セブン-イレブン「100円生ビール」販売再開の条件は

7月23日(月)7時0分 NEWSポストセブン

販売当日にサーバーに貼り紙が(客が撮影)

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 どこにでもあるコンビニで、いつでも生ビールが飲める。しかも1杯100円となれば、酒好きには歓喜のニュース……だったのに。


 コンビニで、生ビールを1杯100円で販売する──。メディアが報じるや、インターネット上には気が早い愛好家が撮影した準備中の専用サーバーの写真が一気に拡散された。ところが、販売開始を予定していた7月17日の朝になって、試験販売中止が発表されたのである。販売を予定していた都内店舗の従業員はこう話す。


「当日早朝に、本部から連絡が来て、中止の張り紙を掲示しました。生ビール目当てで訪れたお客さんからは、落胆の声が絶えません」


 中止の理由を運営元のセブン-イレブン・ジャパン(以下、セブン)に問い合わせると、


「店舗や本部への問い合わせなど、非常に反響があり、予想以上の需要が想定されたことから、供給が追いつかなくなることが見込まれ、中止という判断に至りました。今後、改めてテスト販売を行なうかどうかは、現時点では未定です」(広報センター)とのこと。提携するキリンHDは「お答えできることはない」(コーポレートコミュニケーション部)というのみだった。


 想定以上の需要という嬉しい悲鳴ながら、テスト販売を“延期”ではなく“中止”するというのは何とも不可解である。


 今回、セブンは実験的に首都圏の一部店舗でキリン「一番搾り」の専用生ビールサーバーを設置し、Sサイズを1杯100円(税込み、以下価格は同)、Mサイズを1杯190円で販売予定だった。レジで専用カップを買い、サーバーにセットしボタンを押すだけで生ビールが注がれ、持ち運び用のフタも用意されている。レジ横で見慣れた存在となったコンビニコーヒーとそっくりの景色である。


 経済ジャーナリストの永井隆氏が解説する。


「セブンは100円コーヒーの『セブンカフェ』を大ヒットさせ、近年来客数が伸び悩むコンビニ業界の起爆剤となりました。ビールはそれに続く待望の企画として準備されていたものと思われます。


 一方、セブンにビールを提供するキリンは、ビールの販売減が止まらないなかでコンビニやスーパーとのプライベートブランド強化に力を入れ、売り上げ増を狙っていた。そこで4月に『一番搾り 匠の冴』という缶ビールを共同開発して関係が構築されていたセブンと“生をやってみよう”という構想に至ったのでしょう」


 実は生ビールを売るコンビニ自体は、すでに存在する。JR東日本グループのコンビニ「ニューデイズ」では、一部の店舗で毎年、夏場だけの期間限定(通年の店舗も存在)で、アサヒスーパードライ樽生ビールを1杯398円(545ミリリットル)で販売している。


 売り上げは非公表としているが、「生ビールは、ホットスナック等つまみとの併売のほか、通常の缶ビールや缶チューハイとの併売率も高い」(JR東日本リテールネット営業戦略部)といい、ビールとつまみで“二度美味しい”ようだ。


 セブンの狙いもそこだったとされる。


「100円で生ビールを売れば、ついでにフライドチキンや焼き鳥など人気のつまみ類の売り上げも伸び、相乗効果が期待できる。それに、2026年までにビール系飲料の酒税が一本化されるためビールの値段が安くなる予定なので、100円でも十分利益を上げられる見込みだったのだと思います」(前出・永井氏)


◆いくつかのハードル


 実現すればまさに“コンビニが居酒屋になる”というアイディアだったが、反響はセブンの想像を超えていたようだ。ネットの騒動に詳しいビール好き編集者の中川淳一郎氏が解説する。


「セブンはデータやマーケティングを重視しているため、数店舗のテスト販売で反響を見てから全国展開するという戦略を考えていたはず。ところが今、異常な猛暑でみんな生ビールが飲みたくて仕方がない状態ですから、100円生ビールの話がネットで一気に拡散された。


 歓迎の声がある一方、『治安が悪化したらどうするんだ』『店の前で酔っ払いがたむろする』といった批判的な意見も相次ぎ、賛否両論で大騒ぎになってしまった。これでは、セブンが重視する正確なデータが取れないということが、中止の実情だったのではないか。セブン側が試験販売を“延期”ではなく“中止”と発表したのも『いつ再開するんだ』などの問い合わせが再び殺到するのを避けるためだと思います」


 調達・購買業務コンサルタントの坂口孝則氏は、別の懸念を指摘する。


「セブンの生ビール販売には大きな可能性がある一方、テスト販売から本格販売するまでにはいくつかのハードルがあります。大きいのが未成年飲酒や飲酒運転のリスクが増えること。店内が混雑した際に未成年かどうかの確認時間がきっちり取れるかどうか。飲酒運転については、車で来ているかどうかの確認は難しく、提供してしまうと店側の責任が問われてしまう。こうした課題をどうクリアするか。現状は可能性とリスクを天秤にかけて、いったん中止としたのでしょう」


 一方、前出・永井氏はこう予測する。


「セブン側は中止の理由として『予想以上の需要』を挙げている。つまり、かなり売れるという見込みがあるのは確実。遠からぬうちに態勢を整え直して、テスト販売から本格販売に踏み切る可能性は高いとみています」


 顧客需要を貪欲に飲み込みコンビニ戦争を牽引してきたセブンが意地を見せるか、それとも“生ビールの金脈”は泡と消えるのか。


※週刊ポスト2018年8月3日号

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