なぜ海外のエグゼクティブは船旅を好むか

8月3日(土)11時15分 プレジデント社

総トン数4万トンと小型船ながら、最高級のぜいたくなクルーズを提供する「シルバー・ミューズ」。

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■顔見知りに一声かけて。一週間で何人と話ができるか?


ここ数年日本発着のクルーズ船が急激に増加し、「1泊1万円以下」「アミューズメント満載」といった広告が目につくようになった。筆者は15年以上前から取材や個人旅行で海外・国内クルーズに何度も乗船してきたが、船旅好きからすると、低価格帯や施設の充実度ばかりが注目されることに少し違和感があった。船の旅の良さはハード面よりもソフト面のほうが大きいと感じているだからだ。インターネットでもSNSでも情報が取り入れられるこの時代、どこで何をするかを事前に決めておけば、現地では間違いのない最短ルートで「見る」「食べる」「過ごす」といった目的は達成できる。だからこそ、誰とも同じではない「偶然の出会いと会話」が最高の思い出や、今後の自分に影響を与えるきっかけになる時代ではないだろうか。


とはいえ、普通の海外旅行では出会いがなかなかないという人もいるだろう。そんなとき、「多くの出会いがあり、拙い英語でも会話を楽しめる」のがクルーズだ。なぜなら、「一般的に旅程が1週間以上と長く、ゆったりとした時間が流れている」「さまざまな国籍の人が乗船していて、基本的に船内の公用語は英語」だから。




総トン数4万トンと小型船ながら、最高級のぜいたくなクルーズを提供する「シルバー・ミューズ」。

クルーズ船には「カジュアル/スタンダード」「プレミアム」「ラグジュアリー」とカテゴリーがあり、船の大きさは高級になるほど小さく、乗客一人あたりのスタッフが多くなるため手厚い接客が受けられる。一方で乗客数の多い大きな船ほど、サービスは一過性になるものの、船内の施設が増える。ラグジュアリークラスでは乗客定員500人以上に対し、クルー400人以上くらい。これがカジュアルクラスの最大客船ともなれば、乗客5000人以上、クルー2000人以上が乗船している。海外旅行で1つのホテルに滞在していても、これだけの人に出会うことはまずない。同じメンバーが1週間同じ空間を共にするということは、客船という名の小さな町が移動しているようなもの。必然的に顔見知りが増えるため、会話の機会が圧倒的に増えるのだ。


■英語を話すモチベーションが湧いてくる


例えば、客室担当のクルー。船の旅の場合、乗客はいつでも自分の客室に戻って来れる。そのためクルーのなかには、客との会話の中でさりげなくその日の予定を把握し、客室にいない間に掃除に入るといったプロフェッショナルもいる。乗客同士の交流も盛んだ。船内のレストランやバー、プール、フィットネスなど、1週間も一緒に移動していると「類は友を呼ぶ」という言葉どおり、必ず顔を合わせる乗客がいる。そうした乗客と「次の寄港地でどこに行くか」「船内施設でどこがよかった」といったたわいない話をしながら仲良くなっていったりする。旅先で旅行者に声をかけてくる人には用心したほうがいいことも多いが、船内で出会う人たちはクルーズ代金を払って乗船してきているので、だます目的で声をかけてくる人は極めて少ないように思う。クルーもさまざまな国籍の乗客に慣れていて人当たりの良い人ばかりだ。


そのうえ、夜遅くにバーで一人飲みしていても安全、レディファーストの文化がある、荷物は部屋に置きっぱなしでOK、夜はドレスアップできる、船内にフィットネスやアミューズメント、カフェ、エステなどがあるので、アクティブ派にもリラックス派にも対応している。パートナーとだけでなく、気の置けない女性同士や、シングル客室があるなら一人で乗船してもさみしくはないと思う。


ちなみに、語学堪能でなくてもたいていわかってもらえる。筆者の英語力はかなり低いほうだが、欧米人客と話をすると、「私たちは日本語が全く話せないのに、あなたはこれだけ英語が話せるんだからすごいわよ」などと褒められる。海外の人は褒め上手なので、自己肯定感も話す意欲もぐーんと上がるのだ。



■ウルトラ・ラグジュアリー船を見学


これだけ魅力的なクルーズだが、働きざかりの日本女性に定着してこなかったのは、休みがとれなかったことが一番の要因だろう。例えば地中海ルートは、イタリア、スペイン、フランス、ドイツといった周辺国からの乗客が多く、観光も充実、運行する船会社も多いので船も選べるのでおすすめだが、日程は7泊8日〜。日本から飛行機の往復を入れると10日は必要になり、諦めざるをえなかった。ところが、いま日本は「働き方改革」の推進で休みがとりやすくなった。さらにタイムリーにも「質の高い船が日本を就航するようになった」のだ。「機は熟した。今こそクルーズに乗ろう!」という状況が到来している。


では、どんなクルーズ船を選ぶといいか。海外の人と交流を深めるなら、乗客に船の旅に慣れている欧米人客の割合が多い船が狙い目となる。欧米人客が日本発着便でもわざわざ乗船するなら、プレミアム/ラグジュアリークラスの外国船を選ぶ可能性が高い。


そう考えていたところ、今年4月、東京港に“ウルトラ・ラグジュアリー”と称される「シルバー・ミューズ」が初入港した。この船を保有するシルバーシー日本・韓国支社長の糸川雄介さんに聞いたところ、乗客の8割が欧米人旅行客という。「2017年就航の新しい船ということもあり、もともと弊社の客船のファンでいてくださっているお客様の予約が大半です」。




(左)レセプションを入ってすぐのところにあるメインラウンジ「ドルチェヴィータ」。ピアノの生演奏が聞けることも。(右)毎晩ショーが行われたり、シアターにもなるラウンジで、笑顔のスタッフがお出迎え


(左)10Fにあるプール&ジャグジー。潮風を浴びながらプールサイドで日光浴するだけでも気持ちがいい。(右)プールサイドではバンドの生演奏が行われていた。

■ビジネス仲間との利用も多い


同船は全長213メートル、高さ11階、乗客定員596名で、298室の客室は全室海側のスイートルーム。Noと言わないサービスで、専任バトラーらが乗客のオーダーに答えてくれる。ディナーはメインダイニングが決まっていることも多いが、この船では8つあるレストランのなかから自由に選ぶことができる。カジュアル船ではアルコールは有料だが、シャンパンを含めたほとんどのアルコールのほか、チップ、諸税がすべて含まれたオールインクルーシブなので、いちいちお金の心配をすることもない。ラグジュアリー船ゆえに、公共の場で静かにできないお子さんがいると難しいかもしれないが、中学生以上のお子さんなら、むしろ英会話やマナーの練習にもなるだろうと感じた。




(左)フィットネスルームのランニングマシーン。窓際に設置されているので海を眺めながら運動ができる。(右)リゾート気分が味わえるスパ。同じフロアに美容室やサウナ、フィットネスルームなどがある。


(左)プールサイドにある、軽食を注文できるグリルのスタッフ。(右)全室がオーシャンビューのスイートルーム。ホテルのスイートルームにもひけをとらない広さ。ルームサービスも24時間対応。

「プライベートで乗船されるお客様が多いものの、欧米では女性同士のビジネス仲間でご利用されるお客様もいらっしゃいます。アメリカでは企業が成績優秀社員への報奨旅行としてクルーズを選ぶケースも多いです。そうした方々は、ディナーを囲みながら新しいビジネスのお話に華が咲くこともあるでしょう。弊社の船はWi-Fiを無料でご使用いただけますから、乗船中でもお仕事をなさる方もいらっしゃいますよ」。全室スイートルームなので、仲良くなった客同士、部屋でちょっとしたパーティーを催すといったこともあるそうだ。「住む場所で人生が変わる」というように、旅先でもちょっと上を目指して新しい世界をのぞいてみてはいかがだろう。




ダイニングは8つあり、乗客はどの店でも食事ができる。写真はインターナショナル料理を楽しみながらジャズの生演奏が聴ける「シルバー・ノート」。

■専門誌編集長がお勧めする客船とは?


ほかにもお勧めの客船を教えてもらおうと、次に訪ねたのは専門誌『CRUISE』編集部。吉田絵里編集長が「クルーズの魅力はさまざまですが、船上で乗客やクルーに出会えるのも刺激的ですし、幅広い会話も楽しめ、英語のスキルアップになることは間違いありません。働く女性にも強くお勧めします」と歓迎してくださった。


「日本発着なら『ダイヤモンド・プリンセス』。ほぼ日本で運行していますし、プレミアムクラスでありながら大型船なので価格帯は低めで、幅広い層に人気です」。外国人旅行客の乗船もあるようで、同誌で取材をした際は、乗客からのリクエストで日本人と外国人乗客が触れ合えるような船内イベントを催したそうだ。




『CRUISE』誌編集長の吉田絵里さん。お子さんと一緒に乗船したコスタ ネオロマンチカでの一枚。

「日本発着を選べば渡航費が浮きますから、シルバー・ミューズやクイーン・エリザベスのようなラグジュアリークラスの客船に挑戦してみるのもおすすめです。乗客定員が200名以下の『ポナン』は、フランス船なので乗客にもおしゃれな大人が多いと評判で、フランス人の乗客でも英語で会話をしてくれる方も多いです」


海外発着の注目船も教えてもらった。「『サガクルーズ』はイギリス文化に触れたいという方に。50代以上の方向けの船ですが、ディナー時の男性のタキシード率が100%と、クラシックな英国スタイルを貫いている船です」。シングル客室のある客船が増えているが、このサガクルーズもしかりで、一人客も多いそうだ。「30〜40代の女性なら、オシャレな『オーシャニア クルーズ』や『セレブリティクルーズ』もおすすめです。前者は地中海、エーゲ海、アドリア海などに強く、後者はヨーロッパだけでなくアラスカクルーズも行っています。プレミアムやラグジュアリークラスの客船は、食事も期待できますよ」。


とはいえ「休みは1週間が限度」という人には、カジュアルクラスの客船でショートクルーズの設定がある。「那覇発着の『コスタ ネオロマンチカ』や、シンガポール発着の『クァンタム・オブ・ザ・シーズ』は4泊5日の設定もあるので乗船しやすいのではないでしょうか」。近年のはやりは、カジュアルクルーズであっても高価格帯の客室の乗客だけが利用できる「専用エリア」を設けているそうで、『クァンタム・オブ・ザ・シーズ』にも専用ダイニングがある。


「クルーズは1年以上前から予約を受け付けることも少なくありません。多くがキャンセル料は90日前までかからないので、早めに予約を入れて仕事を調整しましょう。世界には350隻を超える客船がありますから、自分の好みや要望に合ったクルーズを見極めて、ぜひ一度乗船してみてください」






(ライター 干川 美奈子)

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