資生堂の株主優待はお得?カタログから選ぶ自社製品

7月24日(火)21時40分 All About

資生堂(東証1部)の株主優待はカタログから選ぶ自社製品です。事業改革とマーケティング改革が結実した好業績を達成しており、株主優待は魅力的です。株価が調整したタイミングでの購入が検討できます

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国内トップ、世界第5位の化粧品メーカー

資生堂(東証1部<4911>)は化粧品で国内トップで、世界でも第5位のシェアを誇る化粧品メーカーです。国内だけではなく、海外でも「SHISEIDO」ブランドの浸透を図りながら約120の国地域で事業展開しており、海外売上比は5割に及びます。海外事業強化の一環としてM&Aによる拡大も進めており、例えば、2010年に自然派化粧品で有名な米ベアエッセンシャル社を、16年に「ローラ メルシエ」など高級品ブランド化粧品を展開する米ガーウィッチ社を買収しています。

展開する事業構成は、「日本事業」「中国事業」「アジアパシフィック事業」「米州事業」「欧州事業」および「トラベルリテール事業」で、売上構成比はそれぞれ43%、14%、5%、14%、13%、4%となっています(17/12期)。

ブランド乱立の黒歴史:悪循環生み出した仕入れ主義からの脱却

同社は世界第5位につける世界的メーカーであるにもかかわらず、一つ一つのブランドが弱いことがしばしば指摘されます。同社と5位争いをするエスティローダーでは、クリニークや、MAC、ボビーブラウンといったブランドを展開していますが、まずエスティ—ローダーの傘下だとは知られていないことですし、一つ一つが独立的に人気を誇るブランドとなっています。

一方、資生堂はここ最近では「SHISEIDO」や「クレ・ド・ポーボーテ」「エリクシール(資生堂の色濃いですが)」と言ったブランドがブランド価値として確立されてきましたが、以前は100ものブランドが乱立し、それぞれのブランド価値が希薄化していたことで、消費者の気持ちを捉えられない時代がありました。

多くのブランドが乱立することになったのは、国内人口の減少に2000年代の不況も重なり、需要が減少したことが背景にあります。需要が減ると、小売契約による代理店販売を主な販売チャネルとしていた同社は、小売店に仕入れてもらうことに必死になります。小売店に仕入れてもらうための一つの手段として、新ブランドや新製品を入れることが頻繁に行われるようになったのです。もちろん一時的であるため、幾度となく繰り返された結果、ブランドが乱立することになりました。90年からの10年だけで64ものブランドが起ち上げられました。

ブランドの乱立は、消費者にとって「何が自分に合っているかわからない」という印象を与え、国内売上は2012年度まで7年連続で減収の道を辿るなど、業績の成長が見込まれない状態が続きました。

こうした状況から脱するため、同社は、ブランドを底上げする取り組みを進めてきました。まずは増えすぎたブランドを縮小し、看板ブランドを強化する。そうすることで、「資生堂」ということを感じさせないブランドが成長し、消費者が自分に合ったブランドを決めやすい→ファンとなって使い続ける、といった好循環が生まれるのだと思います。

かつて高度経済成長期に高成長をもたらし、そしてブランド乱立の原因となった小売契約販売の売上高比は、75%から20%程度まで縮小しました。その代わりに、ドラッグストアの販売やネット販売を強化しています。

2014年、仕入れ第一から消費者視点への転換を図る新しいマーケティング改革によって、国内事業の立て直しが始まったのでした。そして、消費者視点への転換を図った改革から4年で、結果が出ました。

高価格帯化粧品と、中国人購買層の取り込みで売上拡大へ〜業績急回復の背景:2つのマーケティング戦略〜

2017年12月期決算では、売上高は1兆0050億円(前期比18.2%増)、営業利益は804億円(同2.1倍)と、創業来初めて売上高1兆円を突破し、2020年12月期を最終年度とする中期経営計画の目標売上を3年前倒しで達成する結果となりました。

さらに、足かせとなってきた米ベアエッセンシャルの減損処理を踏まえ、最終利益が下方修正されていたのですが、これも大きく上回る結果となり、正真正銘のサプライズ決算となりました。(株式市場では急騰して10年来の高値を付けました)

この急成長の背景には、魚谷社長が強調して行ったマーケティングの成功があります。2014年に就任した魚谷社長は、役員経験こそないものの、日本コカ・コーラのCMなどを手掛け数々のヒットを生みだした「マーケティングのプロ」として知られる人物であります。

その魚谷社長が強調してとった戦略が、プレステージブランドとボーダレスマーケティングです。

まず、プレステージブランドというのは、購入することがステータスとなるようなブランド。百貨店を中心に展開する高価格帯ブランドで、同社では「SHISEIDO」や「クレ・ド・ポーボーテ」が当たります。

サプライズ決算となった17/12期ではなんと増収額の42%をプレステージブランドが占めるに至りました。売上成長13%となった国内売上のうち、プレステージ売上の成長率は36%と業績をけん引しました。18/12期1Q決算においても、プレステージブランドの成長が利益率を押し上げています。そしてプレステージブランドの成長に寄与したのが、インバウンド売上です。インバウンド売上が国内売上に占める割合は14%ですが、前年比70%の大幅増収となり、成長のけん引役となっています。

インバウンドでは中国人旅行客の取り込みが売上成長のカギとされ、中期経営計画でも、中国人購買層の取り込みは戦略に挙げられています。同社では、訪日中国人旅行客数について、17年の735万人から2020年には1000万人まで増加すると予想しています。

そしてその旅行客が好んで買うのが化粧品。特に「日本製」を前面に打ち出した化粧品の人気が高く、百貨店でも最も高い免税売上額をたたき出しているといいます。

また日本化粧品の購入手段は、旅行時に百貨店で買うだけではなく、越境ECによる購入が増加しているようです。

そこで同社では、ボーダレスマーケティングを強化。ボーダレスマーケティングは、例えば、日本でプレステージ化粧品を購入あるいは認知してもらい、帰国後に(も)購入してもらうという戦略です。空港の免税店や本国で、日本と同じモデルを使った販促を行うなど、その名の通り、国境を無くしたマーケティング活動を意味します。

これら2つのマーケティング戦略により、例えば、高価格帯シワ改善クリームが国内でヒット商品に成長し、また「SHISEIDO」の「アルティミューン」という高級美容液が中国人の間で人気商品となり、インバウンド売上を押し上げています。

そして中期経営計画「vision2020」においても、「クレ・ド・ポーボーテ」を中国や空港免税店で強化することや、欧州市場の再開拓が掲げられています。また、プレステージブランドでは、M&Aによる事業拡大なども視野に入れているとのことで、今後、プレステージブランドの分野全体の拡大にボーダレスマーケティングが相まった形での成長が期待できると思います。

また、2017年12月期の決算では、トランプ減税による最終利益の押し上げ効果もサプライズとなったことに注目したいです。同社は、業績の足かせとなってきた米国ベアエッセンシャル社の減損処理(707億円)を計上するため、昨年11月に一度最終利益予想を50億円まで下方修正しました。ところが、法人税率を35%から21%まで引き下げる米国税制改革法案が可決されたことで、最終的に純利益は227億円にまで押し上げられました。

2018年12月期第1四半期:売上高・営業利益ともに過去最高を更新〜引き続き力強い成長:すべての事業で増収〜

2018年12月期第1四半期の業績は前期に引き続き、力強い成長の継続が確認できました。特に、クロスボーダーマーケティングが売上拡大に大きく貢献しました(中国+27%、トラベルリテール+50%、インバウンド売上+40%超)。継続的な新商品投入と相まって、増収に寄与しています。

これまで成長をけん引してきたプレステージブランドがグローバルで大きく伸び(+18%)たことに加え、日本発のコスメティクスブランドがアジアで飛躍的に成長(+23%)を見せました。

利益面では、マーケティング投資を強化している一方、収益性の高いプレステージブランドの好調により、特に日本や中国が利益に大きく貢献したことで大幅増益となりました。

利益率の高い高価格帯化粧品が日本および中国で伸長したことから、粗利益率は前年比2.6ポイント改善(76.6%→79.2%)。価格帯ミックスの改善が進み、全体利益を押し上げる構造となっています。

また、商品設計を単品ごとに見直すなどの原価低減効果が引き続き奏功しており、さらに、より生産効率の高い製品売上が伸びていることが寄与しています。

なんと第1四半期だけで通期計画の半分を達成しています。

日本では、同社の店頭売上は+19%の成長を達成しています。日本の化粧品市場の成長率は、+2〜3%ですから驚異的。特にインバウンド売上が+40%とけん引していますが、日本人売上も+10%と市場成長を大きく上回っています。こうした成長を実現できているのは、マーケティングが効果的に働いているからです。

まず、中計でも掲げている戦略の一つ「選択と集中」により、強いブランドの確立を進めています。この取り組みにより、代表的ブランドである「エリクシール」が+70%超、「SHISEIDO」が+40%超、「アネッサ」が+80%超の売上成長を記録。「マキアージュ」もベースメークでトップシェアを継続しています。ブランドの再確立と同時に、新ラインの導入により若年層にターゲットを拡大していることも、高い売上成長に貢献しています。

また中国では、プレステージが成長をけん引する形で、利益率を大幅に改善(+13.8ポイント)。「エリクシール」や「アネッサ」も飛躍的に成長しており、またEC売上の好調が継続しています。

なお、米州の収益が悪化しましたが、これは成長への転換に向けたマーケティング投資の拡大によるもので、計画上です。

また同社は、高価格帯で利益率の高いプレステージ化粧品への製品構成のシフトを踏まえ、通期の営業利益予想を11.2%、そして19/12期は10.7%、20/12期は8.4%引き上げました。

急成長に伴う生産能力不足:売れ筋商品への集中と、新工場稼働へ

国内化粧品の急成長と、中国におけるプレステージ化粧品の高成長に伴い、生産能力が追い付かない状況となっています。目先では、1日当たり生産を増やして売れ筋商品に集中することで、この問題に対応する方針です。ただ、これは短期的な計画であって、中期的には、供給体制の思い切った強化に乗り出しました。

同社は、中期計画において3年間で1,300億円の設備投資を計画しており、その大半を占める950億円を工場の新設・増強に割り当てる予定です。

まず、最大400億円を投じ、2019年に中価格帯スキンケア製品を扱う新工場を栃木県大田原市で稼働させる計画で、年間1.2億本の化粧水などスキンケア化粧品を生産できる能力が備わります。

また2020年には、老朽化が進んだ大阪市の工場を閉鎖し、新たに茨木市で建設した新工場を稼働させる計画。生産能力を従来計画比の2.1倍にまで拡大させる計画であるほか、高級品の生産能力も強化する予定です。高品質な日本製化粧品へのインバウンド需要を取り込む狙いです。

また、最近、想定以上の売れ行きとなったシワ改善クリームの強化も短中期的な成長に寄与すると思います。シワ改善クリームは、レチノールベースのクリームで、2017年に初めて医薬部外品として厚生労働省に認められました。ポーラに続き同社でも発売し、目標の100万個を大きく上回る170万本を売上げた大ヒット商品となりました。このクリームは2018年には現在の3ブランドに加え、もう1ブランドで導入する計画です。

事業改革とマーケティング改革が結実した好業績、中国での高成長を期待。株主優待も魅力的

これまで行ってきたブランド数縮小などの事業改革やマーケティング投資が成果となり、業績は絶好調です。同社の営業利益は、17/12期に119%の伸びを達成しましたが、収益の好循環により今後も継続した成長が予想されています。

特に中国における高品質な日本製化粧品への需要が高い中、同社は今後も中国(人)向けで高成長を維持できると思います。また、プレステージブランドがボーダレスマーケティングによって、中国人訪日観光客に留まらず、本土や越境ECでの購入が増えることが期待できそうです。さらにデジタライゼーションにより、若者世代への訴求力を高め、購買層の拡大が図られると思います。

減損処理を実行した米国事業は相変わらず赤字ですが、その額は縮小しており、業績への影響は限定的と見てよいでしょう。不採算店の閉鎖や販促の縮小など事業改革はほぼ完了していることに加え、今後は成長路線に向けた取り組みを実施していく方針が示されているからです。これまで足かせとなってきた事業の回復により、同社の見通しはさらに明るくなるでしょう。

18/3月末時点の財務内容は、自己資本比率が47.8%、有利子負債は約779億円ですが、1200億円を超えるキャッシュでカバーしており実質無借金経営です。長短ともに支払い能力にも問題なく健全な内容となっています。

さて、そんな株価の先行き見通しが明るい同社の株主優待ですが、100株以上を、1年以上継続保有した株主にオリジナルカタログから選択する自社製品となっています。権利確定月は12月です。株価を8592円で100株購入し、株主優待を3000円で評価、1株あたりの現金配当を36円とすると、株主優待と現金配当を合計した利回りは0.8%となります。利回りは低いですが、業績見通しが明るいことから、同社製品を利用している方には良い株主優待だと思います。

なお、同社の株価推移を見ると長期では綺麗に上昇していますが、時折50日、100日、200日の各移動平均線まで調整することがありますので、そのような調整時に購入を検討すれば良いと思います。

参考:日本株通信

※記載されている情報は、正確かつ信頼しうると判断した情報源から入手しておりますが、その正確性または完全性を保証したものではありません。予告無く変更される場合があります。また、資産運用、投資はリスクを伴います。投資に関する最終判断は、御自身の責任でお願い申し上げます。
(文:戸松 信博(マネーガイド))

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