NYで新型お披露目、アメリカ人が愛してやまない日産「Z」

8月22日(日)6時0分 JBpress

(桃田 健史:自動車ジャーナリスト)

 日産は2021年8月18日、新型「Z」を米ニューヨークで世界初公開した。

「Z」は日本で「フェアレディZ」として人気の高い2ドアスポーツカーの7代目となる。北米仕様のボディ寸法は、全長4379mm×全幅1844mm×全高1316mm、ホイールベースは2550mm。「スカイライン400R」にも採用している排気量3リッターのV型6気筒ツインターボエンジンVR30DDTT(最大出力405馬力)を搭載する。

 変速機は、「スカイライン400R」で搭載する7段オートマチックトランスミッションを9段まで多段化したのに加え、スポーティな走りが楽しめる6速マニュアルトランスミッションも採用した。

 日産が2020年9月にオンラインで開催したプロトタイプ発表会の際、エクステリアデザインの特徴について担当デザイナーは、「車体のフロント部分から側面部分では初代(S30型)の雰囲気があり、また車体後部では1990年代の4代目(Z32型)の雰囲気があるなど、歴代フェアレディZの要素を集約したイメージ」と説明していた。

 筆者はプロトタイプの実車を、日産が2020年の夏から秋にかけて横浜に仮設したイベント施設「日産パビリオン」で見ている。今回発表された量産モデルのエクステリアとインテリアのデザインは、動画や画像で確認する限り、プロトタイプとほぼ同じという印象を持つ。


Zは“アメリカ育ち”

 当初、新型「Z」の世界初公開は、2021年8月中旬に「ニューヨーク国際オートショー」で行われるはずだった。だが、新型コロナ感染症の再拡大の影響でショーが中止されたため、日産が独自イベントを設けた。

 今回の発表内容を見ると、日本人の商品企画総括者やエンジニアなどは登壇していない。紹介動画の中でも、日本国内での開発や実験の様子はほとんどなかった。さらに歴代「Z」のアメリカ人オーナーの声を紹介する場面が多いなど、日本車でありながら、とくにアメリカ市場を睨んで開発された「アメリカファースト」のイメージを強く押し出している。

 その背景について、筆者は大きく2つの理由があると考える。

 1つは、“アメリカ育ち”であることを明確にしたブランド戦略だ。

 歴代の「Z」はアメリカ市場への依存度が高かった。また、アメリカでは新車販売から数十年経った、いわゆる旧車に対する税金や車検代が日本と比べて安いことなどもあり、歴代「Z」を走行可能な状態で所有しているユーザーも多い。そうした「Z」の所有実態を鑑み、7代目「Z」の商品企画でも、担当者はアメリカのZオーナーズクラブ関係者らとの意見交換をする機会が多かったという。

「Z」は、車のカテゴリーのなかで「GT(グランドツーリング)カー」に属する(当初は「スポーツカー」だったが、80年代から大型化してGT色を強めていった)。アメリカ車は、フォード「マスタング」、GMシボレー「カマロ」、ダッジ「チャレンジャー」など2ドアGTモデルの宝庫として知られているが、そうしたアメ車との違いに魅力を感じる人々が、アメリカで「Z」人気を支え、その歴史を築いたといえるだろう。

 筆者は80年代からアメリカ各地でレース活動や取材活動を続けてきたが、様々なZオーナーと接する機会が多かった。彼らは、「Z」を単なる移動の道具としてではなく愛すべき相棒として本当に大切に乗っていた。

 またアメリカには、初代(S30型)がアメリカで発売されたときに米国日産社長だった片山豊氏を神格化するような雰囲気もある。片山氏は、アメリカに「Z」を広めた功労者として「Z-Carの父」「ミスターK」などと呼ばれて親しまれた。

 2000年代に発売された5代目(Z32)のテレビCMでは、ミスターKを彷彿させる日系アメリカ人俳優を採用するなど、「Z」に対するアメリカ人の思いの深さは日本とは大きく異なっている。「Z」はまさに“アメリカで育ったクルマ”なのだ。


日産車販売拡大の追い風に

 7代目「Z」がアメリカファーストになるもう1つの理由は、アメリカの販売店が、日産ブランドの“切り札”を欲しているからだ。

「Z」は、日産が2020年5月に公表した事業構造改革計画「NISSAN NEXT」を締めくくる役割を担っている。NISSAN NEXTでは、今後18カ月で「AからZ(from A to Z)」の12の新型車を投入する、と宣言した。Zとは新型「Z」を指すに違いないというのが衆目の一致した見方であり、実際にそのとおりになった。7代目「Z」は、ルノー日産三菱アライアンスとして進める電動化にはまだ対応していないが、日産ブランド全体の改革においてトリを務めることになる。全日産ブランドの象徴的存在になると言ってもよい。

 現在、日産のグローバルでの販売は、「エクストレイル」(北米では「ローグ」)へ依存度が高い。アメリカ、中国、欧州で顕著になっている中小型車のSUVシフトというトレンドに乗っている形だ。アメリカの販売店は、これまで販売奨励金に頼る安売り体質から抜け切れずにいたが、ローグは、その状況を打破する商品として期待がかかっている。ローグはアメリカで2020年秋に発売され、今のところ売れ行きは好調だ。

 アメリカの販売店は、収益が向上しているこのタイミングで、アメリカで人気のある「Z」を日産ブランドのイメージアップとして活用し、販売拡大のさらなる追い風にしたいと考えている。

 このような背景によって、日産は7代目「Z」でアメリカファーストの戦略を取っているのではないだろうか。

 果たして、日本では新しい「Z」をどのようなユーザーが手にすることになるのか? アメリカ国内での発売は2022年春から、そして日本仕様は今冬に正式発表する予定だ。

筆者:桃田 健史

JBpress

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