クルマのネタ枯れで崖っぷちの東京モーターショー

8月16日(金)6時0分 JBpress

2017年に東京ビッグサイトで開催された第45回東京モーターショー(筆者撮影、以下同)

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(桃田 健史:自動車ジャーナリスト)

 2019年7月30日、日本自動車工業会は第46回東京モーターショー(2019年10月24日〜11月4日)の開催概要を発表した。その内容を見て、多くの自動車業界関係者が「噂では聞いていたが、まさかここまで大きく変わってしまうとは・・・」とため息をついた。

 開催テーマは「OPEN FUTURE」。「開催地も、お客様も、出展者も、すべてを”オープン”にして”未来”を届ける。それが、クルマ業界だけではなく、様々な業種や領域と手を取り合って、”人々がワクワクする未来”を提示すること」と定義している。

 開催地はこれまで通りの東京湾岸地域なのだが、有明エリアと青海エリアに分散し、その間を約1.5キロメートルの屋外通路であるオープンロードで結ぶ。オープンロードや青海エリアとなるトヨタの大型施設メガウェブなどは入場が無料となる。有料(前売り1800円、当日2000円)となるのは、東京ビッグサイト西展示棟・南展示棟、および青海展示棟である。

 有明エリアと青海エリアとの移動は、東京新臨海交通「ゆりかもめ」と無料シャトルバスを使うという、東京モーターショー史上初となる、会場を分散しての開催である。

 エリア分散型となった理由は、これまでショーの主要会場だった東京ビッグサイト・東展示棟が2020年東京オリンピック・パラリンピックのメディアセンター等の施設に改修され、その分を他の地域へ割り振らなければならなかったからだ。

 筆者は、2回前の東京モーターショーが開催された2015年に主催関係者らからこの状況を伝えられ、2019年開催ショーの初期検討案に対して意見を述べている。だが、その後、世界の自動車産業に空前の大変化が起き、東京モーターショー2019を取り巻く環境にも大きな影響が及ぶことを当時は予測できなかった。


クルマに対する価値観が大きく変化

 自動車産業の大変化の要因はいくつかある。

 まず、自動運転の実用化に向け、法整備や損害保険への対応などが一気に加速したこと。

 また、EV(電気自動車)では、中国がメーカーに対して販売台数を事実上義務化する新エネルギー車(NEV)規制を本格的に開始したことで、EV関連の開発が中国中心に大きくシフトした。

 さらに、米ウーバーやリフト、そして中国のディディなど自家用車で旅客運送するライドシェアリングが世界各地で一気に普及し、クルマの「所有から共有」という認識が若い世代を中心に広まったことも挙げられる。

 こうした様々な変化によって、人々のクルマに対する価値観も一気に変化しつつある。つまり、社会におけるクルマのあり方が大きく変わってきているのだ。そのため、人とクルマが出会う場であるモーターショーのあり方も当然、変わる。


モーターショーを取り巻く状況が一気に崩れた

 そうしたモーターショーの変化について、世界各地のモーターショー主催者は薄々感づいてはいたが、ここ数年での大変化を予測できた関係者はほとんどいない。状況が一気に崩れた。そんな印象がある。

 過去数年のモーターショーの変化を振り返ってみると、まず2018年9月の仏パリモーターショーで、出展者が急減して展示スペースも縮小。自動車大国のアメリカでは、北米国際自動車ショー(通称「デトロイトショー」)が2019年1月開催をもって事実上の終了となり、2020年は6月に音楽ライブイベントなどを併催する新規事業として生まれ変わる予定だ。さらに、2019年9月に開催される独フランクフルトショーでは、地元ドイツ大手以外の報道陣向け新車発表はほとんどなく、代わって参加費7万円の国際会議を主体としたイベントへと様変わりする。

 こうした世界市場での変化は今回の東京モーターショーにも影響を与えており、海外メーカーの出展はルノーとメルセデス/スマートのみというきわめて寂しい状況だ。

 東京オリンピック・パラリンピックの影響で展示会場が分散化したから自動車メーカーの出展者が減少したわけではない。原因は、世界各地で一気に加速している「社会におけるクルマのあり方の変化」にある。


最大の原因は「クルマのネタ枯れ」

 もう一歩踏み込んで、世界各地のモーターショー衰退の原因を考えると、自動車産業界にとって極めて重大な課題が浮き彫りになる。

 それは、クルマという商品のネタ枯れだ。

 セダンが飽きられてきた昨今、コンパクトカーからイタリアンスーパーカーまでSUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)のオンパレードである。衝突安全への対応からボディはどれもポッチャリし、ヘッドライドはつり目のようなデザインばかり。自動車業界では「クルマは見た目が100%」と言われることが多いが、最近では「ぱっと見はどのメーカーのクルマも同じ」といった雰囲気にユーザーも慣れてきた。また、コスト削減から、EVを筆頭として車体や動力系パーツの共通化が進み、走行性能の差別化も難しくなった。

 そのため、自動車メーカーの企画・設計・開発・デザインの各部門では、クリエイティビティより法規制対応などに費やす時間が圧倒的に増えている。各メーカー関係者から「毎日忙しいのだが、とても生産的とはいえない」「自分の仕事の出口が見えない」といった声を聞くことも多い。

 こうした状況を一言でまとめると「クルマのネタ枯れ」だ。クルマという商品が世に出てから百十余年。そろそろネタが尽きるのは当然のことかもしれない。

 過去数十年間にわたり、世界各地のモーターショーを取材してきた筆者自身、モーターショーというイベントに魅力を感じなくなり、クルマという商品に対する考え方も大きく変わってきた。

 東京モーターショーは現在、2年に一度の隔年開催。東京オリンピック・パラリンピックの翌年の2021年に開催される第47回東京モーターショーがどのような形になるのか? もっといえば、本当に開催できるのか? 現時点ではまったく予想がつかない。

筆者:桃田 健史

JBpress

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