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「トヨタがEVに本気になった」は本当か?

JBpress7月30日(日)6時0分
画像:2011年、中国政府のEV施策十城千両が行われた頃の中国国内でのEV関連イベントの様子(筆者撮影、以下同)
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2011年、中国政府のEV施策十城千両が行われた頃の中国国内でのEV関連イベントの様子(筆者撮影、以下同)
画像:フランスではルノーのピュアEV「ZOE(ゾエ)」があるが一般向けの販売は伸びず
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フランスではルノーのピュアEV「ZOE(ゾエ)」があるが一般向けの販売は伸びず
画像:マツダのデミオEV。旧型モデルのみでの設定で、明らかに米ZEV法対策
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マツダのデミオEV。旧型モデルのみでの設定で、明らかに米ZEV法対策

 日本の自動車産業は何かとトヨタ自動車の動向を気にする。自動車産業界だけではなく、電気、通信、運輸、ITなどの主要事業者も、そして官公庁も、トヨタの事業戦略を注視している。自動車産業の現場を定常的に取材していると、そうした強固なトヨタ尊重論が日本経済界の中に定着していることを強く感じる。

 そのトヨタが、2019年から中国市場で小型SUV「C-HR」ベースのEV (電気自動車)を生産・販売すると一部のメディアが報じた。

 これを受けて、筆者のところに多方面から「トヨタがEVに本気になったのだから、いよいよEVが本格普及期に入るのか?」という問い合わせが来ている。

 なにせ、このところEVに関する報道が一気に増えている。そうした世の中の流れに乗り遅れまいと「トヨタがついに動いた」というイメージを持つ人が多いのだろう。

 EV普及への動きは世界的に進んでいる。

 例えばインド政府は、2030年までに自国で販売する全ての自動車をEV(電気自動車)にするという、野心的な政策を打ち出している。

 フランス政府はマクロン政権の発足直後、2040年までにガソリン車とディーゼル車の販売を止めるという。英国も、2040年以降はガソリン車とディーゼル車の販売を禁止し、EVに移行すると報じられている。

 アメリカでは、EVの単独メーカーとして世界最大規模の米テスラが中型セダン「モデル3」の生産を開始した。

 ドイツではダイムラー、BMW、VW/アウディの“ジャーマン3”がEVラインアップを強化する事業戦略を発表している。

 そして、累積のEV販売台数がトップの日産は、今秋に第2世代のリーフを発表する予定だ。


世界のメーカーが注視する中国の「NEV法」

 こうした状況下、EV普及のカギを自動車メーカー関係者に尋ねてみると、口を揃えて出てくるキーワードがある。

 それは、中国の「NEV (ニュー・エネルギー・ヴィークル)規制法」(以下「NEV法」)への対応だ。

 中国に「中国汽車技術研究中心(CATRC)」という国立の自動車研究所がある。CATRCは米カリフォルニア大学デイビス校と連携し、「ZEV (ゼロ・エミッション・ヴィークル)規制法」(カリフォルニア州環境局 大気保全委員会が1990年に制定)を参考とした環境車対応の施策の策定を進めてきた。その結果、制定されたのが「NEV法」だ。中国政府は2018年からNEV法を施行するとしている。

 しかし、日米欧韓の自動車メーカー各社は、「NEV法への準備期間が短いため対応できない」とし、施行を1年延ばして2019年にしてほしいという要望を出したばかりである。

 現時点で、中国政府が公開しているNEV法の概要では、満充電による航続距離により「クレジット数」が大きく異なる(クレジットは環境性能の達成度合いを示す数値。クレジットは売買できる)。例えば50キロメートル以下では「0」。80キロメートル以上150キロメートル未満では「2」、350キロメートル以上では「5」といった具合だ、また、プラグインハイブリッド車(PHEV)は50キロメートル以下で「2」、燃料電池車では350キロメートル以上で「5」となっている。


「十城千両」の消滅がトラウマに?

 こうした中、トヨタは2015年にカローラとカローラレビンのハイブリッド車を中国に投入し、中国政府に「ハイブリッド車を次世代車の中核にしてほしい」という要望を伝えてきた。EVについては、シティコミュータとして航続距離の短い車を開発するのが、トヨタの基本路線だった。

 ところが、実際のNEV法は、トヨタの思惑とは違う方向へと進もうとしている。

 世界最大の自動車製造国、自動車産業国である中国で「NEV法」という法律が施行されようとしている。だから、中国を自社事業の最重要国と位置付けているジャーマン3がEVシフトへと大きく動く。そうした情勢の中で、トヨタも動かざるを得なくなった。

 つまり、トヨタは決していきなりEVに本気になったわけではない。現時点では、中国政府の動きを見ながら、中国でのレギュレーションマッチングを進めようとしているだけである。

 トヨタがEVの開発に保守的なのには理由がある。それは、中国政府が2006年に発表したEV普及の施策、「十城千両」の失敗だ。

 十城千両は、10つの大都市でそれぞれ数千台規模のバスやタクシーを電動化するというもの。多額の補助金が地方政府を介してばら撒かれたため、各地で「EVバブル」が起こった。当時、筆者も中国各地で十城千両に関する各種のシンポジウムやカンファレンスを取材したが、それは凄い盛り上がりようだった(冒頭の写真)。ところが2013年秋に、なんの前触れもなく、十城千両はいきなり中止されてしまった。

 中国政府がいつまた手のひら返しをするか分からない。EVがこれからどうなるのか、先行きはいまだ不透明なのである。

筆者:桃田 健史

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