自分の存在価値を 問い続ける【後編】

8月15日(木)6時0分 ダイヤモンドオンライン

*前編はこちら


「複眼の仕組み」で選ぶ

画期的な後継指名





 作田さんがオムロンで成し遂げた3つ目の仕事は、2011年の「後継指名」です。当時49歳の山田義仁さんに社長のバトンを託されましたが、その後継者選びのプロセスは画期的でした。

 2006年に、社外取締役を長とする「社長指名諮問委員会」(注3)を設置。5年にわたる選定プロセスを経て、山田さんが選ばれました。その後の経緯を見ると、この仕組みが非常にうまく機能したことがわかります。どのような思いで、こうした公明正大な仕組みをつくられたのですか。


注3)

社長ができるのは、候補者のリストアップのみ。決定は指名委員会にあり、社長に投票権はない。現職社長による恣意的な後継指名が起こらない仕組みになっている。




 公明正大な仕組みをつくろうとしたわけではなく、「できる限りベストの人を選びたい」という強い思いだけがありました。人選についてもダイバーシティを持って臨むべきだと考えていましたし、そのプロセスをシステム化してほしかったのです。

 というのも私が後継指名された時は、よい悪いは別にして、「何で私なのか」という納得感がなかったからです。当時、義雄社長のほかにも立石家の人たちは社内にいましたし、私よりももっと見識も実力のある先輩もいました。ところが、ふたを開けてみたら私になってしまい、私自身も周りの人間も何がなんだかよくわからない状況でした。

 そんな経験から、社長の仕事をこなす中で、後継者についても自然と考えるようになりました。その結果、後継指名の要件は大きく2つあるとわかりました。

 一つは、こういう人が望ましいという「社長という役割に求められる普遍的なもの」です。そしてもう一つは、「会社が置かれている状況によって変わるもの」です。

 後者については、その会社にとっていま必要なのは、防御なのか攻撃なのか、事業ドメイン拡大なのか運営改革なのか、そうした状況に応じて、後継者の人選も大きく変わってきます。それをできるだけ客観的に、かつ多様性を持って見ることができる「複眼の仕組み」がいると考えました。

 そこで、当時社外取締役だった冨山和彦さんに相談したところ、「それは非常にいいアイデアだ」と賛同いただきました。最終的には、冨山さんを含む社外取締役2人と、社内取締役2人による計4人で指名委員会が組織され、そこで投票が行われて後継者を決定する形になりました。

 なお、社長である私にその投票権はなく、できるのは候補者のリストアップだけ。当然、その選定理由も客観的に明示しなければなりませんし、指名委員会から別の候補者が追加されることもあります。

 この仕組みが実際に動いたのは、私が社長を務めた最後の2年です。それ以前の3年間はどういう仕組みがいいかを社内で徹底的に議論し、他社の事例も研究したうえで、時間をかけて後継指名の制度をみんなでつくり上げていったのです。


 後継者となった山田さんは、当時から光っていたのですか。

 私は制御機器事業出身で、山田さんはヘルスケア事業出身。しかも17歳も年が離れていれば、お互い名前も知らないということはよくあります。ただ、彼はオムロンヘルスケアのアメリカ社長とヨーロッパ社長を歴任していたので面識はありましたが、そんなに親しくはなかった。でも、彼を候補者リストに入れた大きな理由の一つは、やはり若かったからです。

 また、彼が今後のオムロンに不可欠な汎用品事業、つまりB2Cを知っていたことも大きかった。ちなみにオムロンの本流は制御機器というFA(Factory Automation)分野であり、言わばB2Bが中心です。でも世の中の商売の流れは変わってきました。ハードもソフトもB2Cへの潮流が生まれていたのです。もちろん既存のB2B事業を守ることは重要ですが、それだけではグローバルに大きくなれない。そこで、次世代のトップにはB2Cが肌でわかっている人が必要だと考えました。その点、山田さんは入社した時からB2C中心のヘルスケア畑で育っていましたし、海外赴任も経験する中でグローバルなビジネス感覚も持っていました。

 ただし、B2Cに強い人を社長に選んだからといって、会社全体がそちらへ一気に舵を切るわけではありません。むしろ肝心なのは、そのトップがどういう布陣でマネジメントチームをつくるかということ。そのマネジメントチームのダイバーシティを担保するうえでも、トップがどれだけ時代の変化に則したビジネス経験を持っているか——これが、後継者選びにおいて最も重要なポイントだったと思います。


 山田さんは、以前本誌でインタビューをした際に、「作田さんが動きやすいチームをつくれる環境を用意してくれた」と感謝していました。

 指名委員会も49歳という彼の若さを評価していましたし、だったら彼がつくるマネジメントチームも若いほうがいいだろうと考え、ちょっと荒っぽかったかもしれませんが、3年くらいかけて取締役や執行役員の4分の1を50歳以下にすべく、若い人をどんどん登用しました。

 ただし、私は山田さんにこう言いました。「あなたもそうだが、けっして若さにあぐらをかいてはいけない。若い人を抜擢することはよい面もあるが、悪い面もある」と。経営陣を若返らせることは企業変革の大きなドライブにはなりえますが、半面、その世代が居座ってしまったら次の世代がなかなか上がってこられず、頭打ちになるリスクもあるからです。

 だから、もしその弊害が出てきた時には、思い切って退任させる必要がある。退任させると言うと聞こえが悪ければ、「1軍と2軍の入れ替え」と考えればいい。たとえ2軍へ行ったとしても、そこで再び成果を出せば、また1軍に引き戻せばいいのです。

 若さにあぐらをかいたらもう若くはない——このことを肝に銘じたうえで、社長はダイナミズムとダイバーシティでやっていかないといけない。そういう時代なのです。





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