"夫婦同じベッド"は睡眠不足の原因になる

8月28日(火)11時15分 プレジデント社

写真=iStock.com/Obradovic

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「寝ても寝ても疲れがとれない」——快眠や疲労回復のための情報は溢れているが、いったいどれが正しいのか。疲労回復と睡眠に関する専門家である医師の梶本修身氏が、「今日から始めるべき、就寝前&起床後の生活習慣」を解説。ビジネス誌「プレジデント」(2018年9月17日号)の特集「頭がよくなる睡眠、バカになる睡眠」より、記事の一部をお届けします。

■「良質な睡眠」でしか、疲れは改善できない


「最近、すぐ疲れて日中も眠い」「寝ても疲れがとれない」「夜中に目覚めたり、早く起きてしまう」といった不調を感じてはいないだろうか。


「今の医学では、良質な睡眠をとること以外で、こうした疲労を回復させる方法はありません」と断言するのは、東京疲労・睡眠クリニックの梶本修身院長だ。疲労医学を専門とする梶本氏は、疲労の原因、軽減物質、克服法の開発や研究を行いながら、疲労や睡眠障害に悩む患者の治療にあたっている。そして長年の研究のなかで、「肉体的疲労も精神的疲労も疲れの仕組みは同じで、自律神経の中枢の疲れが原因」であることをつきとめた。


自律神経とは、呼吸や消化吸収、血液循環、体温、心拍数などを調整し、人間の生命活動のバランスを整えている神経のこと。運動により心拍数が上がったり汗をかいたりするのも、自律神経の中枢から体の各部分に命令が出ることで起こる。運動をした疲れは筋肉を使ったからと思いがちだが、それは間違いだ。


「息を吸って体内に取り入れられた酸素は、脳や筋肉などで消費されます。このときに生まれる活性酸素は酸化作用を持っていて、体内に侵入したウイルスなどを破壊するのに役立つのですが、同時に細胞を傷つける力も持っています。人間の体には活性酸素から細胞を守る機能が備わっているものの、激しい運動などにより細胞を酷使すると、活性酸素が極端に増えてしまいます。そうすると自律神経の中枢では神経細胞がサビつき、傷ついた(酸化した)状態になる。それが疲労なのです」


自律神経機能は年齢とともに低下する傾向にあり、20代男性で約1800あった能力が、40代男性は約半分に減る。




「疲れやすいのは、年をとって体力が落ちているせいだ。睡眠をとるより、運動をして昔のような体力をつければいい」と体を鍛えている読者もいるかもしれないが、むしろ逆効果だという。


「筋肉は年をとっても増やせますが、自律神経の機能は確実に老化します。筋力を鍛えて若い頃と同じ重さのバーベルを持ち上げることはできても、運動による呼吸・心拍の調整機能は確実に低下しています。自律神経機能が年々低下しているのに、心拍や呼吸、血圧などの調整が必要な激しい運動をすると疲れはたまる一方です。激しい運動で酸素の吸入量が増えれば、活性酸素が増え、細胞を守るシステムが処理できる量を超えると、自律神経の中枢が酸化されて疲れる、という悪循環が起こります」


運動だけでなく、ハードワークをしたとき、達成感を感じて疲労が吹き飛ぶこともあるが、「それは脳の錯覚。人間の場合、意欲を感じる前頭葉が発達しているため、疲れを隠してしまうのです。いわば、隠れ疲労で、それこそ蓄積したら危険です」。


■「夫妻で添い寝」は、避けたほうがいい!?


では、疲れを感じたら、通常より長く睡眠をとればいいのだろうか。


「(最適な)睡眠時間には個人差があり、4時間の人も8時間の人もいます。大切なのは、その人に合った時間で良質な睡眠をとることです」


ちなみに、「自分はベッドに入ったとたんに眠れるから熟睡している」「いびきをかいて微動だにしないと言われるから、ぐっすり眠れている」というのは勘違いだという。


「5分以内に眠れる人や電車ですぐ眠ってしまう人は、普段良質な睡眠がとれておらず、いわゆる『寝落ち』した状態です。また、いびきをかいている状態は、気道が狭くなって酸素が取り入れにくく、自律神経が血圧や心拍数を上げて活動してしまっています。つまり、本来睡眠をとって休ませる自律神経を働かせていて、結果的に良質な睡眠をとれていないのです」



そこで、梶本氏が勧める良質な睡眠をとるための夜からの過ごし方だ。特に(2)〜(5)は、毎日のルーティンとして繰り返すことで、日中、緊張して交感神経優位だった状態から、リラックスする副交感神経優位の状態に切り替わりやすくなり、良質な睡眠の導入につながるという。


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▼夜から日中にかけての生活習慣ベスト12

(1)就寝約3時間前までにアルコール、コーヒー、タバコ、エナジードリンクをやめる

理由/アルコールは自律神経の中枢を麻痺させ、質のいい睡眠リズムをつくれない。利尿作用で夜中に目が覚めやすく、いびきが増えて無呼吸になる可能性が高まる。コーヒーやエナジードリンクはカフェインの覚醒作用が4〜5時間近く、タバコは覚醒作用が1〜2時間近く続き、安眠の妨げになる。


(2)就寝1時間半前までにパソコンやスマートフォンの利用をやめる

理由/受け身型で終了時間が決まっているテレビ番組と違い、際限なく動画を見続けたり、SNSでやりとりし続けてしまう。


(3)10分程度の入浴

理由/交感神経が優位にならないよう、汗をかかない程度に少しだけ深部体温を上げることで、体温が下がる際に入眠しやすくなる。40度くらいのお湯に半身浴するほか、シャワーも体が温まるなら可。


(4)入浴後、夕焼けのようなオレンジ色の間接照明か電球照明に変えて、涼しい室内温度でリラックスして過ごす

理由/蛍光灯のような明るい照明は脳が目覚めてしまう。


(5)(4)のとき、最低コップ1杯の常温の水を用意し、お風呂上がりから眠る直前までの間に、体に染みわたるようにゆっくり何回かに分けて飲む

理由/脱水症状や熱中症を避ける。


(6)寝る前にお腹が空いてしまった場合は、消化が良く血糖値が上がりやすいものを食べる

理由/お腹が満たされた状態は入眠しやすくなる。脂ものを避けておにぎりなどを食べてもいい。ただし痩せたいなら控える。


(7)眠くなってからベッドや布団へ

理由/ベッドの上で本を読んだりすると、脳がベッド=眠る場所と認識しなくなり、眠れなくなることがある。


(8)睡眠時の室内はできるだけ暗く、汗をかかない快適温度に設定し、眠りやすい寝具を選ぶ

理由/明るい部屋は脳を覚醒させやすい。汗をかく行為は、自律神経の中枢を働かせ睡眠中も疲れがとれないため、エアコンの活用を。いびきをかく人は右を下にして横向きで眠れる枕がおすすめ。


(9)朝、目覚まし時計で飛び起きない。少しずつ照明を明るくさせ、やさしい音色の音楽やラジオなどを流す

理由/副交感神経が優位の睡眠の状態から、爆音で交感神経を優位にさせて起きると、自律神経を一気に疲れさせる原因になる。


(10)必ず朝食(しっかりとれない場合はヨーグルトだけでもいい)と水分をとる

理由/自律神経をしっかり目覚めさせるため。水分は利尿作用のあるコーヒーやお茶だけだと尿として出てしまうため、ノンカフェインのものもとる。朝運動をする場合は、先に食事をとって自律神経を目覚めさせてから。


(11)日中は男女、季節にかかわらず紫外線対策をする

理由/紫外線は自律神経中枢を疲弊させるので、日焼け止めを塗るなど対策を。特に目から入る紫外線は角膜に炎症を起こさせ、保護物質の色素、メラニンを出そうとするため外出時はサングラス(クリアタイプでもいい)を着用する。


(12)日中、特に昼食後の仮眠

理由/とったほうが午後のパフォーマンスが上がるため、夜の睡眠に影響が出ない程度に、30分くらいまでならとっていい。

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このほかに注意点もある。「睡眠時、夫婦やパートナーと同じ部屋、同じベッドで眠らないこと」もその1つ。




写真=iStock.com/Obradovic

「男性と女性では快適温度に2〜3度の違いが生じるため、同室で寝ているカップルの約4割が室内温度でケンカした経験があります。また、男性はオスの本能が働き、女性を守らなければならないと感じるため、同じベッドでは熟睡できません。起床時の知力テストで、女性は成績の差がみられなかったのに対し、男性の場合は成績が落ちるという結果が出ました」


別室就寝が難しい場合は、ベッドやマットを別にしてカーテンなどで間を区切り、エアコン側に男性が寝るといった対策をするといいそうだ。


もう1つは、細胞の酸化を防ぐ成分「イミダペプチド」を毎日とることだ。サラダチキンなどでもおなじみの鶏むね肉に大量に含まれるほか、カツオやマグロの尾びれ付近、牛肉や豚肉などにも含まれている。「一日200ミリグラムとってください。豚や牛だと200グラムと大量ですが、鶏むね肉なら100グラムなのでお勧めです」。


紹介したすべてをやらなければと気負うとかえって疲れてしまうため、すべてを取り入れる必要はないそうだ。「これならできる」と感じたものから、気楽に取り入れてはいかがだろう。


ビジネス誌「プレジデント」(2018年9月17日号)の特集「頭がよくなる睡眠、バカになる睡眠」は、「スタンフォード流、死ぬまで賢くなる睡眠法」「ショートスリーパーの仮眠術」など、仕事の能率を上げるヒントが満載。そのほか、睡眠薬、寝具の選び方や、いびき、歯ぎしり、悪夢といった睡眠トラブルの解決法を、医師をはじめとした専門家陣が手厚く解説。暑くて寝苦しい夜が続く今、睡眠不足で夏バテする前にぜひお手にとってご覧ください。


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梶本修身

東京疲労・睡眠クリニック院長

医師・医学博士。大阪市立大学大学院医学研究科疲労医学講座特任教授。大阪大学大学院医学研究科修了。産官学連携「疲労定量化および抗疲労食薬開発プロジェクト」統括責任者。『スッキリした朝に変わる睡眠の本』『隠れ疲労』など著書多数。

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(干川 美奈子 写真=PIXTA、iStock.com)

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