ファミマ澤田貴司社長「コンビニ限界説」にどう答えるか

8月27日(火)11時0分 NEWSポストセブン

コンビニ飽和時代をどう生き抜くのか

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 コンビニエンスストア業界は、今まさに「曲がり角」を迎えている。代名詞だった「24時間営業」の限界が露呈しつつあり、各社が新たに乗り出したスマホ決済サービスでは最大手・セブン-イレブンの「7pay(セブンペイ)」が開始早々に終了を余儀なくされるなど、試練が相次いでいる。


 大手3社の一角、ファミリーマートはこの状況をどう受け止めているのか。伊藤忠商事からユニクロに転じ、その後は経営支援会社立ち上げを経て、ファミリーマートのトップに──そんな異色の経歴を持つ澤田貴司・社長(62)に訊いた。


──このインタビューでは「平成元年(1989年)に何をしていたか」を最初に伺っています。


澤田:私は1981年から1997年まで16年間、伊藤忠商事に在籍していました。入社から12年は化学部門のトレーダーで、平成元年当時は流通小売業とはまったく無縁でしたね。


 転機になったのは1991年、当時セブン-イレブン・ジャパンの親会社だった米国のサウスランド社(現・セブンイレブンインク)が日本の破産申請に当たるチャプター11を申請し、イトーヨーカ堂と伊藤忠とで救済買収したことです。その特命メンバーとして、なぜか畑違いの僕が抜擢されました。


 いきなり流通小売の事業経営に向き合うことになったわけですが、米国のセブン-イレブンを視察した当時のイトーヨーカ堂の社長伊藤雅俊さんが、サウスランドの首脳たちを「こんなお粗末な商品やサービスでは、加盟店、お客様双方に失礼です」と叱り飛ばすわけです。現場を理解しながら改革する姿に触れました。


 そこから流通小売業への関心が一気に高まった。そして忘れもしない1995年12月27日、私は「伊藤忠も本格的に流通業に参画すべき」と、当時の社長の室伏稔さんに手紙で直訴しました。


「日本の流通業は143兆円の市場規模があるのに、近代的経営をしているのはセブン-イレブンだけ。セブン-イレブンとイトーヨーカ堂にできて伊藤忠にできないはずはない。日本の流通構造は過去最大の転換期を迎えており、本格参入の絶好の機会だ」という内容でした。


 社長はその手紙の内容を翌年の年頭挨拶で引用して下さり、プロジェクトに予算も人員も付けてくれた。


 しかし、それから2年間頑張って動きましたが、当時の商社は原料や中間流通がビジネスのメインで、組織が大きすぎて小回りが利かなかった。自分の能力不足も痛感しました。そこで一念発起して、伊藤忠を飛び出したんです。


 1997年から2002年まではユニクロのファーストリテイリングに在籍しました。今の自分があるのはユニクロ時代のおかげ。失敗もたくさんありましたが、本当に良い勉強になりました。


◆「出店競争」時代は終わった


──その後、経営支援会社の起業などを経て、2016年からファミリーマートの社長に就かれます。ファミリーマートは伊藤忠の関連会社(2018年4月より子会社)です。“古巣”に戻られたのはなぜ?


澤田:自分から伊藤忠を飛び出し20年余、様々な仕事をしてきた僕に対して「ファミリーマートを任せられるのはお前しかいない」と声をかけてくださったわけですから。男冥利に尽きる話でした。感謝しかないし、意気に感じました。


──その20年間、コンビニ業界が変化していく様子を澤田さんはどう見ていた?


澤田:いや、全然見ていなかったです。強いて言えば、やっぱりセブンは強いけど、ファミリーマートはまだまだだな、みたいな(笑い)。1人の消費者としてそんな感覚で見ていたぐらいです。社長になってからは「今に見ていろ」と思っていますけど。


──他の業界とコンビニ業界の違いは大きかった?


澤田:2005年に立ち上げた経営支援会社「リヴァンプ」では、米国のアイスクリームチェーン「コールド・ストーン・クリーマリー」の日本法人を設立したり、「クリスピー・クリーム・ドーナツ」をロッテと共同経営したり、フランチャイズというビジネスモデルについてはそれまでも勉強してきました。


 しかし、フランチャイズの運営本部をマネージメントする経験はファミリーマートが初めてでした。


 フランチャイズの運営は、純粋な小売業とは異なります。売り上げは加盟店の皆様からのロイヤリティ収入ですし、仕事は加盟店へのコンサルティングです。当社はチェーン全店の売り上げが約3兆円ですが、商品を仕入れ、売っているのはあくまで加盟店の皆様です。


 今、24時間営業の是非などの問題がクローズアップされていますが、コンビニ業界が第一に考えなければいけないのは「加盟店の利益」です。加盟店の皆様をしっかりお支えし、悩みや不安をできるだけ取り除いていくことがFCビジネスの原理原則です。我々がビジネスを進めていく上で、それを絶対に忘れてはいけません。


──コンビニのビジネスモデルは現代社会に合っていないのではないかという「コンビニ限界説」も指摘されています。


澤田:百貨店から総合スーパー、コンビニへと小売業の中心軸が移ってきた中、コンビニも6万店を目前に店舗数が頭打ちとなり、既存店の集客がずっと落ちている。つまり、もう完全に飽和しているわけで、この先もまだ出店競争が続くなんて言う人もいますが、僕には気が知れません。


 先ほど申し上げたように、加盟店の皆様あってのファミリーマートです。本部の都合を押しつけるような時代は、とっくに終わっています。


──かつてのような大量出店は今後はもうない?


澤田:人口の多い東名阪を中心に、たとえば都心の再開発ビル内や、あるいは鉄道の駅構内など、出店余地があるところは今後も攻めていきますが、需要が見込めない地域に無理やり出店していくつもりはありません。出ていっても加盟店の皆様が経営に苦しむだけですから。経営が難しいエリアに出店するのであれば、本部がすべての責任を持つ直営店でないと。加盟店の皆様と共存共栄できる形が大前提ですが、直営店も可能性があると思っています。


 たとえばセイコーマート(北海道地盤のコンビニ)は、直営店が大部分を占め、24時間営業店も少ないと伺っていますが、メーカーや卸、物流の機能も自ら持っている。我々も学ばないといけない。


 既存のコンビニの枠組みの中だけで考えていては、もう立ち行かない時代になっている。加盟店の皆様にご迷惑をかける形での直営店の出店はダメですが、加盟店の皆様と一緒に成長していくための直営店は将来性があると思います。


 先日も仕事で淡路島に行って実感したのですが、今後のコンビニの役割は地域にどれだけ貢献できるかに尽きると思います。高齢化が進み、自動車を運転する人も減ってくると、自宅近くにお店があるか否かは、とても大きい。コンビニはそういう方々の大事な生活インフラとして貢献できると強く思いました。


【PROFILE】さわだ・たかし/1957年、石川県生まれ。上智大学理工学部卒業後、1981年に伊藤忠商事入社。1997年、ファーストリテイリング入社。同社副社長を務めた後、2002年に退社。2005年に経営支援会社リヴァンプを設立。2016年9月、ファミリーマート社長に就任。2019年5月、ユニー・ファミリーマートホールディングス社長に就任。


●聞き手/河野圭祐(ジャーナリスト):1963年、静岡県生まれ。経済誌編集長を経て、2018年4月よりフリーとして活動。流通、食品、ホテル、不動産など幅広く取材。


※週刊ポスト2019年9月6日号

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