「昼の1時間休憩」より効果的…精神科医が勧める"いっぱいいっぱい"にならない休み方のコツ

2024年8月15日(木)8時15分 プレジデント社

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/mapo

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元気に働き続けるためには何が必要なのか。精神科医のTomyさんは「すべてにおいて完璧を目指そうと頑張りすぎるとパフォーマンスは下がる。気持ちに余裕を持つためにも、こまめに休憩を挟みながら働いたほうがいい」という——。

※本稿は、精神科医Tomy『精神科医Tomyのほどほど力 全力投球は、もう卒業よ』(だいわ文庫)の一部を再編集したものです。


写真=iStock.com/mapo
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■いっぱいいっぱいの状態はフリーズ寸前のパソコンと同じ


ほどほど力をうまく発揮できない人は、何事も完璧主義に、自分のベストを目指して頑張ってしまいます。その結果として気がつけば「いっぱいいっぱい」になってしまいます。では「いっぱいいっぱい」になるとどんな現象が起きるのでしょうか。


この「いっぱいいっぱい」というのは、言い方を換えると、脳のキャパがないということです。この状態をアテクシはよくパソコンにたとえています。パソコンにたくさんのタスクを行わせると、本体が熱くなり、動きが悪くなります。場合によってはフリーズして再起動が必要になってしまいます。


これはパソコンのメモリがいっぱいいっぱいになっているからです。どんなパソコンでもメモリには限界があり、これを超えてタスクを行わせるとフリーズするわけです。「いっぱいいっぱい」の人はこれとよく似ています。たくさんのアプリを立ち上げたり、作業させたりするなどして、フリーズする手前までパソコンを動かしているようなものです。


すると何が起きるでしょうか? 何か必要な作業が出てきても、もう何もすることができません。さらに常にメモリがいっぱいなので、動きも悪くなります。具体的にはいつも何かに急かされているような感じがして、常に何かの考えごとが頭から離れません。


つまり気持ちに余裕がなくなるだけではなく、アナタの本来のパフォーマンスが発揮できないことになります。それどころか、場合によってはうつ病など健康を害する可能性すらあります。


■「なんとかなる」と思ってるうちから体にはサインが出る


では、この「いっぱいいっぱい」な状態をどう察知すればいいのでしょうか。人は好んでいっぱいいっぱいになるわけではありません。やらなければいけないことを処理しているうちに、気がつけばいっぱいいっぱいになってしまっているのです。そのときは「なんとかなるだろう」ぐらいにしか思っていないこともあるのです。


実は「いっぱいいっぱい」にはいくつかのサインがあります。それを察知できれば、事態が深刻化する前に対処することができます。そのサインをいくつかご紹介したいと思います。


(1)感情がネガティブになりやすい

いっぱいいっぱいになると、視野が狭くなります。全体的に物事を見通して把握する余裕がなくなります。すると、漠然とした不安が漂うようになることがあります。また、元気なときには気にならなかった小さなことが気になるようになります。


そしてそれを悪いほう、悪いほうに考えやすくなります。自分にも自信が持てなくなるようになります。「なんとかなるだろう」という気持ちが以前よりぐっと減ってきたら、「いっぱいいっぱい」のサインです。


(2)ぼーっとしたり、物忘れをしたりする

「いっぱいいっぱい」になると、脳の機能のキャパが限界に近づいています。すると、何も考えられなくなって、気がつけばぼーっとしていたり、普段はしないような物忘れが起きたりします。普段起こさないようなミスも起きたりします。


(3)体の症状が出やすくなる

体のだるさが出たり、頭痛、消化器の症状が出やすくなったりするなどの症状も出ることがあります。それぞれ個人の起きやすい症状があれば、それが強く出やすくなります。たとえば頭痛持ちであれば頭痛が頻回に起きるようになるなどです。


■精神科の診察で必ず聞くのは「睡眠と食欲」


(4)睡眠・食欲が不安定になる

実は精神科の診察で、どんな病気であっても重視することが睡眠と食欲です。精神的な不調は睡眠の不安定さや食欲の低下、あるいは過食などにつながります。精神科では「日常生活に支障が出ていないかどうか」が大切なポイントですから、日常生活の基本のキである睡眠と食事は特に重要視されるのです。


睡眠の不調は様々な形で出ます。通常の状態では、疲れていたら純粋によく眠れるはずです。しかし「いっぱいいっぱい」になるとこうはうまくいきません。疲れているはずなのに、なんだか色々考えて寝つけない。寝ついたとしても変な時間に起きてしまう。なんだか眠りが浅くてしっかり寝た感じがしない。


こういった現象が起きはじめたら、「いっぱいいっぱい」、しかもかなりシビアな状況になっていると考えていいと思います。


また食欲が不安定になることもあります。普通に食べているつもりなのに、気がついたら痩せてきている。あまりおなかが空くと感じなくなってきた。なんとなく吐き気がして食べられない。こんな感じに「食べられない」症状がでてくることもありますが、逆もあります。


妙におなかが空いてついつい過食するようになった。食べることに逃げるようになった。体重が急激に増えてきた。お酒を飲む人なら、飲酒量が増えてくるのも「いっぱいいっぱい」になると見られることです。


■1時間に数分、情報を遮断して休憩する


「いっぱいいっぱい」になったときの対応は、もちろん仕事や勉強などの作業量を減らして余裕をつくることです。しかし、それができればいいのですが、簡単にはできないこともあるでしょう。締め切り間近だったり、テスト期間中だったり、そんなに簡単にやることを減らせない時期もあるでしょう。ではそんなときは一体どうすればよいのでしょうか。


写真=iStock.com/years
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/years

一番簡単な方法は、こまめに休憩をとる方法です。一時間にほんの数分でもいいので、休憩をとる。その休憩のコツですが「情報を遮断する」ことを意識してみてください。


脳はたくさんの作業を行っていますが、その方法は脳に入ってくる情報の処理です。これが多くなりすぎることで「いっぱいいっぱい」の弊害が起きてくるわけです。そんなときは、脳に入ってくる情報を遮断すればいいのです。


なぜこまめにとるかというと、脳は作業の量の多さより、作業量の密度の高さで疲弊します。またパソコンの例を出して恐縮ですが、たとえば動画の処理、インターネットサーフィン、音楽再生など複数の仕事を同時にさせるとフリーズしやすくなります。でも、一つずつの作業を別々に行えば、同じ作業量をさせてもフリーズはしにくくなります。


■目を閉じるだけでも脳への負担は減らせる


これと同じことが脳にも言えます。たくさんの処理を同時にさせないことが大事です。3時間集中して1時間休憩するよりも、30分集中して1〜2分でも頭を休ませたほうがよっぽどいいわけです。


具体的な方法としては、たとえば「目を閉じる」。視覚からは数多くの情報が入ってきます。ただ見ているだけでも、脳は疲労するのです。


たとえば断捨離やミニマリズムが流行りはじめてもう久しいですが、実はこの効能はモノを減らして無駄なコストや肩の荷を下ろすということだけではありません。視覚的にも無駄なもののない部屋というのは情報が少なく、脳への負担が少ないというメリットもあるのです。


この情報を遮断するという一番手っ取り早い方法は目を閉じることです。なぜ瞼があるのか、なぜ寝るときは目を閉じるのか。アテクシはその専門ではないのでエビデンスはここでは提示しませんが、脳への情報量をカットして脳を休ませる意味もあるはずです。


というわけで、ちょっとしたタイミングで、こまめに1分でも2分でもいいから目を閉じる。意外とこれが効果があります。


他にも音という情報を遮断するのもアリです。作業する場所を図書館にする。業務に支障がなければ耳栓をする、という方法をとってみてもいいと思います。


■「追い込み時期だから」とぶっ続けで作業するのは逆効果


今まで書いてきたような方法を駆使しても、どうしても追い込まれるときはあります。たとえば受験前夜や、締め切り直前、緊急事態の仕事が発生したときなどです。



精神科医Tomy『精神科医Tomyのほどほど力 全力投球は、もう卒業よ』(だいわ文庫)

こういうときは1秒でも惜しんで物事に取り組みがちですが、実はそれは間違っています。人間はどんなにピンチでも、何時間も集中し続けることはできないからです。


ロボットではないので、駆動時間めいっぱいの作業は無理です。どんなに頑張ろうとしても無理です。それを時間がないからといってやっても、実際には途中で動けなくなっています。


それぐらいなら、むしろ積極的に休みを入れたほうが良いのです。人間の集中できる時間は頑張っても30分から1時間ぐらいなので、50分やって10分休むというようにしたほうがいいでしょう。


たとえば小学生のときの授業を思い出してください。たいてい40分〜50分授業があったら、10分の休憩時間があったと思います。あんな感じです。


そしてその間は体を動かすのもおすすめです。激しい運動などは必要ありません。散歩してぶらっと回るとか、軽く体操するとかそんなレベルでいいのです。体を動かすことで、頭を休め気分転換を行うことができます。


アテクシが試験前によくやっていた方法は、50分に一回休みを入れて、「近くのコンビニまで行ってコーヒーを買う」などの変化をつけることでした。その小さな「ご褒美」によって、むしろ作業効率は上がるのです。


ですから忙しいときほど、強制的に小休憩を入れてください。これはむしろ必要なことなのです。


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Tomy(とみー)
精神科医
1978年生まれ。某国立大学医学部卒業後、医師免許取得。ゲイである自分に何か答えをくれるかもしれないと精神科医局への入局を決意。精神科病院勤務を経て、現在はクリニックの常勤医。『精神科医Tomyが教える 1秒で不安が吹き飛ぶ言葉』(ダイヤモンド社)、『失恋、離婚、死別の処方箋 別れに苦しむ、あなたへ。』(CCCメディアハウス)など著書多数。
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(精神科医 Tomy)

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