転職先の歓迎会で食べ飲みすぎの人の末路

8月13日(月)9時15分 プレジデント社

写真=iStock.com/bee32

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就職、異動、出向、転職……。さまざまな理由で「新しい職場」に移ってきたとき、あなたはどう振る舞うべきか。職場の作法や不文律で損をしない方法を4人のエキスパートに聞いた。前編は「入社・転職・出向」について——。(前編、全2回)

■自信家の人ほど転職先の歓迎会で食べすぎ飲みすぎしゃべりすぎ


会社と仕事になじめない、収入を増やしたい、自分の能力をもっと生かしたいなど、転職の理由は人それぞれ。だが、転職にもそれなりのマナーがある。




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一般に、転職者には「自分を過分に高く評価している方が多い」と、ヘッドハンティングを主業務とするジーニアス社長の三上俊輔氏は言う。それが退職の際にも、新しい会社に入社する際にも災いすることがよくある。


「たとえば、前の会社で後任への引き継ぎが不十分だからと、すでに合意している転職先の入社日を1カ月も先にずらす方がいます。これはよくない。転職先の当人に対する期待値を下げてしまいます」(三上氏)


前の会社で重要な役割を担ってきたとの自負がそうさせる。しかし、転職先からすれば入社日の先送りは約束違反。引き継ぎが終わらないのも、段取りが悪いと映る。その時点で、もうダメ人材だ。


よく言われるように「余人をもって代えがたい人材」など、世の中にそうはいない。転職が決まったのなら、早いところ次の会社へ行ってくれ、というのが、前の会社の本音だ。


一方、同じく人材紹介のアクティベイト社長の海老一宏氏は、転職にあたっては、前の会社、転職先の双方に対する最低限のマナー、わきまえるべき心がけがあると言う。それらを世代別に見ていこう。


大学新卒者の3年目の離職率は3割強。学生気分が抜けきらないまま、転職する20代も少なくない。「その会社が嫌で辞めるにしても、後足で砂をかけるようなマネをしてはいけない」と海老氏は言う。「送別会で会社の悪口や、批判めいたことを口にする方がいます。『辞めるんだから、いいや』と思うのでしょうが、できるだけ好印象を残して去ったほうがいい」。


というのも、その会社で世話になった上司や同僚は、後の大切な人脈となるからだ。人の縁を軽んじて世の中は渡れない。


「会社を去るときは、組織や人へ謝意を述べることに徹する。取引先を含め、とくにお世話になった方には、少額のものでいいですから、感謝の手紙を添えてプレゼントを贈る。それが最低限のマナーです」(海老氏)


感謝の心は、モノに置き換えられる。しかし、言葉を添えなければ気持ちは伝わらない。そこがポイントだという。


一方、転職先では、仕事の出来、不出来ばかりではなく、人柄を見られていることに留意したい。


「自信のある人に多いのですが、歓迎会での食べすぎ、飲みすぎ、しゃべりすぎはちょっと注意したほうがいい。少し抑えたほうが印象は悪くないと思います」(同)



■採用側は転職者から「業務の改善」を期待していない


入社したての新人も含めた20代に最も大切なのは「気遣いとコミュニケーションを学ぶこと」。一生の財産になる、と海老氏は言う。


朝、少し早めに会社へ行き、出社してくる社員一人一人に挨拶すると、会話のきっかけも生まれる。自分のことを話すより、相手のことを聞く姿勢が好感を持たれる。


「言われなくてもレポートを作るといい。上司が嫌がるのは、来て間もない部下が毎日何をしているのかわからないこと。当面は『今日、こういうことを頼まれました』『明日はこういうことをやる予定です』などと書いて“見える化”すれば、上司も安心します」(海老氏)


社会人10年超の30代ともなれば、転職も仕事の力量と経験を買われてのものとなる。近年は、中小企業やベンチャー企業から大企業に転職する20代、30代もいる。新規事業の開発などで、若く特別な技能を持つ人材を求める大企業が増えてきたからだ。


「ただ、中小やベンチャーと違い、大企業では物事が決まるスピードが遅く、そこに戸惑い、不満に思う方も多い」(三上氏)


大切なのはそこに「早くなじむこと」だが、転職前からそれに備えておくといい、と三上氏。


「転職は人生に何度もない。しかし、今いる社内にはたくさんの転職経験者がいるはずです。転職する自分と社内の転職者は、合わせ鏡のようなもの。彼らから、どのように会社になじもうとしてきたか、また何が難しかったか、何をしてもらって助かったかなどを聞いておくのもポイントです」(同)


仕事ができる若手ゆえの落とし穴にはまらぬためにも、それは必要のようだ。


「とかく転職者は、前の会社と転職先を比べ、批判的に見てしまう。転職してすぐ悪いところを指摘するのは、今後の自分の居場所を否定することにもなりますし、そもそも業務の改善など、採用側は期待していません」(海老氏)


採用側の期待は、今ある状況の下で成果を上げること。一方、改善には根拠と時間と、共感してくれる仲間が要る。転職先の内情をろくに知らぬうちに何かを提案しても、通るわけがない。


「基本的なことですが、何をすれば自分の幸福と組織への貢献に繋がるのかを考えることが大切。しかし、キャリアを積んだ人でも、意外にそういう視点を持っていませんね」(同)


転職先のいいところを見ていくクセをつけよう、と海老氏は言う。そこからその会社の社会的な価値も風土も見えてくる。改善の提案は、職場になじみ、上司や周囲の信用を得てからにしたほうがいいだろう。



■40、50代の転職者に多い「何でも聞いてこい」の人


役職付の転職・出向が多い40代、50代の転職でよくあるのは、与えられた役割や裁量権のギャップに戸惑うケースだ。


「たとえば、外資系企業へ転職する場合、もとの日本企業より裁量権が大きくなると思う方が多いのですが、そうでもないのですよ」


と三上氏。


「外資系の本社にとって、日本法人は辺境の支社。社長ですら本社の営業課長か部長格で、本社にお伺いを立てながらの仕事です。権限が明確なので、その範囲内の裁量は自由が利きますが、意外にできることが少ない。それを理解しておく必要があります」(三上氏)


中高年の場合、国内大手から中小企業への転職が大半だが、自分の役割をきちんと理解しないまま頑張りすぎて、そのまま沈没するという“罠”がある。原因は「上から目線のコンサルティング」だ。


「成功・失敗はスタートで決まります。大きい会社から移ってきて、いきなり『教えてやる』『何でも聞いてこい』という態度で臨むと、誰もついてこなくなります。これは、親会社から子会社・関連会社への出向でもよく見られます」(海老氏)


自分をお目付け役か何かとカン違いして、「教えてやっている」という態度に出るケースも。これではうまくいくはずがない。



■「君には大いに期待しているよ」を鵜呑みしない


転職した当人が、「転職先の社長の建前と本音」に気づかない、という失敗パターンもある。「君には大いに期待しているよ」という言葉は、決して「好きにやっていいよ」という意味ではない。


「大企業からオーナー企業への転職の場合、社長の顔色ばかりうかがって動く、いわゆるヒラメ文化が定着している会社も少なくありません。そういう環境で、サラリーマン会社でのキャリアを活かして、何かを変えようと頑張ると、即座に疎んじられます」(三上氏)


「張り切って、これまでにない新規事業を勝手に立ち上げたりする。すると社長は『彼がいなくなったら、この事業はどうなるのか』と不安になる。役職付で経験があっても所詮は新人。そこまでの信用はないのですよ」(海老氏)


このような自滅を招かないためには、あらかじめ採用側が求める役割、与えうる権限や裁量の範囲を明確にしておくことが大切だと三上、海老両氏は口をそろえる。


「60代、定年を機にしての転職で、採用側が最も気にかけるのは、実務ができるかどうかです」と三上氏。コピーを取れない。メールやワープロの文書づくりで部下の手を煩わす……これでは、周囲の負荷が大きくなる。


「もっと困るのは、大企業から中小への転職で、部下に指示するのが仕事だと思っているような方です。大企業は組織として充実していますから、それでも仕事になりえます。しかし、少ない従業員が1人で何役もこなす中小企業では、どうにもならない」(三上氏)


前職との比較や批判、「教えてやる」という上から目線、風土を無視した張り切りすぎ……失敗パターンに共通するのは、謙虚さの欠如であるようだ。


「何事も一期一会と思い、新しい職場では部下に教わる姿勢が大切。一期一会は『場所を選ばず、人を選ばず、時を選ばず』です。これは、転職者の振る舞いとしてすべての世代で共通することです」(海老氏)


そして受け入れる側にも、同様に転職者を思いやる気遣いが必要だ、と海老氏は言う。転職の失敗は、転職者側にのみ原因があるのではない。互いに気持ちよく仕事ができ、力を発揮できる振る舞いと環境づくりを心がけたい。


▼プロからの助言

1:転職先の入社日先送りはNG

2:歓迎会“食べすぎ、飲みすぎ、しゃべりすぎ”に注意

3:20代○自分の仕事を“見える化”せよ

4:社内の転職経験者になじみ方を聞け

5:30代○改善の提案はなじんでから

6:40代○上から目線のコンサルはアウト

7:50代○「社長の建前と本音」に気づけ

8:60代○やるべきは指示より“実務”

9:「オレはお目付け役」のカン違い


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海老一宏(えび・かずひろ)

アクティベイト社長。

1957年生まれ。メーカー・人材紹介会社勤務などを経て2005年独立し現職。200社以上に人材紹介。著書に『40歳からのサバイバル転職成功術』ほか。




三上俊輔

ジーニアス社長。

1983年生まれ。2006年、早稲田大学法学部卒業。ヘッドハンティング業のサーチファーム・ジャパンから11年にジーニアスを分社化・設立し現職。

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(ライター 高橋 盛男 撮影=小原孝博、加々美義人 写真=iStock.com)

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