トヨタとマツダが「EV提携」、ミスリード報道の波紋

8月22日(火)6時14分 JBpress

資本提携で合意したトヨタの豊田章男社長(左)とマツダの小飼雅道社長(右)(写真提供:トヨタ)

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 8月4日、トヨタ自動車とマツダが資本提携に関する記者会見を開いた。

 具体的な内容は、(1)両社共同の製造拠点を北米に新設し2021年に稼働、(2)EV(電気自動車)の共同開発、(3)通信やビッグデータを活用したコネクテッドカーでの連携、(4)将来的に自動運転へとつながる高度な運転支援システムでの連携、そして(5)商品(モデル)の相互補完──という5項目だ。


EVは“1つの要素”に過ぎない

 このように提携の内容は幅広い。だが、同会見に関する大手メディアは「EVありき」という偏った報道が目立った。

 そうした報道に対して、会見したトヨタとマツダの関係者らからは「会見の内容が正しく伝わっておらず、とても残念だ」という声が聞かれた。筆者も同意見である。

 確かに、軽自動車からSUVやピックアップトラックまで、いわゆるフルラインナップでEVのプラットフォームを共同開発することは、自動車産業界にとって大きなニュースである。

 ただし、次世代車の研究開発において、EVは“1つの要素”に過ぎない。今回の連携で提示された「コネクテッド化」「自動運転化」「EV化」はパッケージとしてみるべきであり、それらの相乗効果が大きな技術進化をもたらす。メディアはその点をしっかりと報道するべきだ。

 さらには、これら3つの技術領域と密接な関係があるのが「MaaS」(モビリティ・アズ・ア・サービス)である。MaaSは今後の自動車社会の方向性を示す概念であり、カバーする領域は極めて広い。

 MaaSの構成要素の1つに、米Uber(ウーバー)や米Lyft(リフト)、シンガポールのGrab(グラブ)、そして中国の滴滴出行(ディディ)などのライドシェアリングがある。その他、例えて言えば自動車版メルカリと言えるようなC2C(顧客同士の商取引)もアメリカを中心に事業規模を拡大している。

 こうした様々な要因が多面的に絡み合って、自動車産業は革命的な変化を遂げようとしている。だが、そうした業界の全容を把握せず、多くのメディアは「EVありき」で自動車産業の変革を報じてしまっている。


どうも雲行きがおかしい

 ここまでの話なら、「まあ、仕方がないな」と思う人もいるだろう。大手メディアの自動車担当記者は2〜3年に一度変わるので、自動車業界を大局的に捉えることに慣れていない。

 ところが、今回のミスリード報道がもたらす影響は思いのほか大きくなりそうだ。「トヨタとマツダがEVを共同開発」という一連の報道がきっかけとなって、日本の自動車産業界を取り巻く環境に大きな異変が起こる可能性が出てきた。具体的には、政界など自動車業界の外側からの力によって、トヨタをはじめとする自動車メーカーが意図しない“思わぬ展開”が生まれるかもしれない。

 フランスと英国両政府による「2040年までにガソリンおよびディーゼルエンジン搭載車の使用禁止」という政策の発表により、このところ、世界的にEVへの関心が急速に高まっている(本コラム『トヨタがEVに本気になった、は本当か』を参照)。だが、その実態は、技術的な要因や自動車業界の思惑よりも、フランス、英国両国の政界での政治的な”駆け引き”によって進められたものだった。

 世界の動きに関して言えば、中国政府が2018年または2019年から施行を予定している、EVなどの電動車の販売台数目標を自動車メーカー各社に義務付ける「NEV法」(ニュー・エネルギー・ヴィークル規制法)の影響も大きい。

 そうした状況に今回の”ミスリード”が重なったことで、日本の自動車産業界にとって“想定外の展開”が生まれるかもしれない。

 現時点では何が起きるのかをはっきりとは言えず、抽象的な表現でまことに申し訳ないのだが、事は極めて重大である。そのため、しっかりと各方面に裏付け取材を行ったうえで記事化したいと考えている。

 筆者は8月後半から今年いっぱい、欧州各国、中国、南アジア、東南アジア、韓国、台湾、そして北米の各地で“事の真相”を追うべく取材を続ける予定だ。随時、その報告をしていきたい。

筆者:桃田 健史

JBpress

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