安倍首相が怯える山本太郎の発想と爆発力

7月29日(月)17時15分 プレジデント社

第25回参議院選挙で当選確実となり、インタビューに答える「れいわ新選組」の舩後靖彦氏(中央)と山本太郎代表=2019年7月21日、東京都千代田区(写真=時事通信フォト)

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■「1強」が、たった2議席の新政党におびえている


参院選が終わってからも、永田町の話題は山本太郎氏が率いる「れいわ新選組」が独占している。山本氏は、相変わらず歯切れよく破天荒な発信を続けている。「れいわ」から当選した重度障害者の2人のために国会は突貫工事でバリアフリー化を進める。


安倍晋三首相は、早ければ今秋にも衆院解散する選択肢を持っていたのだが、今は「来年の五輪後」に傾いてきた。これは「れいわ」の実力を慎重に見定めようという判断によるものだという。「1強」が、たった2議席の新政党におびえていているのか。




第25回参議院選挙で当選確実となり、インタビューに答える「れいわ新選組」の舩後靖彦氏(中央)と山本太郎代表=2019年7月21日、東京都千代田区(写真=時事通信フォト)

■「総理大臣を目指す」とテレビ番組で明言


25日朝、山本氏は、テレビ朝日の「モーニングショー」に出演した。参院選挙期間中は政党要件の壁に阻まれ、テレビでの露出はほとんどなかった山本氏。冒頭は「『放送禁止物体』としてこれまで生きてきたので、今日、地上波で呼ばれるなんてビックリです」とおどけてみせた。しかしコメンテーターの玉川徹氏から「総理大臣を目指すのですか」と聞かれると「そういうことになります。本気じゃなかったら(れいわを)旗揚げしないですよ」と神妙な顔で語った。


参院選で「れいわ」が2議席獲得したとはいえ、山本氏自身は議員バッジを失った。「首相を目指す」と言っても普通なら誰も見向きもしないだろうがが、今の彼の口から出る言葉は「大風呂敷」には聞こえない。


小泉進次郎氏でも進められなかった国会改革に動き


山本氏の発言以外でも「れいわ」は注目を集める。筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の舩後靖彦さんと、重度障害者の木村英子さんの当選を受け、与野党は参院議院運営委員会を開き国会の改修や、代理投票を認めるなどの改革方針を確認した。


「日本で一番改革が遅れているところ」と揶揄されることが多い国会。単にバリアフリー化が進んでいないだけでなく、ペーパーレスなど民間企業なら当たり前の改革が手つかずの部分が多い。自民党の小泉進次郎衆院議員らが、妊娠中や出産直後の議員が「遠隔投票」できる改革などに取り組み「平成のうちに」実現しようとしたが、実現には至らなかったことは記憶に新しい。


にもかかわらず「れいわ」の2人が当選したことで、これまで崩されなかったバリアーがあっという間に崩された。障害がある当事者が議席を得たことのインパクトと、山本氏の存在感のたまものだろう。



■「当分、衆院の選挙はない」と森元首相が暴露


山本氏は政見放送で「(重度障害者の擁立を)発表した際、こんな声が届きました。『障害者を利用するつもりか』。この言葉に対して私は言います。上等です。障害者を利用して障害者施策を変えようじゃないか」と訴えている。選挙が終わってから、わずか数日で山本氏は公約を実現したことになる。


「当分、衆院の選挙はないと安倍首相は言っている」


東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長は24日、都内で開かれた五輪関係の会合で、こう語った。現職衆院議員である組織委副会長の遠藤利明氏に「選挙はまだ先だから五輪に向けた仕事に専念してほしい」という意図での発言だったが、会場にいた人たちは前段の「当分衆院選はない」という部分に驚き、ざわついた。


森氏は安倍氏の「元上司」にあたる。森氏が首相の時、安倍氏を官房副長官に抜てきしたこともある。引退したとはいえ、生臭い政界情報好きの森氏に対し、安倍氏は報告を怠らない。その森氏の発言だけに、多くの人は「ガセネタではない」と受け取った。


■「太郎」への警戒で解散戦略は変更に


もともと参院選に合わせて衆院解散し、衆参同日選に持ち込むことを考えていた安倍氏は、同日選を見送った後も、今秋に衆院解散する「時間差同日選」を軸に政治日程を組み立てていた。しかし選挙結果を踏まえて「五輪後の20年秋以降」に軸足を移したようだ。


理由は2つある。1つ目は、参院で自民、公明、日本維新の会による「改憲勢力」で、改憲に向けた国会発議に必要な「3分の2」を割り込んだこと。足りないのは「4」なので、今後野党に揺さぶりをかけることで回復は不可能ではないが、その前に衆院選を行って衆院の方も「3分の2」割れになると、憲法改正への動きが事実上ゲームオーバーになってしまう。だから、衆院選は「3分の2」回復後にしたい。


もう1つの理由が、まさに山本太郎氏の存在だ。参院選で「れいわ」が獲得したのはわずか2議席だが、安倍氏はその存在感を過小評価していない。特に都市部での爆発力には脅威を感じる。例えば東京都では、比例代表で「れいわ」は45万8151票獲得した。これは日本維新の会の47万9908票とほぼ同じ。社民党はもちろん、国民民主党よりも多い。もはや主要政党と言っていい。


今の勢いのまま衆院選に突入したら「れいわ」は、無党派の若者層から大量得票して多くの議席を獲得する。その場合、最近の選挙では若者層の支持が高い自民党に対する影響は甚大だ。



■山本氏のスキャンダルをじっくり待つ作戦へ


「れいわ」の躍進を受けて今、日本新党という1990年代に存在した政党が再注目される。細川護熙氏が立ち上げた日本新党は緒戦となる1992年の参院選で4議席確保。翌年の衆院選では35議席獲得して注目を集めた。そして同年8月、党代表の細川護熙氏は非自民連立政権の首相の座に駆け上がる。


「れいわ」は「令和の日本新党」になるのではないか。自民党は警戒している。このあたりの経緯は「山本太郎の『政権奪取宣言』に中身はあるか」を参照いただきたい。


ただし安倍氏は、山本氏のことを過大評価もしていない。今が旬の政治家であることは確かだが、今がピークであることも見切っている。


多くの人も同意するだろうが、山本氏は攻めには強いが守りは弱いタイプ。それをカバーする組織もない。


時間がたてば、スキャンダルが噴出したり、党内で内輪もめが起きたりするに違いないと踏んでいる。また、山本氏のスタンドプレーで野党共闘がぼろぼろになることも考えられる。それだけに、衆院選はしばらく先送りして「れいわ」の自壊を待つという作戦に出たということなのだろう。もちろん、衆院解散を先送りすることで「れいわ」がさらに大きくなり、来年には手がつけられないような勢力になっている可能性もあるが、安倍首相はそうは見ていないということだろう。


幽霊の 正体見たり 枯れ尾花。


「れいわ」は今、政界を揺るがす幽霊だ。それが実体を伴う政権を狙う勢力に成長していくのか。それとも、枯れ尾花で終わるのか。



(プレジデントオンライン編集部 写真=時事通信フォト)

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