超人気サバをアフリカへ大量輸出するワケ

8月17日(金)9時15分 プレジデント社

日本では空前のサバブームとなっている。「サバ缶が手に入らない」という声も聞かれるが、その事態はややこしい。日本は食用サバの5割をノルウェーから輸入している。その一方、水揚げしたサバの約半分を輸出している。輸出先の6割はアフリカだ。つまり日本は大きくて高価なサバを輸入し、小さくて安いサバを輸出しているのだ。輸出したサバはアフリカの貧しい人々のタンパク源になっている一方、日本の資源管理の遅れも批判されている。現状のままでいいのか——。

■なぜ、空前のサバブームになっているのか?


世は、空前のサバブームだ。


「毎日のようにメディアから取材の問い合わせがきますし、一般の方からは『サバ缶が手に入らない』という苦情がきます」と語るのは、全日本さば連合会(以下、全さば連)の小林崇亮会長だ。


メディアが取り上げるサバブームの柱は2本。ひとつは年間生産量でツナ缶をサバ缶が抜いた、という話題だ。以前は生産量がツナ缶の半分ほどしかなかったサバ缶だが、2012年ごろからその数が拮抗し、2017年はツナ缶の生産量約3.4万トンに対し、サバ缶は約3.9万トンと増え続けている。


サバブームのもう一つの柱は、北は釧路の「北釧鯖」から、南は鹿児島県屋久島の「首折れサバ」まで、養殖サバを含め全国各地で盛り上がりを見せる「ご当地サバ」、いわゆるブランドサバである。


こうしたサバ関連のニュースは、報道番組はもちろん、『林修の今でしょ! 講座』(テレビ朝日系列)、『マツコの知らない世界』(TBS系列)などのバラエティ番組でも毎週のように取り上げられる。


前出「全さば連」はサバの生産者団体ではなく、2013年に発足したサバを食べるのが好きな人の集まり。全国各地のサバ料理やサバ缶を味わい、サバ食文化を語り、サバを通じて人々と交流を図るサバフリーク集団である。ゆえに、サバ缶の品薄を訴えられても対応はできない。小林会長も本業はデザイナーだ。


サバ好きが高じて、4年前から全国のサバの産地が一気にそろう「鯖サミット」を企画すると、毎回想定を超える人々が集まり、昨年の千葉県銚子開催では1日の入場者数は3万人にもなった(2018年は長崎県松浦市で10月27、28日開催予定)。


ここへきてメディアからの注目度が増しているが、このようにサバは数年前からじわじわと来ていたのだ。


■10年前からサバの好調な水揚げが続く


なぜ、大衆魚の代表格であるサバがこれほどまでのブームになっているのか。何よりそのおいしさに加え、EPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)が多く含まれるなど体によいことがその背景にあるだろう。だがここでは、ちょっと違った角度からサバブームを眺めてみよう。


ブームの大前提にあるのが、多くの魚が不漁になるなか、ここ10年、日本国内でサバの安定した漁獲が続いていることだ。


サバは主にまき網漁で漁獲されるが、1970年代には100万トンを超える漁獲があったサバはだんだん数を減らし、90年代に入ると20万〜30万トン台しか獲れない不漁年が度々おとずれるようになっていた。


ところが、10年ほど前から多少の波はあるものの増加傾向にあり、15年、16年は50万トン台超えと比較的好調な水揚げを記録している。




■サバの輸入量は減少し、輸出量が急増しているワケ


水産系缶詰のライバル、ツナ缶に使われる材料のカツオやビンナガ(ビンチョウマグロ)が不漁で価格が高騰したのと対照的に、安定した水揚げにより値が上がっていないことも、サバ缶の生産量がツナ缶を抜いた大きな要因といえる。



ここ10年で大きく変わったことがもうひとつある。サバの輸入量の減少と輸出量の急増だ。


日本の2000年の輸出量は2300トンだったのに、2017年は23万トン。なんと100倍になったのだ。サバ全水揚げは年間50万トン、その半分近くを輸出していることになる。


■日本近海で獲れたサバの6割をアフリカへ輸出する理由


この日本近海で獲れたサバがどこに輸出されているか、ご存じだろうか。実はナイジェリアを筆頭にエジプト、ガーナなど約6割がアフリカ諸国なのだ。



アフリカ周辺の海域にもサバは生息している。しかし、総じて貧しいアフリカ諸国。大型漁船も、獲る技術も、製氷設備も加工設備もないため、魚は輸入に頼らざるを得ない。


水産物輸出コンサルタントの原亮一さんに聞いた。


「自国が植民地だった時代もあり、アフリカは主にかつての宗主国である欧州からサバを輸入していました。しかし、近年、欧州は資源保護のため漁業管理の強化にのりだしました。限りある資源である魚の獲り過ぎを防ぐために、漁獲量を制限、各漁船の漁獲上限量を決めたのです。漁業者にしてみれば、獲ることが可能な量が決まっているならば、わざわざ安い小さなサバを獲るよりも、高く売れる脂ののった大きなサイズを狙って獲ったほうがトクです。よって欧州の漁業者は小さなサイズの魚を獲らなくなったのです」




■アフリカではサバはシチューのように煮込み料理に


闇雲に獲れるだけ獲る漁業から、単価の高い大きなサイズを中心に、決められた量を獲る漁業へ。資源の持続的利用を図ることは極めて正しい選択なのだが、困ったのはアフリカ諸国である。欧州で獲れた大きくて立派なサバは、高くてとても手が出せなくなってしまったのだ。


「そこでスポットライトが当たったのが日本のサバです。漁業管理が遅れていると言われる日本は小さなサイズのサバも漁獲しています。漁獲量は50万トンと重量は安定していますが、小さいサイズのサバも相当数含まれています」(原さん)




(左)アフリカに輸出される小さなサバ(右)ガーナに水揚げされ、燻製にされるサバ(写真提供=原亮一さん)

日本の小さいサバなら安いから買えると、銚子で水揚げされたサバは冷凍され、船便でアフリカの国々へと送られる。


「西アフリカのナイジェリアやガーナの港町で荷揚げされたサバは、そこからまたマリやブルキナファソといった海のないアフリカ大陸内陸部へトラックで運ばれています。食べ方は焼いたり、燻製にしたりといろいろですが、シチューのような煮込み料理にすることもあります(原さん)


千葉県・銚子港→西アフリカ→アフリカ内陸部。極東の日本から、アフリカ大陸へ。船とトラックでリレーする形でのグローバルなサバ街道ができつつあるのだ。


■なぜ、日本は小さなサバも獲るのか


それにしても、乱獲を指摘されることの多い日本のまき網漁で漁獲された小さいサバが、貧しいアフリカの人たちの貴重なタンパク源になっているのだから、なんとも皮肉な話である。


なぜ日本は小さなサバも獲るのかと疑問に思う人も多いはずだ。主な理由は2つある。


ひとつ目は大きなサバを獲りたくても、そもそも大きいサイズが少ないのだ。中央水産研究所の話では、サバは3歳魚で全長35センチ、520グラムくらいまで成長していいはずなのに、最近は平均で29センチ、270グラムしかない。小型で痩せているサバが多いのだ。


水産の世界では、資源が増えると1匹あたりの餌の量が減ることから栄養が不足し小型化する「密度効果」と呼ばれる現象があることが知られている。実際、豊漁だった1970年代もサバは小型化している。


しかし、近年資源量が回復傾向にあるといっても70年代の半分のレベルなのに小型化するものなのか。ここらあたりの原因は、よくわかっていないそうだ。


小さなサバを獲るもうひとつの理由が、食用以外の需要である。


鮮魚市場に流通するサバは500グラム以上というのが一つの目安。それよりも小さなサイズは、塩サバや干物、缶詰などの食用加工品となる。これら食用に利用されるのが約7割。残りの3割は養殖・漁業用の飼料、つまり魚の餌として利用されている。


従来、養殖用飼料は南米ペルー産のアンチョベータ(カタクチイワシの仲間)が多く用いられてきたが、ペルー政府は2009年から資源保護のために漁獲規制を強化。品薄で国際価格が高騰したため、養殖飼料として小サイズの国産サバのニーズが根強くあるのだ。


つまり、日本は近海で獲れた小さなサバをアフリカへ輸出し、大きなサバをノルウェーから輸入しているというのが現状。というわけで、私たちが食べているサバの5割はノルウェー産のサバなのだ。ちなみに、ノルウェー国内ではサバは消費されず、漁獲されたほとんどが、主に日本や韓国に輸出されている。



(フリー編集者 遠藤 成)

プレジデント社

「サバ」をもっと詳しく

このトピックスにコメントする

「サバ」のニュース

トピックス

BIGLOBE
トップへ