ドン・キホーテも秋波送る西友 買い手の有力候補はどこか

8月15日(水)7時0分 NEWSポストセブン

ウォルマート流経営が破たん間近の西友

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 およそ1か月前、総合スーパーの西友を傘下に収める米ウォルマートが「西友売却の意向」と報じられると、有力売却先は?、流通再編か? と大きな話題を呼んだ。


 現状、ウォルマート側はこの報道を否定し、「どの企業とも売却交渉はしておらず、日本での事業を継続していく」とのコメントを発表したまま大きな動きは見られない。だが、西友売却は規定路線だという見方は強い。


「そもそもウォルマートは西友を皮切りに日本の小売業を次々と買収して事業規模を拡大させる戦略を掲げていましたが、思うように進んでいない。西友単体は大規模なリストラやウォルマートとのシステム統合などによる経費削減で収支はトントンだが、ウォルマートにとってはまったく物足りない数字。遅かれ早かれ売却の憂き目にあうのは間違いない」(流通業界関係者)


 2008年時点で、西友の売り上げは約8000億円。昨年の2017年12月期は約7000億円だった模様で、10年で1000億円売り上げを落とした計算だ。これではいくら利益があがってもウォルマートの意向には沿えない。


 そんな中、8月13日に行われた、ディスカウントストア、ドン・キホーテの決算(2018年6月期)&事業戦略説明会で注目すべき発言が飛び出した。


 ドンキホーテホールディングス(HD)の大原孝治社長が質疑応答の中で、「西友が売却されるかもしれないことに対してどう思うか」との問いに、「マスコミ報道通りで、もし本当に売却があるのなら」と前置きしたうえで「興味はある」と明言したのだ。


 さらに、「不動産がなければ小売業は成り立たず、(西友には)いまでは手に入らないような立地が多数あり、(売却ならば)細かく精査したい」と踏み込んだ発言までした。この手の質問には「仮定の話にはお答えできない」と煙に巻く回答をするケースが多いだけに余計、ドンキホーテHDの“本気度”が窺えた。


 同社が前向きなのは、西友のような総合スーパー(以下GMS)や食品スーパー(以下SM)との関わりの実績値があったからだろう。



 まず2007年に長崎屋を買収し、一定数の店舗を「MEGAドン・キホーテ」の業態に転換している。さらに2017の8月にはユニー・ファミリーマートホールディングスとの提携を発表し、ユニーに40%出資している。


 その後、ユニー6店舗を「MEGAドン・キホーテUNY」に転換し、業態転換前に比べて売り上げで90%増、客数で70%増、粗利で60%増を記録し、「長崎屋では1店あたり3回も4回も改装を重ねて手探りだったが、ユニーの転換店は長崎屋よりもはるかに手応えを感じている」(大原氏)と自信を示した。その勢いもあり、2019年は20店、ユニーの店から「MEGAドン・キホーテUNY」に転換するという。


 さらに今年6月からは、3店舗ながらドン・キホーテとファミリーマートのコラボ店も実施し、「右肩下がりのGMSと、過剰競合で頭打ち感のあるコンビニだが、この流通で2大勢力のGMSとコンビニを、当社が同時にソリューションすることができれば、流通ナンバーワンかリーディングカンパニーになれる可能性がある」(同)ともしていた。


 西友は20年前の1998年、西武百貨店がディベロッパーであるグループの西洋環境開発の負の遺産処理に追われたのと同様、やはりノンバンクの東京シティファイナンスの負の遺産に苦しみ、ファミリーマートや良品計画、インターコンチネンタルホテルチェーンを相次いでこの年に売却。西友本体には2000年、住友商事が11.83%出資した。


 住商にも食品スーパーの「サミット」があり、西友と組んで首都圏でのSM戦略を一気に拡大するもくろみだったが頓挫。その住商の仲介で2002年、ウォルマートの資本が西友に入り、2005年には子会社化、さらに10年前の2008年、完全子会社化で上場廃止となった(西友は合同会社となったが2015年、株式会社に再度変更)。


 現在、西友の店舗は約340店あるが、旧セゾングループの中核だったため、歴史的に西武鉄道沿線、それも駅前の好立地店(ただし老朽化した店舗が多い)が多い。また、かつて伊藤忠商事と西武百貨店が合弁でマイマートを設立して中央線沿線に出店、後に西友がマイマートを吸収合併したため、中央沿線にも西友の店舗はかなりある。


 都道府県別で最も西友の店舗が多いのは東京都で78店(8月中旬時点。以下同)。首都圏では埼玉県26店、神奈川県21店、千葉県13店と続く。ほかでは宮城県で18店、愛知県で15店あるが、それ以外のエリアは一桁の店舗数だ。例外として、長野県は43店とかなり多いが、これは過去に地場スーパーと提携したり合併したことも効いているようだ。


 そう考えると西友は圧倒的に東京に多く、前述したように老朽化してはいるが駅前立地も多い。それが、大原社長の「いまでは手に入らないような立地が多数ある」との発言になり、魅力的に映っているのだろう。



 問題は、ウォルマートが本当に西友を売却するのかという点だ。


 西友の想定売却額が3000億円から5000億円とも目されているためか、ドン・キホーテ決算の質疑応答の際、「優良店舗だけ切り売りした場合ならば魅力があるのか」との問いもあった。


 対して大原氏は、「そんなおいしい話があればぜひ、ご仲介いただきたい」と会場の笑いを誘っていた。本音を言えば首都圏プラス、中京、関西の3大都市圏ぐらいに限定したいだろう。


 もちろん、仮に売却となれば候補はドンキホーテHDだけではない。流通アナリストでプリモリサーチジャパン代表の鈴木孝之氏はこう推測する。


「売却先は流通業だけとは限りません。例えば、西友は今年1月にウォルマートを通じて楽天とネットスーパーを共同で始めるべく提携しているので、楽天は有力候補といえます。その他、ネット系ではアリババなど中国勢にも可能性はあるでしょう。イオンやセブン&アイHDなどの大手小売業は、リアル店舗をこれ以上抱えこむよりもネット戦略を強化している途上ですしね。


 もう1つの可能性は、外資系などの投資ファンドがいったん買収し、収益が上がって再上場などの出口戦略が整えば、どこかに再び売却するシナリオです。その際、“ウルトラC”として世界の小売業を侵食するアマゾンが買い手として登場することだってあり得ない話ではないでしょう」



 いずれにせよ、現在の勢いからいえば、ドンキホーテHDが西友売却先の最有力候補に浮上しても不思議はない。何しろ29期連続増収増益を前期で達成し、2020年をターゲットにしていた売り上げ1兆円の大台も、1年前倒しで来年の2019年6月期に到達する見込みだ。


 大原氏は、「将来的には売り上げは2兆円を目指したいし、売り上げ以上に重視しているのが営業利益で、営業利益では1000億円をターゲットにしたい」としていた。前期は売り上げが9415億円、営業利益が515億円、今期は売り上げ1兆円、営業利益で530億円を見込んでいる。


 となると、2兆円と1000億円の目標はいまの倍。最高益を更新し、訪日外国人による免税品売り上げも絶好調で、小売業の中で快進撃が続くドン・キホーテではあるが、売り上げと営業利益を倍にするのは、オーガニックな自力成長だけでは一気には難しい。


 そこで大型のM&A、具体的にはもし西友を買収することができれば、単純合算の計算上は、グッと目標に近づくことになる。


 ウォルマート傘下でエブリデイ・ロー・プライスを標榜したものの目下、同業他社のGMS同様に苦戦する西友だが、「ほかのスーパーに比べて、西友は食品で安いものが多くて助かるけど、といって安かろう悪かろうでもない。プライベートブランドの『みなさまのお墨付き』シリーズでは、かなりいいものもある」とは、あるシニア世代の主婦の声。


 ここ数年、小売業界の中で飛躍的に存在感を上げてきたドン・キホーテの、“西友買収”の野心は果たして実現するのか——。


●文/河野圭祐(ジャーナリスト)

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