大ヒット中、ダイハツ「ムーヴ キャンバス」の侮れない「可愛さ」の秘密

8月14日(日)6時0分 JBpress

(桃田 健史:自動車ジャーナリスト)

 ダイハツが2022年7月5日に発売した新型「ムーヴ キャンバス」が発売1カ月で、月販目標台数6500台の4倍となる約2万6000台を受注した。

 こうした人気について、ムーヴ キャンバスの存在をよく知っている人はあまり驚かないだろう。なにせムーヴ キャンバスは数ある新車の中で「唯一無二」の存在だからだ。


どこが「唯一無二」なのか?

 唯一無二 という表現が使われるクルマと言えば、マツダの2シータースポーツカー「ロードスター」、またスズキの軽四輪駆動車「ジムニー」などの名が挙げられるだろう。

 ロードスターとジムニーは、クルマのハンドリングや走行性能を主体とした機能性の特徴が強いため、クルマをあまりよく知らない人にとっても「他にはないクルマ」というイメージを持ちやすいはずだ。

 一方、ムーヴ キャンバスはどこが唯一無二なのかというと、ダイハツが「ストライプス」と呼ぶツートーンボディカラーに起因する「特別にカワイイ車」であるという点だろう。

 軽自動車全体のユーザーは、50代や60代以上の女性が多い。それに対して、ムーヴキャンバスは、ダイハツが若年層と定義する20代から未婚の40代までの女性ユーザーが多い点も、唯一無二の存在だといえるだろう。

 ダイハツによると、初代ムーヴ キャンバスを見て「あのカワイイ車は何?」と、街中を走るムーヴ キャンバスに「ひと目ぼれ」する女性ユーザーがとても多かったという。


ムーヴ キャンバスの「可愛さ」の秘密

 その可愛さはどこから生じているのか。ストライプスボディカラーの影響が大きいとするならば、他のメーカーも同様のボディカラーを導入することで、ムーヴ キャンバスの一人勝ちを阻止することもできたはずだ。

 だが、ムーヴ キャンバスが可愛いのは、ボディ形状も大きな要因となっている。軽自動車市場で主流の、車高がとても高いホンダ「N-BOX」のような軽スーパートールワゴンではなく、それよりやや背が低い軽トールワゴンになっていること、ストライプカラーを含めた全体のデザインのバランスが際立ったということだろう。

 さらに、2016年に初代が登場した当時は、スライドドアはスーパートールワゴンで標準装備されるものであり、軽トールワゴンでの採用はムーヴ キャンバスが唯一無二の存在であった。

 ムーヴ キャンバスの商品企画担当者は、「ムーヴ キャンバスを好む若い女性は、子どもの頃からミニバンに乗っているケースが多いので、スライドドアに対する抵抗感がない」と指摘する。

 また、「自分は運転があまり上手くないと思っているユーザーの場合、軽自動車を駐車場に停める際、スライドドアならば、荷物の出し入れや人の乗り降りでドアの開け閉めをあまり気にする必要がなく、運転に対するストレスが軽減される」というユーザーアンケート調査の結果も示した。


ストライプスの採用には“逆効果”も

 そうした軽トールワゴンにスライドドアを求めるニーズに対応して、スズキも2021年8月に「ワゴンRスマイル」を発売している。

 ただし、ワゴンRスマイルのボディカラーは、ルーフ部分だけを別色にするツートーンカラーを設定しているが、ムーヴキャンバスのようにボディ全体を大胆に塗分ける手法はとっていない。

 ストライプス効果を強く発揮するには、ボディの形状、ヘッドライトやリアコンビネーションライトの意匠など、エクステリアデザインの全体とのマッチングが必要だということだろう。

 ただし、ストライプスを採用することの逆効果もある。 

 新型ムーヴ キャンバスのデザイナーは、「ストライプス(ありきのデザイン)だと“意匠シロ”が減るのも事実」と指摘する。“意匠シロ”とはデザインの自由度を指す。

 ストライプスにすると、ボディ全体が横長のイメージになってしまったり、ストライプスとバランスの良いスライドドアを採用することで車体側面の後部に、スライドドアをガイドする溝が横一直線に組み込まれてしまうなど、デザインの自由度が狭まってしまうというのだ。

 こうしたストライプスに対する課題解決の他にも、新型ムーヴ キャンバスの開発にあたっては、デザイン上の大きな挑戦があった。

 それは、ダイハツが「セオリー」と呼ぶモノトーンカラー(単色)の販売拡大だ。セオリーは「ライフスタイルの中で自分なりのこだわりを持つ」ユーザーを意識したモデルとして新たに設定した。

 初代モデルでもモノトーンカラーの設定はあったが、ベースモデルのような可愛いイメージを持つユーザーが多く、販売が伸びなかったため、様々なオプションを融合した特別仕様車に仕立てることで、モノトーンカラーの販売を支えてきたという。新型では、セオリー独自のインテリアカラーを用いるなど、ストライプスとは別の世界感を持たせることで、新規ユーザーの獲得を目指す。


より静かに、上質になった走行性能

 新型ムーヴ キャンバスを、公道で試乗してみた。ストライプスはノンターボ、セオリーはターボ装着車で、それぞれ前輪駆動車だ。

 インテリアは、初代とはかなり大きくイメージが変わった。担当デザイナーは「お家の空間」というイメージを強調する。

 ストライプスで走り出してみると、自動車開発の基本であるNVH(ノイズ「音」、バイブレーション「振動」、ハーシュネス「路面からの突き上げ」)が圧倒的に改善されていることを実感できた。タントから採用されている新型の車体プラットフォーム「DNGA」がさらに進化した印象だ。

 ただし1点だけ気になったのは、アクセルを大きく踏み込んだ際にCVT(無段変速機)から発生する高周波音だ。この点についてはダイハツ側も十分認識しており、今後の製品改良のポイントになるだろう。

 一方、ターボエンジンを積んだセオリーは、走り味全体が上質化した印象がある。「サスペンションのセッティングは基本的にノンターボと同じ」とダイハツは説明するのだが、ターボエンジンの力強さによって車全体の印象が大きく変わる。

 また、ノンターボとは違うCVTを採用していることで、こちらはCVTからの高周波音が気にならない。ちなみにダイハツによると、ノンターボとターボの販売比率は8対2程度を予想しているという。

 可愛さだけでなく、走行性能が格段に向上した新型ムーヴ キャンバスは、男女を問わず広い世代の支持を得る可能性を感じる。

筆者:桃田 健史

JBpress

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