日産黒字回復の立役者「デジタル販売」は日本でも定着するか?

7月31日(土)8時0分 JBpress

(桃田 健史:自動車ジャーナリスト)

 日産自動車の業績が回復基調に乗った。

 7月28日、日産は2021年4〜6月期(第1四半期)の連結決算を発表した。グローバル市場の全体需要が前期比66%増となる中、日産のグローバル販売は前期の64万3000台から104万8000台へと63%伸長した。2020年春は新型コロナ感染症の影響で、グローバル生産工場の稼働停止や販売店の休業を迫られ、グローバル販売が大きく落ち込んだ。その反動として今期は伸び率が大きくなった形だ。

 今回の決算発表で内田誠CEOは、グローバル販売の好調を受けて、今年(2021年)5月時点で示した通期見通しを上方修正した。目標の販売台数は440万台と変わらないが、売上高を6500億円上積みして9兆7500億円、当期純利益を600億円の赤字から1200億円上積みして600億円の黒字、そして営業利益率は1.5%とした。

 2023年度までの事業構造改革計画「NISSAN NEXT」で掲げている営業利益率の目標は、2021年度に2.0%、2023年度に5%としており、それに向けて「日産の変革は着実に進んでいる」と、内田CEOは会社の軌道修正が功を奏していることの自信を示した。


デジタル販売が急拡大

 今回の決算発表で注目されるのは、グローバル販売急成長とともに、「デジタルをきっかけとした販売」(デジタル販売)が拡大したことだ。

 日産は2021年4月から北米、中国、そして日本でデジタル販売を強化しており、その販売成約が増加した。デジタル販売の成約率は2020年度は通年で12%だった。2021年度に入ると、4月は12%だったが、5月に13%、6月には17%と増加した。日産はデジタル販売が急成長しているとアピールする。

 コロナ禍によってデジタル販売のニーズは高まっているが、日産はコロナ禍の前からデジタル販売強化に向けて準備を進めてきたという。デジタル販売では、顧客は在庫検索、試乗の予約から新車購入手続き、割賦販売など金融商品への申し込みまでをネット上で行える。デジタル販売は販売の効率性を高めると同時に、顧客の満足度を高め、販売店としても見込み客へのアプローチがしやすくなるなど、メーカーと販売店の双方にとってメリットがあるという。

 顧客がネット上で在庫検索を行えるのは、北米ではとくに有効だ。

 アメリカにおける新車販売の基本は、日本のように顧客がカタログから選んだ車をメーカーに発注する形式ではなく、販売店がグレードや色、オプションなどを細かく指定したクルマを前もってメーカーに発注する方式だ。そのため、顧客は自宅周辺の販売店にどんな在庫があるのかを事前に調べる必要があった。デジタル販売ではその在庫検索をオンラインで行える。

 ちなみにアメリカの顧客は在庫検索をする際、車体認識番号(VINコード)を指定して試乗予約や値引き交渉をする。VINコードは年式やグレード、オプションの種類などを示す17文字のコードだ。筆者もVINコードを指定して複数の車をアメリカ国内で購入している。

 また、アメリカでは昔から、販売担当者のコミッション制が影響し、人によって、また同じ人でも日や時間帯によって、値引き額がバラバラというケースが珍しくなかった。そのため、顧客の新車販売店に対する信頼度はけっして高くなかった。

 こうした固有の販売実態があるアメリカで、デジタル販売は実売価格の透明性を示すツールとなり、販売台数増に結びついたのだと思われる。

 また、中国の場合は、とくに内陸部に販売店不毛地帯が存在していたこともあり、コールセンターによる新車販売や、「天猫」などアリババグループのECサイトを通じた自動車販売が広がりやすかった。そのため、中国の顧客はメーカー直営のデジタル販売を活用することへの抵抗感が少ないといえる。


販売店は「修理工場」になっていく?

 では、日本はどうか。

 日本でも最近、中古車販売専業者のみならずトヨタなど自動車メーカー直営サイトで、スマホやPCを使って車両検索から商談成立まで行えるシステムが広がっている。ただし、新車販売を完全にオンラインで完結する形態は、テスラなど一部を除いてかなり少ないのが実情だ。

 日産は、2021年後半に日本で発売予定の新型EV「アリア」について、「デジタル販売を強化する」(星野朝子・執行役副社長)という。

 EV発売をきっかけにデジタル販売強化を打ち出すメーカーは、日産のほかにボルボがあるが、今後、デジタル販売が主流となった場合にメーカーと販売店の関係がどのように変化するのか、日産は現時点では明確な方向性を示していない。

 デジタル販売が定着すれば、顧客とメーカーが直接、商談から成約まで行えることになる。すると、結果的に販売店の大きな役割は「修理工場」になっていくのかもしれない。

 日本で車のデジタル販売がどのように広がっていくのか、引き続き取材を続けていきたい。

筆者:桃田 健史

JBpress

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