投資家・村上世彰氏がN高生を「学習効果がない」とバッサリ切ったワケ

8月7日(金)9時15分 プレジデント社

写真提供=KADOKAWA

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昨年6月、N高等学校の「投資部」特別顧問に就任した投資家の村上世彰氏。村上氏が資金を提供して、高校生44人が実際に投資体験をした。投資のタイミング、投資家に求められる条件、お金の本質などを教える講義の際、村上氏はある生徒の質問を「学習効果がないな(笑)」とバッサリ切った。いったい何があったのか——。

※本稿は、村上世彰『村上世彰、高校生に投資を教える。』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。



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■投資家・村上世彰から各20万円を提供されたN高生44人が投資


「お金の本質を多くの若者に理解してもらいたい」


私、村上世彰は、そんな思いでN高等学校(N高)投資部の特別顧問を引き受け、10カ月にわたって高校生の投資教育に取り組みました。高校生44人に、ひとりあたり20万円を支給。投資先は東証上場銘柄に限定し、損をしても返済は不要で、利益が出た場合は部員個人のものになるというルールです。


下記は、彼らに講義した際の質疑応答の様子です。


質問1【暴落で買うか、上昇トレンドで買うか】

【部員】「株は暴落した時が買いチャンス」という人もいますし、「上昇トレンドに乗っている株を買うのがいい」という人もいます。株価が大きく下がっているものを買うのがいいのでしょうか、それとも、上昇トレンドの最中のものを買うのがいいのでしょうか。


【村上】まず、株を買う時には資産や収益といった、バリュー面での裏付けが必須だと思います。たとえば、「1000円の価値があると思われる株が500円になっている」と判断できるならば、バリュー面では買いチャンスだと言えるでしょう。


ですから、大きく下がってバリュー面でかなり魅力的になり、持ち続ければいずれ大きく株価が戻るだろうと考えられるならば、基本的には「大きく下げたところで買う」という判断でいいと思います。


もちろん、どんなに大きく下落しようと、魅力的でないなら「買い」とは判断できません。あくまで資産や収益の状況を検討しておく必要があります。一方、上昇が続いている株であっても、バリュー的にまだまだ魅力的で、「まだ本来の価値の半値くらいしかない」と判断できるのであれば、やはり「買い」と判断してもいいのではないかなと思います。


また、経済や相場のトレンドというのも意識するべきでしょう。


経済が一度下降トレンドになってしまうと、企業業績が悪化して、株価が下がって、そのことで消費が停滞して、さらに業績が悪化して、株価が下がって……というように、どんどん事態が悪化して、底なし沼のようになっていくこともあります。そうした場合には、大きく下落したからといって一気に資金を株に投入してしまうと、その後、資産が減っていくのを、指をくわえて見続けるはめになるかもしれません。


私は、父の教えである「上がり始めたら買え、下がり始めたら売れ」という言葉を大切にしています。買いについては、悪材料がほとんど株価に織り込まれて、もうこれ以上株価を下げづらいという状況になり、底を打って上がり始めるのを確認してから買うのがいいということです。バリューを重視しつつも、きちんとトレンドのことも意識して、タイミングを見極めるべきです。



■コロナ禍の株投資ビギナーが知っておくべき基本


質問2【決算発表前後の対処】

【部員】決算発表の後に株価が大きく変動することが多いです。決算発表を受けて急上昇したり、急落したり。決算発表に際して、投資家としてはどう対処したらいいのでしょうか。




村上世彰「村上世彰、高校生に投資を教える。」(KADOKAWA)

【村上】私の場合は、決算が予想されているよりも良い内容になりそうだと思えば決算発表前に買うこともあるし、予想されているよりも悪くなりそうだと思えば決算発表前に売ることもあります。そういう判断をするためにも、普段からその業界のことを勉強し、チェックしています。また経済や世界の動きを確認しています。


その会社について気になることがあれば、決算発表の1カ月くらい前までに問い合わせして、今どんな状況なのか確認したら良いと思います。決算発表直前になると、足元の状況については会社としては話ができなくなります。しかし、1カ月くらい前までなら、比較的教えてくれることが多いでしょう。


質問3【決算発表後の株価の動き】

【部員】自分が株を持っている会社が決算で業績予想の上方修正をしたのですが、株価は下がってしまいました……。どうしてこんなことが起こるのでしょうか?


【村上】それは、業績予想が上方修正されること自体が、多くの投資家から予想されていたのだと思います。そうしたことを「株価に織り込まれる」という言い方をします。


つまり、今いただいた質問のケースでは、ある程度上方修正されることが株価に織り込まれていて、その予想されている範囲を超えない上方修正だった、あるいは期待されたほどの上方修正でなかったために、株価が下落したのだと思います。


たとえば、業績好調なことが周知されていて、「おそらく上方修正されるんだろうな」と多くの投資家が考えていたとします。そして、上方修正されると予想されている割合について「20%くらい上方修正されるんじゃないか」と考えている人が多いとします。それにもかかわらず会社の発表した上方修正が10%程度だったら、ガッカリして株を売る人も出てくるでしょう。


逆に、20%程度の下方修正が株価に織り込まれていたのに、実際には10%程度の下方修正で済んだ場合、株価は上昇することもあります。


なお、決算発表後の持ち株の対処についてですが、自分が考えた投資シナリオを変更する必要がないならばそのまま持続して保有していいでしょうし、自分の考えた投資シナリオが狂い始めてきたと判断できるような変化があったのなら、売却も検討する必要があるでしょう。



■村上世彰「私はここ10年で、投資で大きな失敗を2つしました」


質問4【大きな失敗について】

【部員】村上さんでも大きな失敗をすることはあるのでしょうか?


【村上】今まで何度か大きな失敗をしたことがあります。ここ10年ほどの例としては2つ挙げられます。


まず、中国のマイクロファイナンス事業への投資。これは、元ゴールドマン・サックス・USのパートナーの投資家が取りまとめて始まったものですが、複数の投資家から資金を集めて中国で中小企業向け融資の銀行を作り、ある程度成長したところで株を公開させ、投資家はそのタイミングで資金を回収するという計画の投資案件でした。


私は2013年にこの案件に投資しましたが、当時の中国経済はリーマンショックから順調に回復し、独り勝ちしているようにも見えましたし、高い利回りの債券で運用できて、かつ上場してさらに大きな利益が得られる可能性があるのなら、かなり良い投資になると考えました。しかし、2015年から中国経済は急激に減速し、債権の焦げ付きが急に増えました。さらに、現地の運営者が債権の焦げ付きの比率を隠蔽して事態を悪化させるということもありました。結局この投資は大きな失敗に終わりました。


2つ目は2011年に行ったギリシャ国債への投資です。当時のギリシャは財政危機に陥り、ギリシャ国債が額面の半値以下に下がっていて、額面通りに償還されれば年率300%を超えるようなリターンとなる状況でした。仮にギリシャの財政が破綻して国債が満額償還されないとしても、他の類似ケースなどを参考に検討すると国外資産などを原資に3割程度は回収できるのではないかと考えました。満額償還されるケース、満額償還されないケースなどを様々にシミュレーションして計算すると、期待値は1を大きく上回るという結論になり投資しました。しかし、結果としてはシナリオ通りにはいかず、大きな損失になってしまいました。


このように大きな失敗はたびたびありますが、その都度できる限り検討した結果で、特に後悔はありません。ただ、「よく自分がわからないこと」に投資をするのは、期待値を正確に導き出すことができないので、やめようと強く思いました。


自分で直接状況を確認したり肌で感じることができて、意見を言ったり自分もネットワークの中である程度リスクをコントロールできるような案件や、通常の私の投資スタイルのように、会社側に改善策などを働きかけられるような案件以外はやるべきではないということを改めて感じました。


質問5【利食いや損切りのルールについて】

【部員】村上さん自身、利食いや損切りについてのルールはありますか?


【村上】私自身についていえば、いくらになったら利食い売りするとか、何%下がったら損切りするとか、そういう目標や基準は設けていません。


ただ、株を買う時に「会社がこういう状態になったらいいな」というイメージはあります。たとえば、たくさん保有している遊休資産をきちんと株主還元に使うか成長のための投資に使うなどして、資本効率の向上に努めるという状態になることです。そうなるとおそらく株は何倍かになっているだろうなというイメージはあります。そして、実際にそういう状態が実現したなと判断できる状況になれば売ります。


損切りについては、自分の投資判断が間違っていたということになれば、価格にかかわらず損切りします。


自分が最も得意とするバリュー株投資については、基本的には損切りは考えていません。その会社が現に優良な資産をたくさん持っているわけで、それが有効活用されるのをアクティビストとしていろいろと会社に働きかけながら待ちます。時間がかかっても、目標とする「上場企業のあるべき姿」になる見込みが高いと思える場合には、一時的に株価が下がっても、損切りはしません。


皆さんの投資でも、当初に考えていた良いイメージが実現できたら利食い売り、投資判断が間違っていることがはっきりして、今後の見込みが立たないのであれば損切り、ということでいいのではないかと思います。



■N高生を「それはあまりにも学習効果がないな……」とバッサリ


質問6【同じような失敗を繰り返すケース】

【部員】同じ銘柄の売買で5回連続損切りになってしまいました……。好きな銘柄なのでつい値動きを見てしまい、株価が上がり始めると「あっ、上がり始めた!」と思って焦って買ってしまうのですが、株価が下がり始めると「やばい、損したくない」と思って売ってしまいます。どうしたらいいでしょうか?


【村上】それはあまりにも学習効果がないな……(笑)。失敗するのは仕方ないけれど、同じような失敗を何度も繰り返すのはいただけないですよね。何で失敗したのかをちゃんと考えて、次の投資に生かさないといけません。


まず、その会社の株をどうして買いたいのかな。今後業績が伸びて株価が上がると考えて投資するなら、もっと落ち着いて、この値段まで下がったら買おうと決めて、買ったら多少株価が上下しても持っている方がいいんじゃないかな、と思います。短期トレードが目的なら話は別だろうけど、その場合であっても、失敗経験を生かして戦略をもう少し工夫しないと。とにかく、どうして失敗したのかをもう少しよく考えてみてください。


質問7【投資するときの精神的な揺れについて】

【部員】儲かるとすごくうれしくなって気が大きくなってしまったり、損した場合には気分が落ち込んで自信がなくなったりと、気持ちがすごく揺れ動いてしまいます。投資家として成功するには常に冷静で感情もあまり出さない方がいいのかなと思うのですが、村上さんは、自分の精神的なコントロールをどのようにしていますか?


【村上】感情を表に出すのは別にかまわないんじゃないかなと思います。無理にポーカーフェイスにすることもないかなと思います。私も結構感情を表に出す方で、上手くいけばうれしくて喜ぶし、上手くいかないときには「チクショー」と思うこともあります。ただ、儲かってもそんなに舞い上がって強気になることはないし、大失敗してもそんなに落ち込むこともありません。


若いときからメンタルは強かったみたいで、失敗すると悔しい気持ちにはなるけれど、落ち込むということはなくて、「どうして失敗したのか」、「次からどうしたらいいか」ということを一生懸命に考えていました。今でもそういう姿勢は変わらないですね。大事なことは、上手くいってもいかなくても、一生懸命に考えることだと思っています。



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村上 世彰(むらかみ・よしあき)

1959年大阪府生まれ。東京大学法学部卒業後、83年通商産業省(現・経済産業省」)に入省。コーポレート・ガバナンスの普及に従事する。のちに独立し、99年ファンド会社を設立。現在はシンガポールに拠点を移して投資を行う。2016年には村上財団を創設し、中高生の金融教育や社会支援にも取り組んでいる。19年角川ドワンゴ学園が運営するN高等学校投資部の特別顧問に就任した。著書に『生涯投資家』(文藝春秋)、『いま君に伝えたいお金の話』(幻冬舎)、『村上世彰、高校生に投資を教える。』(KADOKAWA)など。

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(村上 世彰)

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