IoTカメラ、AI、スマホでテナントの集客を支援

8月17日(金)6時0分 JBpress

 商業ビル大手のパルコが力を注いでいるのが最先端のデジタルテクノロジーの積極活用だ。同社は中期経営計画の柱のひとつとして「独自の先行的ICT活用」を掲げ、スマートスピーカー、IoTカメラ、AI(人工知能)、スマホアプリなどを出店企業への送客に役立てようとしている。

 2018年4月、東京・池袋にある「池袋PARCO」では、米アマゾン・ドット・コムのスマートスピーカーAmazon Echoを活用した対話型の館内案内サービスを開始した。入口やエスカレーターの付近など10カ所に設置したAmazon Echoで、館内のショップやレストラン、取扱商品の情報を提供する。「子供服はどこで取り扱っていますか?」と顧客が聞くと、Amazon Echoが「5階、XXXXで子供用の洋服の取り扱いがございます」と音声でショップ(テナント)を案内する。同時に、スマートスピーカーに併設したタブレット端末の画面に当該フロアのマップを表示するといった具合だ(図1)。

(* 配信先のサイトでこの記事をお読みの方はこちらで本記事の図表をご覧いただけます。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/53826)

 館内案内については、それ以前の2017年10月から11月にも別のシステムを試験導入している。東京都立産業技術研究センターや日本ユニシスと共同開発したコミュニケーションロボット「Siriusbot(シリウスボット)」を、池袋PARCOを含む複数のファッションビルに設置して、各ビルで1〜2週間、音声による館内案内などへの応用の可能性を探ったことがある(写真1)。

 シリウスボットは自走式であるため、顧客が要望すれば、シリウスボットが目的のショップまで顧客を誘導した。加えて、閉店後にシリウスボットが店内をまわり、商品に取り付けたRFIDタグ(無線ICタグ)の情報を読み取ることで、売り場の在庫集計や棚卸などショップ店員の作業を手伝った。


購入しなかった客を含めて来客数と属性を捉える

 パルコの取り組みの中でも、とりわけ興味深いのが、IoT(モノのインターネット)と人工知能(AI)を活用した来店客の解析システムである。2017年11月に東京・上野に新規オープンした「PARCO_ya(パルコヤ)」のほぼ全館で本格利用を始めている。館内の買い回り促進や購入単価の向上を図ることで、入居するテナントの活性化につなげる狙いがある。

 パルコヤに入居するテナントの約9割、60店にカメラを設置。撮影した画像を基に、ベンチャー企業のABEJAが開発したAIプラットフォーム「ABEJA Platform for Retail」でテナントごとの来客数や顧客の属性を解析する。結果は集計して各テナントに提供している。なお、解析後に画像はすべて破棄している。

 カメラは2種類。一つは、来客数を計測する「カウントカメラ」である。ビル内店舗のため店への入口は複数ある。その入口に向けた複数台のカメラで来店客を撮影し、画像をクラウドにリアルタイムで送信して、何人が入店したかをカウントする。

 もう一つは、どのような顧客が来店したかを判定する「属性推定カメラ」である。これは店内を広く見渡せる位置に1台設置している。カウントカメラと同じくリアルタイムでクラウドに画像を送信すると、AIが来店客の顔の画像を解析して性別と年齢を割り出す(写真2)。

 カウントや解析の結果は1時間ごとに集計してテナントごとに用意したWeb画面(ダッシュボード)に反映する。各テナントは自店の来客数と来店客の属性を時系列で確認できる(図2)。

 最大の特徴は、商品を購入せずに店を出た人を含め、店舗に入った人数、性別、年齢(推定)を把握できる点である。POS(販売時点情報管理)レジやメンバーカードだけでは、商品を購入した顧客しか把握できないので、この点が違う。


来店数やその属性に基づく店舗運営が可能に

 パルコヤに入居するテナントにとって、これまで“見えなかった”自店の状況を定量的なデータで把握できる利点は大きい。例えば、来店客の人数が多くなる時間帯に合わせて店員を適切に増やす勤務シフトを組むことができる。また、来店客の年齢層の傾向を時間帯別に捉えられれば、入口付近の目立つ場所に配置する商品を年齢層に合わせたものに入れ替える、といった工夫を講じられる。

 あるテナントでは昼間の時間帯は30歳代の女性客が多く、夕方になると年齢層が明らかに低くなる傾向が判明した。そこで店舗の前面に配置する商品を、夕方になって低い年齢層に合わせたものに変えた。すると、その商品に興味を持った何人かが店内に入り、商品の購入に結び付いたという。

 もっとも、ダッシュボードの情報を効果的に利用しているテナントの数は、まだ少ないのが現状だ。多くのテナントは少人数で運営しており、接客から納品・検品、棚卸など目の前の作業に追われて余裕がないこともある。だが、そもそもテナントにデータを生かすためのノウハウがないという要因もあるとみられる。

 そのためパルコは単にデータを提供するだけでなく、月1回テナントの責任者が集まる会合で「成功体験や効果的な使い方などデータ活用の知見を共有している」(グループICT戦略室の野中健次業務部長)。さらに、一部のテナントとABEJAと協働でデータ活用の実証を行って成功例を生み出し、それを館内の全テナントに横展開してデータ活用の機運を高める準備も進めている。


顧客情報に基づくレコメンド機能をリアル店舗で実現へ

 IoTカメラやAIを矢継ぎ早に取り込んできたパルコだが、旗艦店である渋谷PARCOが新装オープンする2019年秋にむけ、デジタルテクノロジーの活用を加速させる考えだ。「パルコに出店したいと考えてもらうためには、時代の流れに合ったテクノロジーをどんどん取り入れて、新たな仕組みとサービスを次々に整えていかないとならない」と野中業務部長は話す。

 具体的には、パルコは今後、100万件近いダウンロード実績がある同社のスマートフォンアプリ「POCKET PARCO」と、来店客解析システムのデータを連動させた、新たな仕組みを構築する計画である。POCKET PARCOに顔写真を登録してもらい、特徴量を抽出したうえで来店客解析システムのデータと紐づける。こうすることで、パルコヤを訪れた個別の顧客の足取りを把握できるようにする考えだ。

 実現すれば、これまでリアルの店舗では難しかったが、ネット通販サイトが当たり前のように実装している機能を実現する道が見えてくる。顧客のサイト閲覧履歴や購入履歴に基づくレコメンド機能である。パルコヤの来店客の足取りから一人ひとりの嗜好に合わせたキャンペーン情報などをPOCKET PARCOを通じて配信すれば、購入単価の向上や買い回りの促進が期待できる。

筆者:栗原 雅

JBpress

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