京と同じように、年金世代が繁華街やホテル街に姿を見せている。


歓楽街で有名な大阪・十三のお昼前。曇り空の下、老カップルがメガバンクの支店から出てきた。ピンク色のコートを羽織った女性は、両手をジャケットにしまう男性の腕にしがみつく。2人がウキウキと向かった先は十三駅南側のラブホテル街だ。途中何軒か看板の前で立ち止まりながら、最終的に選んだのは白が基調の大人な雰囲気が漂うホテルだった。


平日のこの時間帯にもかかわらず、ほかにも高齢者のカップルがチラホラ。カラフルな帽子で着飾っていたり、年金を下ろしたばかりなのか大事そうに財布を両手で握りしめていたりする。彼ら以外にいるのは、大学の授業をさぼってきたのだろうか、髪の毛の色が明るい20歳前後の学生風の若者ばかりだ。


「やっぱり年金支給日は(客の入りが)違いますよ」と語るのは、十三の熟女ホテヘル(ホテル派遣型風俗)店の店主だ。支給日の偶数月の15日には必ず予約を入れる人もいる。高齢者では80代の客もいるという。


■スケベで覚えたタブレットPCの使い方


「週に1回は利用してくれていたそのおじいさんが、あるときから突然こなくなったんで、もしや、と思って心配していたんです。そうしたら2年後にまた戻ってきました。『どうしていたんですか?』と聞いたら、奥様の介護をずっとしていたそうです。『(奥さんが亡くなって)もう49日も過ぎたから解禁や!』と張り切っていましたよ。それ以降また週1でご利用いただいています」(同店店主)


同店店主がお店で働く女性に聞いた話では、「高齢男性は、勃ちは悪くなっていても性癖は若いころのまま。スカートめくりにコスプレ……。女性の体だけ触って“サービス”を受けないことも珍しくない」という。


そのホテヘルでは年金支給日に合わせて、高齢者向けに新聞広告を必ず打っていたが、最近は広告の効果が薄れ始めているという。


「自前のタブレット型パソコンでお店のホームページを開いて『この娘で』と指名するおじいちゃんが増えています。あるおじいちゃんは『スケベのために使い方を覚えた』と話していましたよ」(同店店主)


ちなみに、スマホだと文字が小さすぎるのか、ネットを見て来店する高齢者は、画面の大きいタブレットを持っている人が多いという。



■性欲は「老いれば枯れる」のではない


場所は変わってミナミにある創業80年を超える老舗キャバレー。ステージ上で電子オルガンが奏でられ、昭和が漂う店だ。午後5時に開店すると、ここもシニアが目立つ。


「昭和の香りの残るレトロさは風俗業界で高齢者に支持されています。数は減っていますが、グランドキャバレーも年金世代には人気です」(生駒氏)


20代のホステスは「年金支給日は特に多いですよ」と話し、「バブルやその前を知っている世代は、とにかく女性の扱いが荒くて正直嫌です。すぐに触ってくるので毎回対応するのが億劫です」と嘆く。


40代のベテランホステスは「口説き文句のように『どこか旅行に行こう。どこでも連れていってあげるよ』っていろんなおじいちゃんに言われます」と笑う。ただ、「ゆうても勃てへんので、体は触ってきてもそれ以上のことは求めてきません。ある意味安心できます」と高齢者に信頼感をにじませる。


風俗でのひとときでも、2人だけの時を過ごす濃密な時間だ。年金世代にとっては、間違いなく「憩い」の場所であり時間なのだ。性欲は本能。「老いれば枯れる」のではない。健康ならば異性を求める気持ちは続き、それは生き甲斐につながる。



(ジャーナリスト 吉田 茂人 撮影=加藤 慶)

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