フィルターバブルを変革するAIによる“偶発的出逢い”

7月18日(火)6時0分 JBpress

インターネット社会が定着した現代において、私たち個々のネットワークは、検索結果に合わせたアルゴリズムとソーシャルメディアネットワークの分析によりフィルターがかかり、提供される情報のパーソナル化が進んでいる。

「フィルターバブル」ともいわれている情報のパーソナル化は、使えば使うほどに精度が高まり、自分の興味関心・考え方と一致する意見や情報のみが表示されるようになってくる。

例えば、アドネットワークは興味関心や年齢、性別、職業、地域などでターゲティングされているし、AmazonやYahooからのレコメンドなども、これまでの購入履歴や検索履歴などを基に表示されているものだ。


価値観を固定化する、枠組みの中の情報

自分好みにカスタマイズされ、知りたいと思える情報ばかりが提示される状態は、効率的に物事を進めたい現代人にとっては非常に便利なものである。しかし、本来であれば情報の宝庫であるはずのインターネット上で、決められた枠組みの中からしか情報が得られないという事態は、思考の偏りとともに視野を狭めていく。そして、価値観を固定化してしまう懸念点も持ち合わせている。

フィルターバブルと対極にある言葉として、「セレンディピティ(偶然の幸福)」という言葉がある。ときに、思いもよらない偶然の出来事は、私たち人間に対し、驚きとともに喜びをも与えてくれるものだ。今まで知ることのなかった世界に触れることで、人間は新たな学びを得て、創造性を高めて行く。こうして育まれたものによって、イノベーションが生みだされていくのだろう。

検索履歴を消す、アカウントを外すといったアクションによって、ある程度表示される情報は変わってはくる。とはいっても、PCやスマホを見るたび、そんな設定はしていられない。こうしたフィルターバブルに対する打開策として期待できるのが、AIを活用した近畿大学の取り組みだ。


AIによる偶発的な本との出逢い

これまでネット上でレコメンドされる本といえば、過去に購入したか、検索したことのある本に関連するか、類似しているものだった。しかし今回、近畿大学がスタートしたサービスは、AI人工知能がSNSの投稿内容から学生一人ひとりの性格を分析し、その人の潜在的興味に一番合致する本を紹介するといったものだ。

本機能は、ウェブアプリケーションの開発などを手掛けるエイド・ディーシーシーが開発し、今年4月に開設した近畿大学の新たな学術拠点「ACADEMIC THEATERアカデミックシアター」の公式ホームページで、2017年6月26日月1000より公開されている。

サービスの詳細は、AIがTwitterまたはFacebookの投稿内容から学生のキャラクターを分析。心理学のビッグファイブ理論で人間の性格を構成するとされる、開放性・誠実性・外向性・調和性・神経症傾向の5つの因子に関連する言葉を抽出し、スコア化する。それと同時に、AIが「BIBLIOTHEATER」に配架している7万冊の本についても、書評を分析して5項目をスコア化。その人の特性分布値と最も近い本をお薦めの本として抽出する。

近畿大学では、AIによって潜在意識を刺激するお薦めの一冊との偶発的な出会いを創出することで、本離れが進むと言われる学生に読書のきっかけを提供していくという。

フィルターにかけられることで、自分好みの情報が提供されることは、実に便利なことだし、正直なところ、筆者は個人的にあえてこのシステムを再構築する必要性はないと思っている。

社会がダイバーシティの重要性を叫ぶ現代において、もっとも重要なのは、居心地が良いからといってフィルターの内側にだけ身をゆだねるのではなく、常にフィルターの向こう側を意識することではないだろうか。内側と外側の世界をバランス良く行き来できれば、ネット本来のあるべき姿である“可能性に満ちあふれた空間”が、私たちの目の前に広がっている。

筆者: Sayaka Shimizu (IoT Today)

JBpress

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