ブラック企業の定番“解雇撤回”に騙されるな! 復職後、社内で孤立化させ自己都合退職に追い込む卑劣手法

7月24日(水)15時5分 LITERA

 会社から不当解雇されたものの、解雇に納得できずに、会社に対して、一矢報いるために、立ち上がる労働者がいる。そのような労働者に対して、ブラック企業は、ときに、方便的な解雇撤回という、嫌らしい手法を用いてくる。


 今回は、方便的な解雇撤回を争う方法を紹介する。


 クライアントは、相手方である運送会社の配車係として11年間勤務していたが、ある日、突然、代表取締役から解雇を通告された。クライアントは、解雇に納得がいかず、解雇理由を尋ねたところ、代表取締役は、「あなたに歩み寄ってほしかった。あなたは独り歩きしている。」等とあいまいな解雇理由しか答えなかった。相手方から交付された解雇通知書には、解雇理由として、「会社都合」としか記載されていなかった。


 このような解雇に当然納得できないクライアントは、筆者のもとへ相談にきた。クライアントの話しを聞き、この解雇は無効となる可能性が高いと考え、相手方に対して、本件解雇は無効であるので、直ちに就労させるように請求する通知書を送付した。


◯解雇を争うためには?


 労働者が解雇を争う場合、会社に復帰したいわけではないが、いくらか金銭を請求したいと考えることが通常である。解雇が無効になれば、労働者は、解雇期間中の未払賃金を会社に請求できるので、不当解雇を理由に、会社に金銭請求する場合には、解雇は無効なので、解雇期間中に支払われるべきであった未払賃金を請求することになる。


 この解雇期間中の未払賃金を請求するためには、労働者は、解雇した会社で就労する意思があることを表示しなければならない。解雇した会社に就労する意思があることを労働者が表示したにもかかわらず、解雇した会社が、解雇が無効であるのにその就労を拒否した場合に、民法536条2項に基づき、労働者は、解雇した会社に対して、解雇期間中の未払賃金を請求できるのである。


 そのため、解雇された労働者は、本当は解雇した会社に復帰したくなくても、解雇した会社で就労する意思があることを表示する必要があるのである。


 ブラック企業は、この労働者の就労する意思を逆手に取る、嫌らしい手法をとってくることがある。それが、方便的な解雇撤回という手法である。


◯“方便的解雇撤回”という卑劣な手法


 筆者の通知書に対して、相手方代理人からは、解雇理由については、あいまいにしたまま、クライアントがこれまでの言動を改めて反省し、相手方で働くことを強く希望するのであれば、復職はやぶさかではないこと、配車係から一般事務職へ配置転換し、月額の給料が7〜8万円減額することを主張してきた。


 おそらく、相手方代理人は、相手方の解雇理由では、解雇が無効になると考えて、方便的に解雇を撤回し、労働条件を引き下げることを前提に復職を求めて、クライアントの解雇期間中の未払賃金請求をあきらめさせようと考えたのだと思われる。


 これが方便的な解雇撤回という手法である。多くの労働者は、解雇をした会社に本気で復職したいとは考えておらず、このような労働者の意向を逆手に取り、あっさりと解雇を撤回して、復職を求めて、解雇期間中の未払賃金請求をあきらめさせるか、労働者を復職させた上で、会社内で孤立化させて、自己都合退職に追い込むという手法である。


●“方便的解雇撤回”で解雇理由が不明確なまま復職しても不当扱いの可能性


 相手方の方便的解雇撤回に対して、筆者は、解雇理由が不明確なままでは、仮に復職したとしても、不明なままのクライアントの問題点を指摘して懲戒処分をするといった不利益取扱いをする可能性が払拭されていないこと、配車係から一般事務職へ配置転換して、賃金が解雇前から7〜8万円も減額されるという復職条件は到底受け入れられないことを主張した。


 その上で、ナカヤマ事件の福井地裁平成28年(2016年)1月25日判決(労働判例1132号5頁)をもとに、相手方が解雇権を濫用して解雇通告をしたことによって破壊されたクライアントと相手方との間の労働契約上の信頼関係は、回復したとは到底いえず、クライアントが本件解雇通告後も出勤できないのは、相手方の責めに帰すべき事由によるものであり、民法536条2項により、相手方は、クライアントに対して、本件解雇通告撤回後も、賃金支払義務を負うと主張した。


 そして、相手方に対し、本気で解雇を撤回するのであれば、クライアントに対して、先行して、解雇時点にさかのぼって、雇用保険及び社会保険資格を回復する手段をとり、違法無効な解雇をしたことに対する真摯な謝罪と再発防止を文書で誓約して、未払賃金を支払うことを求めた。


 これに対して、相手方は誠意ある対応をしなかったため、労働審判を申し立てた。


 労働審判において、クライアントは、クライアントには解雇理由がないこと、相手方が方便的に解雇を撤回しても、信頼関係が回復しておらず、解雇期間中の未払賃金を請求できることを主張した。


 裁判官は、ある程度、こちらの主張に理解を示してくれたのか、相手方を説得し、労働審判の第1回期日で、相手方が解雇を撤回して、労働契約を合意解約し、約1年分の給料から、既払いの解雇予告手当と退職金相当の金銭を控除し、約10カ月分の給料に相当する解決金を支払うという内容の調停が成立した。クライアントは、相手方に対して、一矢報いることができて、結果には満足してくれた。


 解雇した会社が、方便的に解雇を撤回してきても、労働契約上の信頼関係が回復していないとして、方便的な解雇撤回を争い、解雇期間中の未払賃金を請求できる場合があるので、ブラック企業のこのような手法にあきらめてはならない。


【関連条文】
解雇 労働契約法16条
解雇期間中の未払賃金請求 民法536条2項


(弁護士 徳田隆裕/弁護士法人金沢合同法律事務所https://www.kanazawagoudoulaw.com
ブログ https://www.kanazawagoudoulaw.com/tokuda_blog)



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ブラック企業被害対策弁護団
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長時間労働、残業代不払い、パワハラなど違法行為で、労働者を苦しめるブラック企業。ブラック企業被害対策弁護団(通称ブラ弁)は、こうしたブラック企業による被害者を救済し、ブラック企業により働く者が遣い潰されることのない社会を目指し、ブラック企業の被害調査、対応策の研究、問題提起、被害者の法的権利実現に取り組んでいる。
この連載は、ブラック企業被害対策弁護団に所属する全国の弁護士が交代で執筆します。


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