これで余所者でも「お宝物件」を購入できる…投資のプロが伝授「値下げ交渉を有利に進める最初の質問」
2024年8月30日(金)15時15分 プレジデント社
※本稿は、永野彰一『一生お金に困らない島投資の始め方』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。
写真=iStock.com/ArLawKa AungTun
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/ArLawKa AungTun
■県外の人が購入を申し出ると、渋い顔をする売り主も
日本にある1万4125の島から投資に値する島の家や山を探し出した後は、どのように交渉すればいいか。本稿では交渉における4つのポイントを紹介していきます。
【ポイント①】島には「余所者」に家を売らない文化がある
すべての島ではありませんが、県外や地域外から来た余所者(もの)には家を売らない……という文化が根付いている島もあります。
不動産会社を通じて物件を売り出していても、買い手はあくまでも地域の人と考えているため、県外の人が購入を申し出ると、渋い顔をする売り主もいます。
こうした傾向は島だけに限らず、地方の田舎でも、意外によくあります。
岐阜・飛騨高山の白川郷で、世界遺産に登録されているエリアにある家を手に入れたときには、不動産会社の人に、「永野さん、どうして買えたんですか⁉」とビックリされたくらいです。
現地に家を見に行ったら、微妙な顔をされることもあるかもしれませんが、何度も顔を合わせて気心が知れてくれば、徐々に状況は変わりますから、最初の段階で過度に反応する必要はないと思います。
日本の島の多くは過疎化が進んでいるため、県外や県内からの移住者を積極的に受け入れる状況になっていることで、こうした「ローカル・ルール」も徐々に薄まる傾向にありますが、すべての島民がそれを肯定している訳ではないということを、頭の片隅に置いておくことが大切です。
■売り主が家を手放す5つの事情
【ポイント②】売り主が個人の場合は最初に「売却理由」を確認する
家の売り主は、個人の場合と不動産会社の場合がありますが、相手が個人であれば、最初の段階で売却理由を確認しておくことが大切です。
売り主の事情を把握することによって、「どの程度まで値下げ交渉が可能なのか?」という大まかな目安を知ることができます。
売り主が家を手放す事情は、大きく5つに分かれます。
①家の住み替え
②転勤などによる引っ越し
③家が不要になった
④教育資金などでお金が必要になった
⑤相続対策
相手が相続対策のために家を売る場合には、大幅な値下げが期待できますが、⑤→④→③→②→①の順番で値下げ交渉が難しくなる……と考える必要があります。
売り主が抱える事情に加えて、「いつまでに売却したいと考えているか?」という時間的なリミットも併せて把握しておくことも、値下げ交渉をスピーディーに進めることに役立ちます。
売り主が個人の場合は、長く住み続けてきた家に対して、強い愛着や思い入れを感じているケースが多くありますから、あまり極端な値下げ交渉をすると、「この人には売りたくない」という感情が芽生えることもあります。
相手の事情を知ることは、相手の気持ちに寄り添うことでもある……と考えて、誠実な対応を心がけることも、大事なポイントといえます。
写真=iStock.com/Andrii Yalanskyi
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■最初の時点で確認すべき“声かけ”の種類
【ポイント③】売り出し期間が長い物件は交渉次第で「値下げ」の可能性が高い
一般的に、販売開始から期間が経った物件ほど、値段交渉を進めやすくなる傾向がありますから、売り主が不動産会社の場合は、最初の時点で、「この物件はいつから売り出していますか?」と確認しておくことが大切です。
一応の目安となるのが「3カ月」という期間です。
山や家などの物件を売り出す際には、売り主と不動産会社の間で「媒介契約書」を取り交わしますが、その契約期間は最長で3カ月となっており、期間内に売却できない場合には、改めて契約を更新する必要があります。
なかなか売却できないとか、問合せや反響が少ないといった状況が続くと、不動産会社は媒介契約の更新を拒否される可能性がありますから、契約成立に向けて積極的に動くことになり、売り主を説得して、値下げ交渉に踏み切ることになります。
不動産会社が必死になるため、値段が下がる確率が高くなるのです。
僕は最初に自分の指値を不動産会社に伝え、3カ月の節目を迎える直前に電話を入れて、「まだ売れてないですか? 僕はいつでも購入OKですから、連絡をお待ちしてます」と伝えることをルーティンにしています。
家や山を希望の値段で手に入れるためには、きちんとタイミングを計りながら、粘り強く交渉を続けることが、何よりも重要なのです。
■全国どこに行っても、地元の住民の人たちと積極的に関わる
【ポイント④】「地域コミュニティ」に積極的に参加して味方になってもらう
日本の島には、ほぼ例外なく、結束の固い「地域コミュニティ」があります。
現在は、どこの島でも少子高齢化が進んでいますから、島外からの移住者を積極的にコミュニティに受け入れて、島の将来を一緒に考える活動が活発化しています。
できるだけ人と関わらずに生活をしたい……という思いで島暮らしを選択した人にとっては苦痛と感じるかもしれませんが、僕は自分から島の人たちの輪の中に飛び込んで、地元の祭りや食事会に参加したり、商工会や青年会の集まりにも顔を出すなど、できるだけコミュニケーションの機会を作ることを意識しています。
僕の場合は、島に限らず、全国どこに行っても、地元の住民の人たちと積極的に関わることを大事にしていますが、その理由は、地域コミュニティに溶け込むことによって、さまざまな恩恵が生まれることを体験として知っているからです。
・暮らしやすい環境を整えることができる
・困ったことがあれば、相談に乗ってもらえる
・地域の現状や問題点、課題を知ることができる
・地域の今後を考えるヒントが得られる
地域コミュニティというのは、こちら側の向き合う姿勢によって、敵にもなれば、味方にもなります。
その存在を疎ましく思って、一定の距離を置こうとすると、「噂話に尾ヒレがついて、あることないことを拡散されてしまう」などと感じて疑心暗鬼になり、周囲の人から監視されているような不安な気持ちになります。
その一方で、自分から積極的に輪の中に飛び込んでいけば、親身になって相談に乗ってくれたり、貴重なアドバイスが得られることもあります。
■ローカル・ルールを乗り越えるための4つのフロー
島には「余所者」に家を売らない文化がある……とお伝えしましたが、僕は地域コミュニティのおかげで、このローカル・ルールを何度も乗り越えて、島の家を手に入れています。
その際のフロー(流れ)は、次のようになります。
【ステップ①】不動産会社の紹介で島の山を手に入れる
家と違って、山の売買はローカル・ルールに縛られることがありません。
先に山を入手することで、「島に物件を持っている人」という立場を手に入れることが第一段階となります。
【ステップ②】地域コミュニティの仲間に入れてもらう
「この島で山を持っているんですが、どう活用すればいいと思いますか?」など、山の活用法を地元の人たちに相談して、一緒に考えてもらいます。
【ステップ③】「売ってくれそうな家を知りませんか?」と相談する
何度も顔を合わせて、お互いのことが少しずつ理解できるようになったら、「この島に家が欲しいんですが、売ってくれそうな物件を知りませんか?」と率直に聞いて、島の人たちに意見を求めます。
【ステップ④】家の候補が見つかったら、売り主を紹介してもらう
「誰かが家を売りたがっている」という話があったら、売り主の紹介をお願いして、直接、相手に話を聞きに行き、お互いの利害関係が一致したら、その場で売買交渉に入ることになります。
永野彰一『一生お金に困らない島投資の始め方』(クロスメディア・パブリッシング)
要点だけをまとめると、ビジネスライクで打算的に感じると思いますが、僕はハッキリと自分の目的を地域コミュニティの人たちに伝えて、相手を騙(だま)すようなウソやブラフ(ハッタリや虚勢)は慎むことを自分に課しています。
僕が全国各地で山投資や家投資をやっていることを伝えると、面白がってくれて、「タダ同然の山なら、この島にもいっぱいあるよ」と新たな情報を提供してくれることもあります。
僕は私利私欲のためではなく、みんなで幸せになることが一番の目的ですから、その思いが地域コミュニティの人たちに伝わると、「永野さんに売ってあげなよ」とか、「もう少し値段を下げてあげて」などと救いの手を差し伸べてくれたりします。
こちらが心を開いて飛び込めば、島のコミュニティの人たちは、頼もしい援軍になってくれる……と考えています。
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永野 彰一(ながの・しょういち)
投資家・事業家
1990年東京都生まれ。早稲田大学法学部卒業。14歳の時に取得した「乙種第4類危険物取扱者」を手始めに、100を超える資格を高校在学中の2年間に取得。最年少取得記録を多数保有している。プロの雀士でもある。現在は不動産投資家として活動し、全国に数百の山を所有。「山王」と呼ばれている。テレビ東京『日経スペシャル ガイアの夜明け』などメディアにも多数出演。
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(投資家・事業家 永野 彰一)