JT加熱式たばこ 無臭にこだわり続けた開発苦労は報われるか

8月14日(月)7時0分 NEWSポストセブン

JTの加熱式たばこ「Ploom TECH」

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 受動喫煙防止の観点から、煙たがられる一方のスモーカー。だが、そんな肩身の狭い愛煙家の強い味方になりつつあるのが、火を使わず煙も少ない「加熱式たばこ」だ。


 ここわずか1年ほどの間に、従来の紙巻たばこから加熱式に乗り換えた喫煙者が急増。たばこ市場全体に占める加熱式たばこのシェアは15%を超え、2020年には30%になるとの予測もある。


 普及の先駆けとなったのは、米フィリップ・モリスが2016年4月から日本で発売した『IQOS(アイコス)』である。


 同社は専用たばこの葉を燃やさずに電気で高温加熱し、発生した蒸気を吸い込む方式を開発。ニコチンは含有しているものの、燃やさないことで発生する有害性成分の9割削減に成功したと発表。「たばこはやめたくないが、煙で周囲に迷惑もかけたくない」という喫煙者の悩みを見事に解消させた。


 一方、アイコスに負けじとオンラインを主体に販売拡大中なのが、日本たばこ産業(JT)の加熱式たばこ『Ploom TECH(プルーム・テック)』である。


 プルーム・テックはすでに昨年3月より福岡市限定で発売されていたが、注文が殺到。あまりの反響の大きさに生産が追い付かず、一旦販売中止となっていた。そして、ようやく満を持して東京での拡販にこぎつけた。新宿と銀座の大都市ではプルーム・テックが体感できる専門店をオープンさせ、連日、加熱式たばこに興味津々のスモーカーたちで賑わっている。


 それほど注目を浴びるプルーム・テックとはどんなたばこなのか。JTたばこ事業本部の担当者である高橋正尚氏(EPマーケティング部次長)が説明する。


「プルーム・テックは加熱式たばこの括りには入りますが、たばこの葉を直接高温で加熱しているわけではありません。


 カートリッジ内にあるリキッドを熱し、その際に出た蒸気をたばこ葉の詰まった専用カプセルを通して使用する「低温加熱方式」の仕組みになっています。言ってみれば、下から蒸気を通して中の成分だけを抽出するアロマオイルみたいなもの。味わいは水出しコーヒーのイメージといったら分かりやすいかもしれません」


 たばこの葉を直接高温で加熱するアイコスと違い、プルーム・テックは低温加熱方式のため、においの発生を大幅に減少させているのが最大の特徴といえる。JTの調べでは紙巻きたばこの煙のにおいの濃さを100%とすると、プルーム・テックはわずか0.2%以下。実際、高橋氏に目の前で吸ってもらったが、臭覚を研ぎ澄ませてもまったくにおいを感じないレベルだ。


 どうしてそこまで“無臭”にこだわったのか。やはり、非喫煙者への配慮が最大の目的だと高橋氏はいう。


「われわれたばこメーカーとしては、もちろんたばこを吸われる方に支持されることがビジネス上大事ではありますが、『吸う人と吸わない人との共存』を会社ビジョンに掲げてマナー啓発や分煙活動を進めていく中で、たばこを吸われない方から理解を得ることも大事にしています。そのためには、たばこの臭いをいかに抑えるかといった課題には常に取り組んでいます。


 紙巻きたばこから発生するにおいは喫煙者でも気にされる方が多くなりました。髪の毛や衣服ににおいがついたり、壁が汚れたりといった不満から、周りへの配慮でプライベート空間でしかたばこを吸えないといった声まで様々いただきます。そういった意味では、プルーム・テックは双方から認めていただける商品だと自負しています」


 においの解消によって分断されていた喫煙者と非喫煙者のコミュニケーションが徐々に復活しているという。


「紙巻きたばこの喫煙は禁止されているものの、プルーム・テックは使用できるという場所が増えています。


“No SMOKING.Ploom TECH Only”という表示がある外食店では、席を外さなくてもたばこを吸う方と吸われない方が会話ができると好評ですし、自宅でも換気扇下やベランダが喫煙場所だったのが、普通に食卓やソファで吸えることから家族団らんの時間が増えたと喜ばれる方もいました」(高橋氏)


 JTの「煙の少ないたばこ」の開発は今に始まったわけではない。その証拠に、1997年には煙を出さないたばこ『エアーズ』を、2010年には粉末たばこ葉のカートリッジを吸う無煙たばこの『ゼロスタイル・スティックス』、嗅ぎたばこの『スヌース』といった商品も誕生させてきた。


 実は販売中のプルーム・テックも2代目で、初代はアイコスよりも早い2013年に発売。世界8か国でも展開していたが、充電時間の長さやにおいの解消などいくつかの難点があり、改善を重ねてきたという。


 いずれにせよ、アイコスに加え、プルーム・テック、そしてBAT(ブリティッシュ・アメリカン・タバコ)からは『glo(グロー)』と競合する大手3社の加熱式たばこが出揃ったことで、ブームはさらにヒートアップしていくのは間違いない。そこで気になるのは、従来の紙巻きたばこの運命である。


 アイコスを販売するフィリップ・モリスのCEOが、「いずれ、紙巻きたばこの生産をやめる」と発言して大きな話題となったが、このまま加熱式たばこの勢いが止まらなければ、紙巻きが消滅する可能性もある。果たしてJTはどう考えているのか。


「たばこはあくまで嗜好品。ワインでも赤が好きな人がいれば白を好む人もいる。コーヒーでもスペシャリティーしか飲まない人、缶コーヒーを毎日飲む人などさまざまでしょう。


 私たちもお客さんに数ある選択肢の中から選んでいただけるラインアップを増やしていく方針です。よって、紙巻きたばこにおいても解決しなければならない技術は引き続き追求していきます」(高橋氏)


 嗜好品という観点では、いまの加熱式たばこブームには興味深い傾向もある。


 アイコスユーザーが、本体をオシャレなケースに収めたり、カラフルなデコシールを貼ったり、スティックキャップの色を変えたりするなど、自分だけのカスタマイズを楽しんでいるのだ。もちろんプルーム・テックも専用のキャリーケースやキャリーケースのカスタマイズ用ステッカー、マウスピース、プルーム・テック立てかけられるウッドスタンドまで多数のアクセサリーを用意している。


 まるでiPhoneをはじめとするスマホアクセサリーが流行っているのと同じ現象が起きているのだ。「このガジェット感がたまらない」とSNSでカスタマイズした加熱式たばこの写真をアップするユーザーも続出する現象に、JTの高橋氏も驚いている。


「昔からジッポーや灰皿など喫煙具にこだわりを持つコレクターもいましたが、いまのアクセサリー人気はその比ではなく、さらなる普及に向けて大きな可能性を感じます。


 ただ、従来のたばこにはなかった興味を持っていただけることは嬉しい限りですが、将来的には加熱式たばこという新しいカテゴリー自体が健全に成長し、嗜好品として定着させることが第一。もちろん、他社製品とのシェア争いもありますが、まずは業界全体で加熱式たばこを大事に育てていくことが必要だと思います」(高橋氏)


 世は受動喫煙防止の強化から屋内禁煙を徹底する規制案も飛び出しているが、加熱式たばこの扱いをめぐっては宙に浮いている状態だ。


「プルーム・テックは燃焼に伴う煙が発生しないうえに、副流煙が出ませんし、たばこベイパー(たばこ葉由来の成分を含む蒸気)に含まれる健康懸念物質も従来の紙巻きたばこの煙に含まれる量に比べて約99%も低減されています。それでいて紙巻きたばこと同じように規制されていくのは過度だと思います」(高橋氏)


 新しい喫煙文化の幕開けともいえる加熱式たばこ。今後どこまで愛好家を増やすことができるか。


■撮影/内海裕之

NEWSポストセブン

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